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ちょっとした日常

「ん……朝か……」

 

 大きく伸びをしてベッドから起き上がる。窓から差し込む光がまぶしい。

 

 昨日は確か……アリア先輩の家にご飯を作りにいって……そのあとどうしたんだっけ?


 ボーっとしている頭でそんなことを考えていると、


「あ、起きた」

 

 隣から声がした。


「え?」


 隣を見ると、そこにはアリア先輩がいた。


 ……下着で。


「な、なにやってるんですか!?」


 急いでベッドから転がり出て、先輩に向き直った。


「なんでいるんですか!? というかなんで服着てない!?」


「ここ私の部屋だし……服は……めんどいから」


「いや服着てください!?」


「……着なきゃダメ?」


「ダメです!!」


「じゃあ……着させて?」


「はぁ!?」


 何言いだしてんだこの人!? 


「何言ってるんですか!? 自分で着てください!?」


「だって……めんどくさい」


「なんでも面倒くさがらないでください!!」


 急いで部屋から出て扉をバタンと閉める。


「服着て来ないと朝食なしですよ!!」


そう言うと、扉越しに


「むぅ……ご飯を人質に取るとは……ひどい」


という先輩の声が聞こえた。


「というか、なんで自分は先輩の部屋に?」


「私がソファで寝てた君を式神に運ばせた……」


 そういえば……昨日ご飯を作りに行った後、疲れてソファで横になって……そこからの記憶がない。


「……ありがとうございます。先輩。運んでくれて」


「ん。もっと感謝してくれてもいい」


 アリア先輩の持っている傀儡のエンブレムは、ある物質を媒体として式神を召喚できるエンブレムだ。

 

 先輩の場合は自身の魔力を流した紙を媒体として式神を召喚している。


 ちなみに、媒体となる物質は何でもいいらしいのだが、先輩曰く、


「紙が一番しっくり来た……」


 らしい。


 流す魔力の量によって式神の強さは大きく変わる。

 

 人、それも男性を運ぶとなると、多大な魔力を消費するだろう。

 

「本当に感謝してます」


「……じゃあ、あれ買ってきて。新しくできたお店のご飯」


「……分かりました。でも頼みますから服は着ていてください」


「ん。約束する」


 そういって、僕は出かける準備を始めた。



 先輩の家を出て、表の通りに出る。

 

 通りでは店の準備を始めている人や、市場に顔をだす人など、朝から賑わっている。

 

「新しくできた店は……町の中心のほうか」


 僕は町の中心に向かって歩き出した。


 そういえば、ロイたちも昨日の夜この店に行ってたな。

 

 なんでも看板メニューのグリルドチーズが絶品だとか。

 

 ……グリルドチーズだけじゃあの人足りないだろうな。

 

 何を買うか考えてながら歩いていると、

 

「あ! カイトさん!!」


 聞きなれた声がしたので振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべたユイカがいた。


 何やらいいことでもあったのだろうか?


「ユイカ。おはよう」


「はい! おはようございます!!」


「機嫌がいいみたいだけど、どうかしたのか?」


「昨日食べた新しくできたお店のご飯の味が忘れられなくて……それで、今日はそのお店にモーニングを食べに行くんです!!」


「奇遇だね。僕も行こうと思っていたんだ」


「ほんとですか!! じゃあ一緒に行きましょう!!」


 普段は弱気な彼女だが、食べ物のことになると元気になるのは相変わらずだな。


 そうして、ユイカと世間話をしながら歩き、僕たちは目当ての店へと到着した。


 店の名前は『フード・エンジェルズ』というらしい。


 店のとドアを開けると、美味しそうな匂いが漂ってくる。


「いらっしゃいませー!! 2名様でよろしいですか?」


「はい」


「では窓際の席へどうぞー!」


 案内された席に移動し、僕たちは座った。


「ここの料理はどれもおいしいんですよ!! 看板メニューのグリルドチーズももちろんそうですが、他にもエビとマカロニがたっぷり入ったトロットロのグラタンとか、お肉のコクとトマトの酸味がマッチしたミートソースのパスタとか!! どれもこれもとってもおいしいんです!!」


「確かに、どれもおいしそうだ」


 メニューを見ながら僕はそう答えた。


「ご注文はお決まりですか?」


「カイトさんは何にしますか? 私はこのグラタンとトーストのセットにしようかな」


「じゃあ僕はこのミートソースのパスタで」


「かしこまりました! 少々お待ちください」


 しばらくすると、注文した料理が運ばれてきた。


「お待たせしました! グラタンとトーストのセット。そしてミートソースパスタです。それではごゆっくりどうぞ!」


「じゃあ、いただこうか」


「はい! いただきまーす!!」


 パスタをフォークで巻き、一口食べる。


「うん。美味しい!」


 ひき肉のコクとトマトのまろやかな酸味、そしてトロっとするまで煮詰められた野菜の甘みが、パスタに絡んでいてとても美味しい。


 ふと顔を上げると、ユイカがじーっとこちらを見つめている。


「どうした?」


「いえ……カイトさん、美味しそうに食べるなぁって思って」


「実際美味しいからな」


「カイトさんの食べてる姿を見ていると私もパスタを食べたくなってきました……」


「ん? 食べてみるか?」


「え!?」


 パスタを巻いたフォークを彼女の口に近付ける。


「で…でも、それだと間接キスに……(小声)」


「? なんか言ったか?」


「い、いえ!! なんでもありません!! …じゃ、じゃあ……あーん」


「はい。どうぞ……どうだ? 美味しいか?」


「……はい。おいひいです……」


 心なしか顔が赤いように見えるが……大丈夫だろうか?




 しばらくして僕たちは朝食を食べ終わり、食後のコーヒーを飲んでいた。


 コーヒーを飲みながらユイカと話していると、


「そういえば、また"夜の英雄"による暗殺があったそうですよ」


「……へぇ、今度は誰が?」


「サリアスさんという貴族のようですが、その家の人たちが情報規制を敷いたので詳細は分かっていないそうです。騎士団も彼に狙われたということは何かあると考えているようで、独自に調査しているとか」


「騎士団は大変だね」


「そうですね。言ってしまっては悪いですが、"夜の英雄"による暗殺で裏社会に関わっている人たちを一掃できる反面、騎士団として"夜の英雄"による暗殺も見過ごすわけにもいかず、ここ最近は休む暇もないようですよ。お兄ちゃんもしばらく帰ってきてませんから」


「そうなのか」


 ユイカのお兄さんは騎士団に所属している。

 

 僕も冒険者ギルドの依頼などの関係で何度か顔を合わせたことがある。


 なんだかお兄さんに申し訳なくなってきたな。


 しかし仕事なのだ。お互いに頑張りましょう。お兄さん。


「……あ!! 朝ごはん食べたらクルミちゃんと冒険者ギルドの依頼を片付けに行くんでした!! もう行かないと!!」


「そうか。支払いはしておくよ」


「えっ!? そんな、申し訳ないですよ!!」


「別に大丈夫だよ。急いでるんだろ? 早く行ってあげないと」


「そうですけど……」


「じゃあ、今度迷宮に行った後何かご飯を買ってもらおうかな。それでいいか?」


「……わかりました。ありがとうございます。 じゃあお先に失礼しますね!」


そう言い残して、彼女は急いで店を出て行った。


ユイカが出て行ってしばらくした後、


『ブブブ……ブブブ……』


と連絡用魔道具が震えた。


「もしもし?」


『……遅い。もう着替え終わった』


「ごめんなさい。道中、仲間とばったり会いまして、少し世間話をしていたもので」


『早く帰ってきて。お腹ぺこぺこで死にそう』


「今から買って帰ります」


『ん……待ってる……プツッ』


「帰るか」


そうして、朝食の支払いと先輩のご飯を買った後、僕は店を出た。

料理の説明が具体的過ぎますね。でも美味しそうな表現がこれしか思い浮かばなかったんです。


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