表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代神様  作者: 有富有馬
8/23

対峙するは千年をいきる男

 それから幾分かして一真は響の家の前に来た。



 そっとしておくといっても。また響を狙うものが出るかもしれないからだ。


 

一真は玄関の扉にてを伸ばす。



「?・・・・・これは・・・・・」

 


触れるか触れないかの距離で何かを感じたようにピタリと一真のてが止まる。



「まさか・・・・・」


 

錯覚か・・・・?


 

自分の感覚に一真は自問する。



「いや、違う!!」


 

そう悟った瞬間だった。

 


バコン!!!



 「!?」


 

静寂の夜を切り裂くかごとく響の部屋の屋根が吹き飛ぶ。



それと共にまう木屑のような粉塵が一真の視界をうっすらと多い、目や鼻に刺激を与える。



 「響!!」

 


手で顔を覆いながら、一真は部屋の主たる響の名を叫ぶ

すると土煙のなかに一人の影かうかぶ。



その瞬間だった。


 

暗闇のなかで鈍く輝く青い光が2つ、一真の方に向く。



ビクン!!と一真の体毛は騒ぎたつのを感じる。



まるで潮風のようにピリピリした空気が周りをおおう。一真は知っている。



これは響の、スサノオの神力だ。


 

そう結論つけたとほぼ同時に、その影は一瞬にして消え去ったのだ。


 

「っ・・・・!!」



姿は消えたが、神力は消えた訳ではない。



手繰り寄せるように響の神力を感じとると、ものすごい速度でグングンと放れていっているではないか。


 

軽く見積もっても既に、10キロは離れているのだ。

 


「くそ・・・・・!!」



今ならまだ間に合う。しかし今の現状がそれを許さない。



 一真はチラリと周囲に視線を回す。



近所のとこどころで電灯がともりはじめいる。



そしてまたもう一件、一件と回りの家の明かりがつきはじめる。

 

 

 

こんな夜中にさっきの爆発音だ。これで起きなければ呑気者もいいところだ。



このままでは確実に野次馬が響き家に集まり問題になる。そうなってはこの上なくめんどくさいことになる。



神の事は基本的に一般人に知られてはならない。これが人々に見られたら響だけでなく神の組織にも問題になる。



「しょうがない」

 


プツンと、一真は長く延びている自分の髪を引き抜くと、


 

「とりあえず、だ」



 そう告げたると回りが白いきりに包まれ始まる。

だんだんとその濃度は上がっていく。



「なんだ!!?さっきの音は!!?」



 ガラガラと玄関を開けて出てきたのは、響き家の隣にすむ赤山哲也だ。



すでに夏場たけあって短パン半袖で、ペッタペッタと恐らく自分のではないビーチサンダルを履きながら出てきた。



「寒い!!」



 ブルっとからだ震わせると手をで体をさすりながら近寄ってくる。



それに続いて、嫁や子供、祖母や祖父、そして他の家からもゾロゾロと人が出てくる。



ザワザワと回りが騒がしくなるなかで、哲也は一真の目の前まで来ていた。



 「おう、一真君!!なんだったんだ?さっきの音は?」



 「音・・・ですか?僕は聞いてないですけど・・・・」

 


「聞いてないって・・・・そんな馬鹿な・・・まるで何かが吹き飛ぶみたいな音だったぞ」

 


「本当ですよ。僕は五分前くらいからこの辺りにいますけどなにもなかったですよ」



 「??本当に??」

 

「はい」



 「あ~何も・・・・そういえば何もなかったな・・・・・?」


 

「夢でも見たんですよ」


 

「うん・・・・そうか・・・ていうか何でそとにいるんだ?周りの人も。こんな静かな夜に?」


 

「さぁ、僕もわかりません」

 


「ふーん・・・寝るかな」



「明日も早いですからそうした方がいいですよ」



「おう皆!!明日も早いんだ。はやくねるぞ!!」


 

さっきの焦り顔など嘘のように眠そうな顔をしながら哲也は回りにく呼び掛ける。



 その言葉を聞いてからざわついていた人々は一瞬ポカンとした思うと眠たそうな表情で自分の家に帰っていったのだ。



まるで何もなかったかのように、変なことは何一つなかったと思わせるようにその場は不自然な自然観を作り元の静寂な夜に戻った。



ゆっくりと霧が薄まってくる。



「さてと・・・・・」


 

最後の家の明かりが消えたのを確認すると一真は視線をまだ残る霧が漂う空間のいってん、神塚家を見る。



そこを最後にすべての霧が現れ少しの間隠されていた世界が帰ってくる。



そこには先ほどの大きな穴は存在しない。

いままで通りに瓦が敷き詰められている。


 

 「とりあえずは誤魔化せるな・・・・全く・・・ 天之狭霧神(アメノサギリ)さまさまだな」



天之狭霧神という神を知っているだろうか。



霧と異世界の境界を司る神のことだ。



その特性上、隠したり、紛らわしたり、空間を切り離したりといったことを得意とする神だ。



一真が先程行ったのは、神術と言われる神が自身の神力で放つ術だ。



 ある一定空間で何もなかった状態を演出し思わせること。

本当は経験しているが頭では人はその事を忘れ、建物は元の状態に戻したように見せる術。



まだ神が人間に生まれ変わるということをしていない時、天之狭霧神が自身の力を神術として作り上げたものが先程の術だ。



一真は大きく腹式呼吸をする。



ダン!!



一瞬にして地面を蹴り音もなく高速で、屋根や壁、さらには木々の枝を使い駆け巡る。 



木葉も散ることなく一真は高速で移動する響の神力を追いかける。


★★★★★★★★★★★



 一真の服装はすでに変わっている。



 貫頭衣ではない。



 それは衣褌(きぬばかま)と呼ばれる上衣とズボンのような袴からなる服装だ。



 しかし一真のは衣褌といっていいのか、大きくアレンジが加わっている。どちらかというと着物に近いかもしれない。しかしその根元にはの衣褌の意志が見られる。



(結界が貼られている?)



 一真が走り出した瞬間だった。

 向かう先から目に見える形で結界が円柱上に貼られている。



 そしてその源は響の神力だ。

 


「!!」

 

 

距離にして20キロ



その長距離を1秒もかからず 縮めた一真はその光景に一瞬吐き気を覚える。

 

 


悪鬼との戦いで多くの血に染まった五臓六腑を自ら切断などする百戦錬磨の一真がそう実感するほどの恐ろしさ。



「ァァ・・ガガ・・・」



 そこにいるのは鳥の形を強く残した人形の悪鬼。



それを響は腕一本で持ち上げ胸をえぐりとっているのだ。



その姿はまるでハンターが狩った獲物を見せびらかすように・・・


 

「響・・・・・」



 「!!?」



一真の言葉に響は異様に反応した。



 響はグルリと顔を一真に向ける。



 その顔は響といっていいものなのか。青い瞳を持ち、顔に返り血を浴びたその姿は別人にしか見えなかった。



 「うおおおおお!」



 「!!」


 

ブチュリと握っていた肉塊を握りつぶすとまるで飢えた獣のように突っ込んでくる。



怒りにも似た表情で響は真っ赤に染まる右手で殴りかかってくる。



 やはりと言うべきか常人では見えないほどの速度で拳はくりださるる。



しかし一真も百戦錬磨だ。ギリギリまで惹き付け最小限の動きでそれを回避する。そしてそのまま響にカウンターをしかけにいく。



狙いはあくまでも響を捕らえること。固め技で意識を持っていく。



 スパッ・・・!!


 

「な・・・!?」



しかしそな甘い考えを吹き飛ばすような痛みが頬に走る。



一真はそっと自身の左ほほに触れる。



 そこには一筋の傷。まるで刃物で切られたかのような傷が横に一筋できているのだ。


 

(どういことだ・・・・こりゃ・・・・)




 確実に交わしたのにつけられた傷に一瞬戸惑う。



しかし本来ならいつも未知な力を持つ悪鬼と戦う一真は突然の出来事にも対処できる。そこまで気にしたことでもないこどだ。



しかし問題はつけられた傷たけではないのだ。



すべてにおいて神速のスピードで戦う一真がカウターを会わせにいったのに自分が自覚したときにはすでに響は数メートル離れた場所に移動していたのだ。


 これではカウターもくそもない。



完璧なタイミングてで会わせたそれは気づくことなく躱される。

 


しかし今その事ばかりにとらわれてはならない。一真はすぐさま構え直し響の追撃の備える。

 


しかしそれに反して響は青い目で睨みながら距離を縮めようとしないのだ。



問答無用で突っ込んでくるものだと思っていた一真は自身もその場て考えを練り直す。


 

(見た感じは、完全に暴走しているな・・)




 普通は神として生まれたときから、知らず知らずのうちに自身の力として取り込むのが普通だ。



呼吸をするのと同じ。教えられるまでもなくできること。動物の本能のに近いものだ。



 それは一真もそうであった。

 


しかし響は違う。その力は17年間封印され続け、その力を持つべき器は本当にただの人なのだ。





そんな体制の整っていない器にためにためた力を一気に注がれるば壊れるのは必然。



 

柔軟をせずに大きな不可を掛ければ健や肉がちぎれるのと同じだ。



そしてその結果溢れだした力が響を取り込み暴走に持ってきた。


神力という水が、響という器を内側から壊していく。




 「そしてその神の力を使うわけか・・・」



 親指で頬の血を拭い取りながら一真は響の腕を見る。

 


そこには拳を覆うように小さな竜巻が作られている。



これこそが一真に傷をおわせ、一瞬にして距離をはなした正体だろう。


 

風の切れ味に推進力。



思い返せば一真が少し前、暴走したときに周りの木々がなぎ倒されていた。



それも響の神力の力だろう。



「つまりは、神対神、か・・・・・」


 

仕切り直しとの合図なのか、ゴキリと指の間接を鳴らし一真の目が変わる。


 

ゾワリ!!



そう表現することができる雰囲気が一真の体から溢れだしている。


 

「!!」



 ビクリと響の体も反応する。まるで驚いた猫が毛を逆立った時のようだ。



それは一真が普段見せない殺しの目。



 それを見ただけで相手を殺すのではないかと言う殺気のこのこもった目は響に警戒心を与えるには十分すぎるほどだ。



 「炎よ・・・・」


 

そう呟くとガスコンロに火がつくように一真の手に人魂大の炎が作り出される。

そしてそれが何個も作り出される。



一真は理解しているのだ。



暴走により不完全ながらも神の力を使う響。なめてかかれば返り討ちに会うこともありえる。


 

だからこそ自身も力を使う必要がある。


 

師匠対弟子



 神対神


 

炎対風


 

数秒間の対峙が続く。



かたや全てを切り裂く風と全てを焼き尽くす炎。


 

どちらも一撃で決まる力だからこそ迂闊に動けない。



刻一刻と時間がすぎる中でその戦闘の狼煙は挙げられる。



 雲の隙間からつきの光が差し込んだ瞬間、両者は地を蹴り出す。



砂塵を作り大地を揺るがし木々を押し倒す。


 

神速の速度で間合い積めた二人の力は周囲を巻き上げながら交差する。


 

するはずたった。



 「「!!?」」



 二人の攻撃が当たるか当たらないかの距離でその動きは止まった。


 

(この力は・・・・)




 突然の異変に一真はすぐさま響との距離をとる。響もその力を感じ取っているのか、一真にむけた殺気は完全にその力の方に向かっている。



その力はまさにすぐそこから現れている。グルグルと潮のように中に黒い渦が現れる。


 

一真と響が感じ取ったその力は悪鬼の力。割り込むようにして現れたその力の持ち主はその渦から出ているのだ。




 「おいおい・・・・まさか・・・・・」

 


一真の顔に緊張が走る。



百戦錬磨の一真がそう思えるほどの実力者が現れると言うのだ。

 


横目で響を見る。



やはりというべきか暴走により本能的のな面が強くなっている響もその力の大きさに警戒を表している。



まるで犬の威嚇のような表情だ。

 


「やっと見つけたぞ・・・・・・素戔嗚よ・・・・」


 

うっすらと不気味な笑みを浮かべて黒い渦から現れたその悪鬼は男だった。



 

ボロボロの漆黒の着物に血のように赤い帯で止め腰と首まで伸びた銀髪。その隙間から見れる銀の目。



その漂わせる雰囲気はそこら辺の悪鬼とは一線を越えた雰囲気。


 

「やっとお出ましか夜鳥・・・・」



「お前が・・・・・・加具土命か・・・・・」


 

何処からか、一真はその手に一振りの刀を握っている。その刀身に炎を纏わせ臨戦態勢をとっている。



 「光栄たね。我々悪鬼の世界にその名轟かす高天原屈指の神、加具土にその名を知ってもらえるとわ。」


 

「お前もだよ。夜鳥。千年もの前から行き続けているお前のことをしらない神はいねーよ」



 「ほぉう・・・」



 「しかしお前は17年前の【神隠し事件】で力を大きく失ったって聞いたけどな・・・・・」

 


「まぁそれはいいだろ。・・・・それより最近やたらめったら同胞を殺してくれているようだなうだな。」


 

「??」


 

なんださっきの言葉は?



一真はその言葉に妙な違和感を覚える。なにか話が食い違っているようなそんな気分だ。



「しかし今はお前に構っている暇はない。最高の宝が目の前にあるんでな」


 

夜鳥と呼ばれる目線の先にいるのは響。



「さぁ・・・・・貰おう。その素晴らしき力を」


 

両手をひろげて響に語りかける。その姿はまるで愛するものを包み込むような姿。



しかしその顔は邪悪に満ちた顔。



 「やらせねーよ。あんぽんたん」



 「いや・・・・しかしあちらはそうでもないようだがな」


 


夜鳥は誘導するように視線を響に戻す。



鈍く光る青い瞳をギラギラと輝かせ好戦的な姿勢を見せる響。

 


「うおおおおおおお!!!!!」


 

それがきっかけだった。



獣のような遠吠えをあげ響は一直線に夜鳥ひに突っ込む。まるで全てを破壊つくすかのようにして。



対して夜鳥は相も変わらず邪悪な笑みを浮かべゆったりと構える。まるですべてを奪い尽くすかのように。


 

そして一真もその殺しあいを止めるべく夜鳥に走り出す。まるで全てをねじ伏せるかのように。


 

ダン!!と大きく踏み込み風をまとう破壊の拳を響は殴り付ける。


 

「!!?」



 しかしその拳を止めにかかったのは予想外にも一真だ。



 ギチギチと拳を止めながも響はなおもその拳を押し込もうとする。



 「凄まじい力だ。だが未熟だな」


 

夜鳥の言葉に一真は瞬時に反応する。



その姿にギョットとしてしまう。夜鳥の右手には台風のように風の渦が作られていく。



周りの風が全て夜鳥に集中しているのだ。それは響の風も例外ではない。



ズルズルと引きずり込まれるように拳の風は奪われていく。

 


ピタリと風の集約が止まる。



 夜鳥によって荒れていた木々もいつもどおりの静かさ。


 

しかしそれは文字通り嵐の前の静けさといってもよいものだった。



 夜鳥が動き出す。



 「うぉら!!!」



 夜鳥が右手を向けるのにタイミングを会わせ、一真はその手を自らの刀の柄尻で打ち上げる。



 夜鳥の手から溢れだす風は天を食らう。その一撃で空を覆う大きな雲を跡形もなく打ち消し、隠れている月をあらわにする。



地上に被害はない。



 しかし空に放たれた一撃がその威力を物語っている。



風が放たれている隙に一真は響を力任せに無理矢理投げ飛ばし、炎を纏った刀で夜鳥に切りかかる。

 


「・・・・・くそが・・・・・」


 

目付きをよりいっそう鋭くし一真は夜鳥を睨み付ける。



一真の一太刀をかわした夜鳥は一真と距離をとる。その顔には切り傷と小さな火傷の後。



その顔にも少なからず苛立ちが見てとれる。

 


一真を挟む形で三者は立ち会う 。



一瞬の攻防が終わり、三人とも次の攻撃を狙うために動きを止める。

 


(冗談じゃねーぞあの野郎!!)



 冷や汗をうかべなが一真はおもった。



夜鳥がはなったそれは圧縮された風の塊。



一真が響の攻撃を止めたのも同じような理由からだ。



 突然にして、響きが貼った結界が揺らぎだし、そして響の拳を受け止める瞬間に消えてしまったのだ。



未熟ながらも神力を使う響の一撃は結界を張れていない今の状況であの拳の風は周囲に大きな被害を与えるほどのものだ。



そんな力をもった風と周囲の風を取り込んだ夜鳥の一撃は悠々とその力を越えるものだということは言うまでもないだろう。



 ばん!!

 と、手を地面にして一瞬にして、響よりも何十倍もの結界を即座に作り出す。これにより、被害が大きく変わる。



 「がぁぁぁあ!!!!」

 


無理矢理投げ飛ばされた響はなおも夜鳥を狙い走り出すも。

ギュルンという音とともに響の両腕に再び風がまとわる。


 「うおお!!」



 「!!?」

 

しかしそれは先ほどとは違う。



 その様子に一真だけでなく同じく風を操る夜鳥ですら驚いている。

 


響はその拳で殴りかかるのではなく、その風を飛ばしにかかったのだ。


それは夜鳥が行ったのとにている技だ。


 

「大したものだか、分かっていないな」


 

その技を夜鳥難なくかわす。



すると風は不自然な形で消え去ったのだ。


 

「今の風の支配権は俺にある。力の差が明白な上に同じ風の力。拮抗していない状況では支配権が生まれるのはあたりまえだろう。」



 それに、と夜鳥は付け足す。


 

 「まともに力を使いこなせない技など当たるものか」


 

交わしながらも夜鳥は響に近づいてくる。一瞬にしてその距離を縮めにかかるが、それを一真はよしとしない。



 

炎弾を投げつけ夜鳥の動きを止めながら刀をで切りかかる。

 


舌打ちをしながら夜鳥も何処からか剣を出し受け止める。



 「うおおおおお!!!」

 


その場に間髪入れずに響が突っ込んでくる。



今度は風を放出するのではなく、最初のように纏わせてなぐりかかる。



 「!!」

 


ボコン!! 



 重い音とともに土煙が上がる。



今まで止められていた響の拳がついに炸裂する。



バキバキと地面を亀裂が走る。

 


「くそ!!やりずらい!!」


 

土煙を破りながら一真は飛び出した。その額からは一筋の血が流れている。

 


一真は夜鳥の動きより響の動きが厄介でたまらなかった。


 

例えるならスポーツで素人と試合をするようなものだろう。


もちろん経験者の方が強いには決まっているのだか素人は何をしでかすか分からない。それが経験者にしっぺ返しを食らうだろう。



響を止めた状態で夜鳥の攻撃を受け止めることはある程度の予測がつく。



 しかし夜鳥の動きを止めた状態で響の動きを予測するのは難しい。しかもなまじ力がある分厄介であり夜鳥の反撃もあるのだからたまったものではない。

 


「邪魔だ・・・!!」


 

「!!?」


 

土煙がしずまりつつあるなかで、聞こえたのは夜鳥の声。

 


ガギュイン!!


 

という金属がぶつかり合うとともに二人の鍔迫り合いが起きる。

 


予想外のことに土煙から飛び出した夜鳥は響ではなく一真を狙ってきたのだ。



その顔には苛立ちの他に一真が着けた傷のほかにも血が流れている。



 響の一撃を夜鳥も交わしきれなかったのだろう。

 


本来なら鍔迫り合いを起こさせないのが定石だ。しかしこの不意打ちはそれを許さなかった。



 「死ね!!」



 無慈悲なその一言を合図に先ほどと同じように風の力が集約される。


 

(ヤバイ!!)



一真もその攻撃の対処にはいる。しかし発動までの時間は夜鳥の方が早かった。



その一撃が放たれる。


 

「?!!」

 


しかしここで違和感を感じた。なぜか風の流れがおかしい。



夜鳥に集まるべき風はその後ろに流れている。

 


その流れの先は響だ。夜鳥の集めた風が響に流れているのだ。



 「これは?!」


 

夜鳥の顔色が驚きで埋め尽くされる。集束は終わり響はその手を二人に向ける。


 

(!!)



 その瞬間を一真は見落とさなかった。夜鳥の意識が響に向く瞬間に力を行使する。



 鍔迫り合いを体を流して解き、ダン!!と足を踏み飛び込むようにして交わす。



次の瞬間響の手から解放された風は暴れまわるようにして夜鳥をおそう。



 「しまっ・・・」



 その言葉を言うま暇もなく獣のごとき風は飲み込んだ。



 「まだだ。炎よ!!」



 受け身をとり立ち上がっている一真は刀身に宿した炎を竜巻に向けて放った。



 「いけぇぇぇ!!」



 すると炎は蛇のようにまとわりつくとその大きさを変えて竜巻を包み込んだのだ。



熱風を放ち、叩き潰す風の二つは世鳥にあたるとそのまま空に昇っていく。



 「ふぅ・・・・・」



 一瞬にして竜巻は消え去り軽く息をあげながらも一真は土煙が舞うその場所から目を話さなかった。

しかし、ドサリという音がなりその方向に顔を向けると、



 「響!!」


 


そこには響が前のめりに倒れ混んでいた。すぐさまかけより一真は響の容態を確認した。



そこでここに来てはじめての安堵の息が漏れる


 

(気をうしなっているだけか・・・)



 「やられたな・・・・・・」

 


粉塵舞い上がる場から夜鳥の声が聞こえた。一真はさっきのこもる目で睨み付ける。


 

「まさか風の力を奪われるとはな・・・・さらにその風に炎の力を加えてきたか・・・・・」

 


「・・・・炎は風を受けるとその力を増す。本来なら響の風でも食らわせるはずだったが・・・・・どうやら力尽きて主導権を奪われたか・・・・・・」


 

「いや本当に驚いたよ。まさか暴走している状態で力を上回られるとは・・・・・しかし何故暴走しておるのかな?」


 

一真の顔に怪訝な表情が浮かぶ。



 「どういうことだ?そもそも何故おまえは素戔嗚・・・・響の情報をつかんでいる?こいつには何かしらの封印が施されているんだぞ」

 


「封印?馬鹿をいうな・・・・俺は素戔嗚は17年前から力を自ら抑えているものだと思っていた。だから驚いたよ。今までいくら探しても手がかりがほぼ入らないのに、ここ数週間で突然素戔嗚が活動を始め雑魚の悪鬼を殺し回っている。」


 

「何!!?」

 


土煙が消え去り、そこか現れた夜鳥の姿は漆黒の着物をズタズタに切り裂かれ、血は流し至るところに火傷が見てとれる。



特に右腕はまるで炭ののように黒焦げになっている。姿が見えて気づけたが軽く肩で息もとっている。


 

「・・・・・右手で防いだか・・・・・」

 


一真の炎は腕一本ですむような安いものではない。当たれば物体を灰にしたり、溶かしたりするのは容易なものだ。

 


「ああ・・・・素戔嗚が気を失ってくれたお陰で風の支配力をギリギリで戻せた。」

 


しかし、と夜鳥は言葉を続ける。



 「解せんな・・・・・あの炎は俺を行動不能にする力があっても消し去るほどのものではなかった。たとえ風の恩赦を受けていようがな・・・・」

 


「お前には聞きたいことがあるからな・・・・・しかもそれも今の会話で増えてしまった。」


 

一真はゆっくりと刀を構え直した。刀身には再び紅蓮の炎が宿る。


 

「・・・・残念だがとりあえず今日は引かせて貰おう。このまま戦っても結果はついてこらんだろう。」


 

すると夜鳥の後ろに、現れたときと同じような黒い霧のような渦が表れる。

 


「逃がすか!!」



 大地を蹴り、瞬時に一真は襲いかかる。しかしその一太刀は空を切る。

 

 

「くそ・・・・・!!」


 

一歩及ばず夜鳥はどこかえ消え去った。


 

「・・・・・」

 


チンという納刀時の独特な鍔の音をならし一真は刀をしまう。



 するとその刀は炎に包まれ同時になくなっていた。そして同時に結界も消え去る。


 

 あたりを包み込んでいた異様な雰囲気が徐々になくなり、

辺りに日常の空気が流れる。



 「何かが・・・・・」



 一真は響の方に視線を戻す。この少年を台風の目にしてさまざなことが動いている。



それも単純なことではなく、なにかドロドロとした思想を感じれずにはいられなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ