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「夢魔は淫魔とも呼ばれていて、人間とのセックスが好きな……ちょっとエロい悪魔なんだ」

「へぇ。私を誘惑できる悪魔がいるなら狙ってほしいかも」

「え?」


 飲みかけのビールは泡が消え、ジョッキに歪なリングを作っていた。


「怖くない? よくわからないものを産まされちゃうんだよ? しかも無理やり」

「でも私のことだけをずっと愛してくれるんでしょう? それ、私の理想のタイプだもん」


 遊君は苦笑いした。その目に陽気な輝きはない。期待外れの反応で盛り下がってしまったのかも。


「俺は嫌だなぁ。花ちゃんが誰かに取られちゃうの」


 遊君が枝豆の殻を小皿に置き、三杯目のビールをあおった。話に夢中だったせいか、ジョッキの中身は半分以上残っている。


「じゃあさ、遊君もその悪魔みたいになってよ」周りの女なんか気にしないで、私だけを求めたらいい。


 すると突然、遊君は声を上げて笑いだした。


「いいね、それ! そっかぁ。俺が悪魔になればいいのか。その視点はなかったなぁ」

「そうそう。悪魔になって、私のことを独り占めしたらいいよ」


 最後のひと口になったポテトサラダを箸ですくった。大きなじゃがいものかけらが入っていたけど、一回の咀嚼で簡単に潰れた。


「後悔しても知らないよ」


 珍しく静かな声の遊君が、いつかみたいにまっすぐ見つめてくる。明るい彼には似つかわしくない、仄暗い熱をもった瞳。私は急激に喉の渇きを覚え、残りのビールをひと息で飲み干した。だけど渇きはおさまらない。本当はこんな行為に意味がないからだ。


「私そろそろ帰るね」

「え? もう?」


 薄っすらと浮かび上がる疑問が、いつまでもここにいてはいけないと告げている。


「遊君かなり酔ってない? 目が据わってきてるもん。また倒れちゃうよ」

「そうなったら、もう一回花ちゃんが介抱してくれたり」立ち上がった私を、ちらっと上目遣いで窺ってくる。


「他の人と遊んでいるうちはダメ」

「あっ、花ちゃん待ってよ!」

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