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畢竟に咲く赤い花  作者: 玲瓏
畢竟
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八条の推理

 私、八条はこう推理する。

 水染俊は、夢を失ったことによる自己嫌悪、そして幸せな日々からの脱却による絶望感。及び、母に対する悲しみの罪悪感により自分を殺した。

 胸を張って夢を語り、母親に恩返しをするために夢を叶えるとまで語った水染俊の、夢を諦めざるを得なかった時の感情というものは測りの上に乗せられる物ではない。

 残念ながら今回の調査で唯一分からなかった事実が夢を諦める切っ掛けとなった原因だ。奈帆さんや彩香さんも知らなかったということなのだから水染俊本人が隠していたのだろう。だから、水染俊の物語はここで終わってしまった。

 夢を失うと、人の物語はそこで終わる。新たに夢が見つかれば二回目の物語が始まるが俊は生命を絶った。

 価値のない自分、夢を失った自分という世界に閉じ込められた彼は、無味無臭の監獄に入れられた日々を送っていただろう。私は気づけなかったことに後悔する。亜紀ちゃんは俊の変わり様について気づいていて私に訴えてきたが、その時の私は浅葱君の事で手一杯であり真剣に向かわなかった。

 きっと奈帆さんも、家計の事情で息子の変貌に気付かなかったのだ。大学にいけば息子は独り立ちをしたようなもの。全て一人でできると思い任せてしまった。拓也は気づいていたのかわからないが、誰にも言わなかった。

 私達はみな、共犯者であった。水染俊を自殺に追い込んだ、もう一人の水染俊の。

 物語を遡る事によって得た物は、水染俊は面白い世界を歩んできたという事実だけだ。決して恵まれていたと言ってやらない。現実に、早い内から命を落とした若者を恵まれていたというのは愚かだろう。

 過去から得れる物は事実だけ。しかし私はそれでよかった。水染俊という男の一生はおおよそ星が一個爆発して失われる程度の認識にしか扱われないだろうが、彼の事を最後に知ることのできた人物が四人もいるのだから。

 他の三人は私と違う評価をくだすだろうが、水染俊の人生という作品にレビューをつけるとしたら、星四つくらいは与えても良いだろう。

 残りの一つは、もう少し長く生きていたらもらえたかもしれない。

 全ての調査が終わり一段落つくと、私は水染奈帆に会いに行くことにした。彼女の推理を聞こうと思ったのではない。

 彼女の言っていた、赤い花というのが気になったのだ。水染俊が亡くなり、遺書を探している最中に見つけた、写真の中に入った赤い花。彼女はその正体が分からないと言っていたので、最後にその謎を解きにいくことにしたのだ。

 水染俊の残した最後の謎。これは過去に遡れば分かるという物ではない。

「これでお葬式は終わっちゃうね」

 私は服を着替えながら、どこかにいる水染俊に向かって呟いた。

 未練を断ち切るというのは、こうでもしないと勇気が出ないものである。

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