勇者を探して
ある意味コメディです。
「何処の魔王も不甲斐ない。勇者とやらに簡単にやられおって。しかしこの世界は、俺様が来たからには、もう愚民共の好き勝手はさせん。ふはははは! あ〜っはっはっはっは〜!」
ここは、とある世界。魔王ベルゼブブの降臨により、暗黒の世界へと変貌を遂げていた。
「勇者を見付けだし、まだ強くならぬうちに抹殺するのじゃ!」と魔王の命令を受けたモンスター達は、世界各地の村や町を襲い、勇者を探していた。
その頃魔王城では「それにしても、まだ勇者は見付からんのか! 腹も減った事だし、何か用意せい!」とベルゼブブは腹立たし気に怒鳴り散らしていた。
「すみません。魔王様。勇者は今、モンスター達が、世界中をくまなく探しておりますので、もう暫くお待ち下さい」と側近のモンスターが言うと、続けて「民衆より、「太陽の光が届かないので作物が育たない」と苦情の声が出ておりますが、如何致しましょう?」と言った。
「何!? 光が届かないから作物が、育たないだと! それでは食べる物が無いではないか!」と空に両手を掲げると呪文を唱えた。すると、みるみるうちに、暗黒に包まれた世界は、光射す大地へと変わっていった。
世界各地では、『勇者を差し出せ、勇者を差し出した者には、ベルゼブブ様より不老不死の恩恵が与えられる』と張り紙を出し、勇者捜索に一掃力を注いでいた。
「ええい! まだ勇者は見付からんのか! 何をしておるのじゃ! ……それにしてもメシはまだか!」と魔王は苛立ちを隠せずにいた。
「魔王様、只今世界各地にて懸賞を賭けて勇者を捜索中です。もう暫くお待ち下さい」と側近が言うと重ねて「民衆より、「毒を吐くモンスターや毒の水の為に作物が育たない」と苦情が出ておりますが、如何致しましょう?」と言った。
「何!? 毒の為に作物が育たんだと! それでは食べる物がないではないか! そのような物は魔界へ帰してしまえ!」そう言うと腕を組み、呪文を唱えた。するとみるみるうちに、川や海、湖の毒が消えていった。
世界各地では、人を捕まえては「お前が勇者か!」と尋問を繰り返し、躍起になって勇者を探していた。
「まだか!? まだ勇者は見付からんのか! 腹もそろそろ限界じゃ。何か用意せい!」とベルゼブブは、かすれた声で叫んでいた。
すると側近が、「今、埒があかないと一人一人尋問中です。あと僅かです。もう暫くお待ち下さい」と、言い「「作物は、育ってもモンスター達が荒らしてしまう為、献上出来ません」と民衆が訴えております」
と言うと、「あの馬鹿共が! 即刻モンスター共を魔界へ帰してしまえ!」と言うと、世界中のモンスター達が一斉に側近も含め姿を消してしまった。
世界各地では、モンスターが姿を消し平和が訪れていた。
「おい! 誰かおらぬのか! 腹が減ったぞ!」とベルゼブブがフラフラと魔王城を出た瞬間!!
ベルゼブブは光に身体を焼き尽くされ、「勇者は……何処……に……」と消え去った。
そして、世界に平和が戻ったのであった。
とある村で「なぁ、母ちゃん。勇者って何だ?」と小さな子供が聞いた。その時母親はこう答えた。「勇気のある人の事よ」
魔王は何がしたかったのか。勇者は…何処?