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1. 5度目の婚約破棄

「え、わたくしとの婚約を破棄したいというのは、一体どういうことでしょうか?」


 定期のお茶会で、優雅に紅茶をすする私に、婚約者のクラウディオは突然『婚約を破棄したい』と告げた。思わずむせそうになりながらも、気丈に微笑みを保った。せっかくクラウディオの瞳の色に合わせてエメラルドグリーンのドレスを着てきたっていうのに、どういうことなのかしら。


「フロレンシア、君が悪い訳ではないんだ。実は……隣国が急に魔石貿易の取引先を変えたいと言ってきてね。うちはもともと借金まみれの伯爵家だ。とてもとても、君と結婚できるような、経済状況ではなくなってしまった。」


「そ、それならば、うちの父に。」


「実はもう君のお父上にも、新たな融資を頼んだ。でも断られてしまった。そりゃそうだよな、もうだいぶ借金も肩代わりしてもらったのに。――今回の件は、私の不徳の致すところだ。本当にすまなかった。」


「ク、クラウディオ様。」


 私の頬を一筋の涙が零れ落ちた。今までのことがフラッシュバックする。


 実は自分で言うのもなんだが、これで5度目の婚約破棄だ。


 ――初めの人は、もともと私の許婚で、父のお眼鏡にかなった真面目で優秀な人だった。学園卒業後、彼は隣国・テリソートに留学に行った、奨学金も獲得して。彼は、そのまま外交官の職を得て彼の地に残った。婚約破棄は手紙一枚のやりとりで成立した。


 ――二番目の人は、騎士だった。見た目がよく、モテる人だった。その素行を怪しく思うことはあったが、多少のことは目をつぶろうと思った。だが、ある日彼は私に告げた。運命の恋人に出会ったと。運命の恋人とやらは、なんと侯爵家の一人娘だった。子爵令嬢で、嫡子でもない私が勝てるはずがなかった。


 ――三人目の人も、悪い人ではなかった。ただ母親が、ある祈祷師に、とんでもなく心酔していた。祈祷師の霊視で、私に悪霊がついている、私との結婚は領地に災厄をもたらすと予言され、母親からの強い希望で婚約は破談になった。


 ――四人目は歴代でも最悪だった。今思えば最初から様子がおかしかった。まず、私と目を合わせないし、いつも話を半分しか聞いていない。正直こちらから婚約を破棄しようかと悩んだほどだ。しかし、婚約して半年後、やっとその理由が分かった。彼は、義妹にゾッコンだったのだ。義妹は縁戚の子で彼の家に引き取られて、兄妹同然に育てられた――はずだった。しかし、私と出会った頃には、既に彼らは一線を越えていた。義妹が妊娠したという報せと共に、私の婚約は破棄された。


 そして――今回である。


 婚約破棄なんてそうそうあることではない。自分には非がなかったはずだ、でも5回も悲劇が続くとは。そんなこんなで、この国で、結婚の適齢期と言われる18歳はとうに過ぎ、今年で24歳になった。


 24歳、配偶者なし、子どもなし、婚約者もなし。すべてが振り出しに戻った。

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