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年下のユニコーン獣人が私の婚活の邪魔をしていたって本当ですか?!  作者: 志熊みゅう
第二章 求婚

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5. ドレス

 ロレンシオが帰った後、自室に戻った。昨日もらった大量の花々が飾られている。自分の部屋なのにどこか落ち着かなくて、ブランカに声をかけた。


「一体、あの子はいつから、あんな風になってしまったのかしら。」


 ぼそっと、独り言を言うと、ブランカも同じく困惑した様子だった。


「――もしかして、ずっとそうだったんじゃないですか?先ほどの話を聞く限り。」


「ええっ」


 ブランカに言われて、はっとした。もしかして今まで、「姉様、姉様」といって懐いていたのって、姉としてではなく、まさか……。


「そうだ、フロレンシア様、珍しい方から、お手紙が届いていますよ。」


 ブランカから一通の手紙を受け取る。差出人を見て、びっくりした。


 ――ベルトラン・フランコ


 私の初めの婚約者、ずっと私の許嫁だった人。


 早速、封を開けて中身を確認する。そこには見慣れた懐かしい文字が並んでいた。思い返せば5人の婚約者の中で、一番気が合って、そして一番仲良くやっていた気がする。そもそも、彼と結婚できていれば、こんなことにはならなかった。本来、彼とあったはずの未来に思い馳せ、少し胸が痛んだ。


 用件は一時的に国に戻るから、その時に久しぶりに会って話がしたいとのこと。今彼が住んでいるのは、テリソート。獣人のこと、番のこと、完全な第三者の彼に話を聞いてみたかった。だから「ぜひ会いたい」と返事を書いた。


 窓の外を見ると、庭で真っ赤な薔薇が見頃を迎えていた。


 そういえば、あと少しで薔薇会か。――薔薇会というのは、モレノ侯爵家で開かれる一大イベントで、侯爵家主催ながら、国内貴族たちの多くが集う華やかなガーデンパーティーだ。今年の薔薇会にお父様は参加できないと、言ってた。かといって、誓印なんて厄介なものをつけられて、迂闊に別のパートナーにエスコートをお願いする訳にもいかなかった。


「――しょうがない。ロレンシオに頼むか。」


 彼にも手紙を書いた。昨日のお礼と、薔薇会のこと。


 ぜひ一緒に参加したいとすぐ返事をくれた。しかも、「ドレスと宝石はこちらからお贈りします。当日は、ぜひそちらを身に着けて頂けるとうれしいです。」なんて、書いてある。少し嫌な予感がした。


 ――悪い予感は当たるものだ。贈られてきたのは、紫色のドレスにシューズ、そしてアメジストのジュエリーセット。まだ求婚を了承した訳ではないのに、これだとまるで婚約者だ。弟のオスカルも半ばあきれ顔だった。


「姉上、これはまたロレンシオ様の独占欲が最大限に表現されたプレゼントですね。」


「そうね。プレゼントしたいって言うから、やりすぎないように書いたんだけど。そういえば――あなたは、アイナ嬢にどんなドレスを贈ったの?」


「一応自分の瞳の青色がワンポイントで入ったドレスを贈りました。彼女は暖色系のドレスが好みなので、ピンクとバイカラーのものにしました。」


「あら、オスカルにしては、気が利いてるじゃない。」


「ええ、アイナから少しずつ、学ばせてもらっています。」


 少しトロいところがあるオスカルに、意外とはっきり意見を言うアイナ嬢はぴったりな組み合わせなのかもしれないと思った。

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