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年下のユニコーン獣人が私の婚活の邪魔をしていたって本当ですか?!  作者: 志熊みゅう
第二章 求婚

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15. 本屋

 翌日、私が経営している本屋に行くと、店長が頼んでいた本を用意しておいてくれた。テリソートの文化や番を紹介する本だ。こちらの人間が書いているので、もちろん私でもそのまま読める。


「店長、ありがとうね。」


「いえいえ、このくらいお安い御用です。」


 店の奥の隠し部屋に籠り、早速内容を確認する。大体はロレンシオから聞いている話と同じだった。


 ――番は獣人特有の本能であること、血が薄ければ獣人としての本能も薄いこと、そして番は生涯ただ一人であること、番の存在は獣人とって空気や食べ物レベルに大事であること。


 そして、テリソートで売られている媚薬は獣人が人間の番に飲ませるものではなく、人間側が獣人のために飲む薬だと書いてあった。――そうでないと、番の愛に応えられないから。


 獣人が番を認識するメカニズムに、恋愛感情が関係しているのではないかという説もあった。ただ、獣人たちの多くが、もっと番を"神秘的な存在"として捕らえていて、神様に決められた運命の人、前世からつながりのある人なんていう話を本気で信じているんだそう。


「獣人たちって、案外ロマンチストなのね。」


 そして人間には、番という本能がないから、番が人間だった獣人たちは、多くの葛藤を抱えながら生活しているともあった。あと、稀ではあるが、番以外のものに恋心を頂き、番を捨てる獣人もいると。――なるほど、昨日の劇の主人公みたいな人か。


 ユニコーン獣人について、書かれた本も読んだ。多くは王族絡みの本だ。ユニコーン獣人は、割と血気盛んで獰猛な人が多いけど、番に対しては、甘えん坊で独占欲が強い人が多いらしい。そして、彼らに一番特徴的なのは"貞操"を大事にすること。例え、番であっても、番以外の相手と性交渉した相手を決して受け入れることができないそうだ。


 よく思い返すと、子ども時代のロレンシオも、学生時代のロレンシオも会うたびに、さりげなく私の首筋の匂いを確認していた。なるほど、私が誰のものにもなっていないことを、あの子はずっと確認し続けていたのか。


 その他にも、番を監禁して外に出さないなんて王子の話や、愛する番である王妃が捕虜になり、襲われたことに気を病み、王妃奪還後、一緒に心中したという王の逸話もあった。――王家絡みのエピソードを読むたびに、胸の奥に北風が吹いたように、肝が冷えた。


 獣人が主人公の小説の何冊かは、家に持ち帰って読むことにした。獣人目線で書かれた小説は、獣人行動がどういう気持ちに基づいたものか勉強になる。大切な宝物をしまい込むように、誰にも触らせたくない、自分だけを見ていて欲しいという感情がやはり根底にあるようだ。人間だと、いくら愛し合った夫婦でも、段々と関係がドライなものに変わっていくのに、獣人たちはそれが生涯続いてくのだから、ちょっとびっくりしてしまう。


 仮に、ロレンシオからの求婚を受けるとして、私は彼と同じだけの愛を返せるのだろうか?彼を思い続けることができるのだろうか。今までの婚約と違って、本当の意味での愛を求められているような気がした。

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