天恵?魔恵?
「空、赤っ」
現状を把握しよう。明らかにさっきまでと違う場所...というより、空気もまるで違う。
多分、何かのドッキリかもしくは、《異世界転生》ってやつだ。
「いや、身体は変わってないから、"異世界転移"か...。」
赤い空、妙にウネウネとした紫色の木、見たことない植物に、この不穏な空気。そのまんま、俺の解釈通りの【魔界】って感じだ。
「ギィィィィィィィィ」
「あ!?!?」
何かが俺の尻の下で暴れている。
「ギィィィ」
そこには黒い鱗を纏った蛇がいた。右目には傷を負っている。
俺自身、生き物が好きだったので特に嫌悪感などはない。
「ごめんな〜。」
自分でも、少し楽観的過ぎるとは思う。だが、「これは夢」とか、「本当でも、辛い現実から逃げれる」とか、そんな甘いことしか考えが湧かない。
「とりあえず、異世界なら何か使命とか欲しいけどな〜。ラノベとかではさ、神の啓示とかあってさ、やる事が分かるけど。こんな所に急に飛ばされて、もし今魔族とか来たらさぁ」
「おい、貴様、何者だ。」
1人でペチャクチャと文句を垂れていると、後ろから声をかけられる。
綺麗な金髪に紅の目をした美少年。
耳の先端は尖っていて、背中には黒い羽根。まるで悪魔みたいな.......
「あ、悪魔だ!?!?!?!?」
「貴様、人間か...?」
最悪だ。さっき(意識を失ってからどれくらいかは分からないが)死んだばっかりなのに、異世界転移してすぐまた死ぬなんて。せ、せめて何か抵抗...お約束通りなら、固有のスキルとか、チート能力とか.....。
........?
そう思うと、違和感に気付いた。
違和感というか、なんか、"できる"気がする。
「いいか、我は...って、は?」
イメージしてみた。
俺が、異世界の悪魔と戦うところを。
異世界転移した主人公が、超絶パワーで、相手を圧倒する光景を。
俊敏な動きで相手の懐に潜り込み、とんでもない力で、悪魔の腹部を、殴って...。
頭にそんな光景が流れる。
その時、その通りに、俺の身体は動いていた。
「カ゛ハ゛ッ゛.....」
鈍い音がなる。悪魔が身悶えしている。
「俺、強いじゃん.....!?」
やはり、お約束はあったのだ!俺は主人公になったのだ!これでこの世界ではきっと良いように
「《雨裁き・焔》」
え?
「まほう......?」
────────────────
「...ろ」
.........
「.......きろ」
.......生きろ?何を...誰.......
「起きろ!!!!!!!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁはいっっっっ!!!!」
何だか目を覚ます度に知らない場所にいる気がする。ここは、随分と豪華な一室...の床。
起床を急かしてきたのはさっきの美悪魔。
「生きてる.......?牢でもなく?」
「馬鹿が。我で良かったな。駆けつけたのが他の悪魔ならお前は今頃胃の中だ。」
「あ、悪魔ってやっぱ人喰うんだ....。」
カニバリズムというものがあまり理解出来ていなかったが、今人型の悪魔にそれを言われたことで嫌な方向に想像力が働いた 。
「じゃあ...えっと、」
「アスタだ。」
「アスタさんは、良い悪魔...っていうことですか?」
「.....人間にとっての善悪は分からないが、我はただ、先代魔王様の方針に従っているだけだ。」
先代魔王、か。なるほど、きっと人間に友好的か、平和主義な、人?だったのだろう。
「先代魔王様はある日、忽然と姿をお消しになられた。今は魔王の席は空いている状況だ。他の悪魔は、人間を尊重するようになった先代魔王様を邪険にしていたから、今の魔界はまさに"混沌"と化している。」
「はぁ....」
急にペラペラと内情を話し始めた。怖い。
「腑抜けた顔をしているな。人間。これを貴様に話している理由、自覚はあるのか?」
「......?いえ.....特に。」
アスタは溜息をつき、口を開いた。
「貴様から、先代魔王様の魔力を察知した。」
「..............ほう?」




