表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬の一日

作者: シュン

 ベッドの上に寝転がって、イアホンを耳に当てる。

 流れてくる曲はテンポが早く、ノリのいい曲。だが、気分は満たされない。

 そのままぼんやりと部屋の天井を見上げる。白くて、ところどころ黒ずんでいる、年季ものだ。

 手を伸ばし、近くの机に置いてあるスナック菓子を取ろうとするが、手は空を掴むだけ。

 目をそちらの方向に向ける際に身体のバランスを崩し、ベッドから落ちる。

「……」

 頭をポリポリと掻きながら、部屋を出る。イアホンは落ちた時に外れた。

 すぐ右にある階段を下り、一階のリビングへと向かう。

 リビングのテーブルの上には朝食が置かれてあり、家族の姿は見当たらない。

 確か、今日弟も含め、三人でどこかに出かけると言っていた気がする。

 どこへかは、分からない。興味もない。

 今日は休日。ゆっくりダラダラと朝食を平らげ、身だしなみを整える。

 特にあてがあるわけではなかったが、家ですることもない。

 携帯をポケットに突っ込み、一応財布を持ち、家を出た。



 外は曇り空。灰色の雪雲が空を覆っていた。

 時折吹く風が身体を冷やす。息が白くなるほどだ、気温は低いらしい。

 気分はあまりよくない。気晴らしのつもりが、逆に悪くなったかもしれない。

 自動販売機に小銭を入れ、「あたたかい」飲み物のボタンを押す。

 ガタンと音が鳴る。缶を取り出した後、近くにあったベンチに座る。

 周りに人の気配はない。それだけが、唯一の気休めだ。

 でも空っぽの心は、何も満たされることはない。

 もう満たされないのかもしれない。そう思うとため息が出た。

 綺麗事、絵空事、妄想事、もうたくさんだった。

 どうしようもない、叶わない嘘ばかり。

 信用していた人間からは騙され、陥れられ、軽蔑され。

 人間と関わるのももう嫌だ。

 このまま消えてしまおうか

 そんなこと、できるはずもない。そう思うとまたため息が出た。

 立ち上がり、飲みきった缶をゴミ箱に捨てる。

 携帯を確認してみると、着信は0件。

 当たり前か、携帯をポケットに入れ、再び歩き出す。

 目的地は、家。

 帰るだけだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは、ミユーです。とても読みやすい文章だと思いました。それってとても大事なことですよね。読者を引き込むには。ツイッターのときとイメージが違うような気もしました。こちらのほうがお兄さんと…
2012/12/30 12:34 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ