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畢竟に咲く赤い花  作者: 玲瓏
第二章
22/29

竹内より

 ――水染君と相元先生が放課後に授業をやっているというのは聞いていました。授業とは少し違うかな、とも思いますが。似たようなものなので、あえてそう表現します。

 たまに見学させてもらってます。相元先生の教え方は非常に参考になりますし、水染君が教わっている姿も生き生きとしてて、見ていて私もほっこりしてしまったからです。今はもう見られないんですよね。本当に、本当に残念です。

 あのクラスでよく水染君は続けられていたな、と思います。何しろ生徒がうるさくて。他の中学校、クラスよりはマシなんでしょうけれど、水染君が本を読んでも馬鹿騒ぎするグループは居ましたからね。偉いと思います。私も注意はしていたんですけれど、聞く耳もたずでした。あの頃の私は舐められていたんでしょうけど。

 ここでいうのもなんですけれど、あのクラスが卒業した時は若干安堵しました。

 相元先生と私は、本当に師匠と弟子のような仲でした。授業も観察してくださって、駄目な点と良い点を交互に言ってくれるんです。きつい言い方をする事もありましたけど、その分私も頑張ろうって思えてます。あの人を目標にして今先生を続けてるんですから。

 あ、そうそう。飲み会の席で相元先生はこんな事も言ってました。酔っ払うとおしゃべりになる人なんですけれど、水染君は将来有望だって。私も、俺に教わってるんだから将来有望だって言ってて、他の先生からは傲慢だって言われてましたけれど。

 ……実は、相元先生は他の先生からの評判はよくなかったんです。保護者もそうでした。中には私みたいに良い先生だって思う人もいたんですけれど、少数でしたね。いじめも受けてるみたいでした。……すみません、内容についてはその、言えません。

 なので、職員室にいることは滅多になかったんです。私なんかはしょっちゅう、あいつに染まるなって言われてました。他の先生に、です。

 なんだか悲しかったです。自分の尊敬してる人が叩かれるって、悲しくなりません?

 嫌われてる理由は……なんでしょうか、反抗的な性格なんです。言われた事は必ず反論して、根拠とデータを求める人でした。正確な事を求める人で、自分で無駄だと思った事は絶対にやらない人でした。

 後、謝らないんです。ここは私も反面教師にしてます。明らかに自分に非があるのに謝らないのだから、そこは嫌われるのもおかしくないと思ってます。私もたまに、謝った方が良いっていうのですが、どうやらそこは子供みたいですね。

 相元先生が亡くなった時最初に思ったのは、ストレスからだなって。相元先生は強気ですが、心は強くなかった――あ、いえ、相元先生の言葉をお借りするとですね、心に強弱はないって言うんです。

「心は強くも弱くもならない」

 私はその意味を聞いてみましたが、結局は答えてくれませんでした。いつかわかるさと煙にまかれてしまいましたね。先生、そういう意地悪な気質もあるんですよ。

 すみません、水染君の話をしにきたのに、相元先生の話をしてしまいました。すみません。

 素直で良い子でした……というのが率直な意見です。あはは、なんだか生徒のいない三者面談をしてるみたいですね。

 三年生になった頃の、夏頃に、物書きになるって言いました。自分はゲームが作れないが、ゲーム作りに携わることはできて、シナリオを書く方面にいくって張り切ってました。

 ……へえ、大学では実際に小説を書いていたのですか? 気になりますね。

 あ、それで、今まで以上に読書をして、知識とかをつけていましたよ。ただ不安だったのですが、友達と話す姿があまり見られなくなっていたのです。読書に集中して、周りが見えていない、というのでしょうか。

 後は授業中にノートを取る振りをして別の事をやっていた、と他の先生から指摘を受けました。水染君は頭がよくて、ノートにシナリオの構成を考えていたみたいでした。教卓に立つ先生はノートを取る姿は見えますが、中身は見えないのでどうしてもその事には気づかないんです。水染君、おそるべしって思いました。くすくす。

 友達とのお話が見られない、と言いましたが、卒業式では少し泣いていたように思います。他の男の子はみんな泣かなくて、女の子の大半が泣いている中だったので、他の男の子から笑われていたみたいです。

 どうやら、友達との別れが寂しくなったみたいですね。大人っぽい風貌をしていながら、子供っぽい所もあるんだなって面白おかしくなりました。

 ……って、そうですね。大人も子供もありません。これ、実は相元先生からの言葉なんです。大人も子供もない。みんな人間なんだって。社会人は大人のふりした子供が多いんだって。

 子供でも社会人になれるって言ってた時は、シーッて口に指を当ててしまいました。

 私から言える事は以上です。探偵さん、少しでもおやくに立てているなら幸いです。どうか、彼の心を推理して、解決してあげてください。 

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