冬の一日
ベッドの上に寝転がって、イアホンを耳に当てる。
流れてくる曲はテンポが早く、ノリのいい曲。だが、気分は満たされない。
そのままぼんやりと部屋の天井を見上げる。白くて、ところどころ黒ずんでいる、年季ものだ。
手を伸ばし、近くの机に置いてあるスナック菓子を取ろうとするが、手は空を掴むだけ。
目をそちらの方向に向ける際に身体のバランスを崩し、ベッドから落ちる。
「……」
頭をポリポリと掻きながら、部屋を出る。イアホンは落ちた時に外れた。
すぐ右にある階段を下り、一階のリビングへと向かう。
リビングのテーブルの上には朝食が置かれてあり、家族の姿は見当たらない。
確か、今日弟も含め、三人でどこかに出かけると言っていた気がする。
どこへかは、分からない。興味もない。
今日は休日。ゆっくりダラダラと朝食を平らげ、身だしなみを整える。
特にあてがあるわけではなかったが、家ですることもない。
携帯をポケットに突っ込み、一応財布を持ち、家を出た。
外は曇り空。灰色の雪雲が空を覆っていた。
時折吹く風が身体を冷やす。息が白くなるほどだ、気温は低いらしい。
気分はあまりよくない。気晴らしのつもりが、逆に悪くなったかもしれない。
自動販売機に小銭を入れ、「あたたかい」飲み物のボタンを押す。
ガタンと音が鳴る。缶を取り出した後、近くにあったベンチに座る。
周りに人の気配はない。それだけが、唯一の気休めだ。
でも空っぽの心は、何も満たされることはない。
もう満たされないのかもしれない。そう思うとため息が出た。
綺麗事、絵空事、妄想事、もうたくさんだった。
どうしようもない、叶わない嘘ばかり。
信用していた人間からは騙され、陥れられ、軽蔑され。
人間と関わるのももう嫌だ。
このまま消えてしまおうか
そんなこと、できるはずもない。そう思うとまたため息が出た。
立ち上がり、飲みきった缶をゴミ箱に捨てる。
携帯を確認してみると、着信は0件。
当たり前か、携帯をポケットに入れ、再び歩き出す。
目的地は、家。
帰るだけだ。