9話 夜間訓練 後半
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神崎さんのアドバイスは「敵の気配を探る」だった。
俺は今まで自分の気配だけを殺し、敵は目と音で見つけてきた。
でもそれだけでは、これからは生き残れない。
(敵を感じ取る)
拓磨は深呼吸し目を瞑る。
「ふぅぅー」
微かに聞こえた枝を踏む音。
……!そこにいる、
姿は見えないでも確実にそこにいる。
音を頼りに銃を構える。
何も見えないだが音で相手のしている行動が見えてくる。
(これが気配を探る…?)
確実に当てるつもりで引き金を引く。
パンッ。
「うぅ…」
1人が倒れた音がする。
(…やった!当たった、神崎さんの言ってた通りだ)
すぐに体勢を低くし進んでいく。
アナウンスが掛かる。
「残り30分となりました!」
あと30分……ここでどれだけ倒せるかが鍵になる。
パキッ
……聞こえた!確かに聞こえた!枝を踏む音。
すぐに銃を構え近づく、汗で手が滑るがしっかりと握り、標準を合わせる。
(まだだ、もう少し……もう少し)
次に相手が足を動かした瞬間、拓磨が引き金を引く。
パンッ!
1人が音も上げずに倒れる。
(……よし、いいぞ)
次の獲物を探していたら後ろから殺気を感じた。
瞬時に振り向く、そこにいたのはロシア人だった。
銃を構える前にロシア人が引き金を引く。
拓磨は咄嗟に体を動かす。
パンッ!
頬に弾が掠める。
(……!当たらなかった?いや当てなかった!?)
あのロシア人が弾を外すなんて真似はしない。
アレクセイが一言。
「遅い」
鳥肌がたった。こいつは俺のことを試したのか?
ロシア人が俺に背を向け、闇へと姿を消す。
その後、俺はショックと動けなかった悔しさでそのまま訓練が終わってしまった。
その時、神崎さんが声をかけてくれたがよく覚えていない。
あの時のロシア人の表情が頭から離れない。
自分に失望したような冷たい顔をしていた。
鬼塚が前に立ち順位を発表する。
「よおぉぉーし!お前ら今回の訓練の順位を発表する!!」
拓磨は、切り替えこそできていないものの自分の順位に興味を持っていた。
「まず生存者数22人!この中には1人も倒せなかったものもいるが、生き残っただけで100点だ!自信もなくすなよ!次に一位の発表だ!」
息を呑む、結果はだいたいわかっている。ロシア人だろうだけど緊張する。
「一位はアレクセイ・ドラゴヴィッチ!撃破数18人!かなり多い誰にも気付かれずに倒したからな。優秀だ」
あのロシア人名前はアレクセイか覚えた。
「二位は、神崎真!撃破数14人!アレクセイには劣るものの十分に優秀だ!」
神崎さんが二位か、、やっぱり優秀だ。
「三位は、桐生鷹斗!撃破数11人!こいつは冷静な判断や気配を消すのがめちゃくちゃうまかった!」
桐生?初耳だ顔は無口そうだ。
「続いて4位は、金木拓磨!撃破数6人!こいつは弾の精度がいいぞ」
(4位だ!5位以内!達成した、これで……特別な訓練を受けられる!)
神崎さんが肩を叩き励ましてくれる。
「やったな!拓磨!」
「はい!神崎さんのアドバイスのおかげです!」
神崎さんがいなかったらこんなに倒せなかったかもしれない。本当に感謝だ。
「最後に五位!岡里雄太!撃破数五人!以上、上位五名だ!」
拍手が起こる。
(俺は上位に入れたんだ、やった、やったぞ…!)
雄太が肩に手を置いてきた。
「拓磨さん!やりました!上位に入れました!!」
「おう!お前もなかなかやるな!この調子で行こうぜ!」
その後5位だけが残らされた。
「お前ら5人はこれから特別な訓練を行ってもらう。」
(きた!噂通りだ)
「だがこの訓練は極めてきつい…だから受けたくなければ受けなくても良いだろう……」
鬼塚が気まずそうにしている。
「受ける奴は、明日の16時に南運動場にきてくれ…」
鬼塚が歩き去っていく。
いつもの元気がなくなっている、何かあったのだろうか
「拓磨!お前ももちろん受けるよな!」
神崎さんが言ってきた。
「もちろんです!これで強くなれるならなんだってやります!」
アレクセイが部屋に戻っていく。
あいつも受けるだろう。
俺も部屋に戻りノートを開いた。
一、気配を探る感覚を掴みかけた
目と音だけに頼っていた俺は甘かった。枝を踏む音、空気の動き、鳥の鳴き声が止むタイミング、息遣い。それらが全て「気配」だった。
神崎さんの言う「気配を探れ」の意味が少し分かった気がする。あれができるようになれば、夜でも戦える。
一、冷静さが足りなかった
アレクセイに後ろを取られたとき、一瞬で身体が硬直した。怖さで思考が止まり動けなかった。あれが実戦なら死んでいた。
怖くても止まらず動く。冷静さを失った瞬間に死ぬ。それが戦場。
一、撃つ時に覚悟が足りない
「当てる」ことだけ考えていた。撃つことは命を奪うことだと鬼塚教官に言われたのに、まだ分かっていなかった。
アレクセイの「遅い」は、撃つ覚悟の遅さだったのかもしれない。
一、撃破数6人、4位で上位入り
5位以内を目標にして達成できたことは素直に嬉しい。ただ、アレクセイ18人、神崎さん14人、桐生11人。桁が違う。
このままでは追いつけない。追い越すためにはこの差を埋めなければならない。
一、課題
・冷静さを保つ訓練(心拍数・呼吸のコントロール)
・気配を探る訓練(目を閉じて音・匂い・空気で察知する練習)
・撃つ時の覚悟(「倒す」つもりで撃つ意識を持つ)
・夜間での動き方(姿勢を低く、遮蔽物の使い方)
・弾数を減らして正確に当てる訓練
一、思ったこと
怖かった。でも楽しかった。撃つ瞬間、心が震える。
俺はもっと強くなりたい。神崎さん、アレクセイ、桐生。あの人たちの背中を追い越したい。
明日の特別訓練、絶対受ける。何があっても強くなって、生き残る。
次は絶対、アレクセイの背中に追いつく。
書き終えた後、拓磨はペンを置き、しばらく机に突っ伏して息を整える。
「俺は強くなる。次は負けない。」
心の中でそう誓い、静かにノートを閉じる。
朝がきた……
9話 完