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桃太郎退治記

掲載日:2026/05/30

あのあと鬼は、金棒屋に頼みこみ、凶悪で残忍な特注金棒を手に入れた。


  ・


「出てこいっ 桃太郎」


地響きのような声が響いたあと、ほどなくして桃太郎が姿をあらわした。その手にはスマホが。


「も~ こまっちゃうな~」


「桃太郎、今度こそ、このオレ様の勝ちだっ」


「はい~ それでいいです~」


桃太郎は、やる気がなかった。どこまでも、どこまでも。


あまりのことに、鬼は、目の前の青年が桃太郎だと信じられなくなった。


「お前、ほんとに桃太郎か?」


「はい~ そうです~」


しかし、この熱量の低さでは鬼としても張り合いがない。


「どうした?」


「いま~ 動画編集~ 忙しくて~」


「ど、動画編集? とな? んんん、そんなことはいい、勝負だ! 勝負しろっ」


「え~ やるんですか~」


「さっさと支度しろっ」


「しかたないですね~ じゃあ~」


「よし、さあこいっ」


「でも~ 野球ですよ~」


  ・


めんどうくさそうに着替えをする桃太郎に向かって、おじいさんは、


「あんまり無理せんでいいぞ」


と言い残し山へ向かった。


おばあさんは、


「ほどほどが一番ですよ」


と声をかけ、川へと向かったのだった。


  ・


さて、試合である。


「野球だろうとなんだろうと、オレ様にかかれば」


鬼は、例の特注金棒を手に、バッターボックスへ入った。


「じゃあ~ いきますね~」


桃太郎があくび交じりに投げた球に対し、鬼は金棒をフルスイング。特注金棒の、殺傷力ましましの禍々しい突起部分がボールをとらえた。


  ガッッッキーーーーーーーン!!!


「どうだっ」


抜けるような高音とともに、白球が青い空の彼方へと消えていく。


「あ~ みんな~ よろしく~」


桃太郎が声をかけるより先にキジがタイミングよく宙を舞いボールを叩き落とす。叩き落とされたボールは木の枝から勢いよく飛び出したサルが、地面スレスレのところでキャッチ。それを犬に向かって素早く投げる。犬はボールを咥え、鬼めがけて走っていった。


「鬼~ アウト~」


お供のものたちの連係プレーが決まり、鬼にとっては、ふたたび無念の結果となった。


「ちくしょう、またしても」


「鬼さん~ もう殴り合いの時代じゃ~ ないですよ~」


桃太郎の言葉に、鬼は、あり金はたいて購入した金棒をしずかに置いた。


その帰り、鬼はスマホを購入した。出世払いで。


動画編集についても、おいおい調べてみよう、そんなことを思いながら、鬼は眠りについたのだった。









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