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5話 射撃訓練

射撃訓練

朝、訓練場には冷たい風が吹いていた。


今日は射撃訓練らしい。何をするのかは知らないが、俺は少しだけ自信があった。


サバゲーをずっとやってきたからだ。


構え方、遮蔽物の使い方、索敵、リロードの動作。

全部、体に染みついている。


だがそれは“遊び”の話だ。本物の訓練がどうなのか、まだわかっていない。


「よぉ、金木。準備はできてるか?」


鬼塚教官が笑いながら声をかけてくる。


「はい、やります。」


「今日は動くターゲットを撃ち抜く訓練だ。動きながら撃ち、撃ちながら動け。弾は一人三マガジン。使い切る前にターゲットを全部倒せなかったら罰だ。」


「了解です!」


俺は息を吐き、銃を受け取った。



「はじめ!」


合図と同時にターゲットが走り出す。

サバゲーの癖で瞬時に遮蔽物へ滑り込む。腰を低くし、呼吸を整え、遮蔽物越しに周囲を確認する。


(……どこだ、動くターゲット、どこに……いた!)


ターゲットの動きは思ったより速い。サバゲーとは比べ物にならない。


(動きが速い……でも、予測できる。次は、左だ!)


俺は遮蔽物から飛び出し、二発のバースト射撃を叩き込む。ターゲットが倒れる。


「いいぞ!」


鬼塚の声が遠くで聞こえるが、気にしている余裕はない。


すぐに移動し次のターゲットを探す。向こうから撃ち返してくるわけじゃないが、弾数は有限。焦って外せば終わりだ。


次のターゲットが横切る瞬間を見計らい、足を止めずに撃つ。


一発、外した。二発目が肩に当たり倒れる。


(くそ、外した……でも次!)


俺は次々にターゲットを倒していく。


ターゲットが突然方向を変える。

その動きに体が反応し、反射で撃つ。


一瞬の静寂。ターゲットが倒れる。


(当たった……今の当たった!)


俺は呼吸が荒くなっていることに気づく。まだだ、まだ動ける。



最後のターゲットが現れる。


(ここだ……こういう時は、ここに来る……!)


サバゲーで何度も読み勝ってきた感覚が体を動かす。

遮蔽物の陰から半身を出し、予測撃ち。


パァンッ。


ターゲットのヘルメットに当たった。


その瞬間、終了の笛が鳴る。



「ほぉ……お前、やるじゃねぇか。」


鬼塚が近づいてくる。


「ありがとうございます。」


「動きが悪くねぇ。なにかやってたのか?」


「……はい、昔少しサバゲーを。」


「だがな、これは遊びじゃねぇ。お前の動きには“遊び”が残ってる。お前の撃った弾には、“殺気”がねぇんだよ。」


その言葉がズシリと胸に突き刺さる。


(殺気……?)


「弾を撃つってのは、命を奪うってことだ。生き延びるために撃つんだ。相手を倒すつもりで撃たなきゃ、相手の方が先にお前を撃つ。分かるな?」


「……はい。」


「まぁいい。最初にしちゃ上出来だ。これから叩き直してやるよ。」


次は神崎さんの番だ。

 

 やっぱり中尉をやっていただけやってかなり早い。

 弾も正確に当て焦りもなく被弾も少ない。

 まさに非の打ち所がない射撃訓練能力だ。

 訓練が終わった神崎さんに話しかける。


「神崎さん!」

「おう!拓磨どうだ?俺上手かったろ」


 神崎さんがにこりと笑う


「はい!めちゃくちゃ上手かったっす!なんかコツとかあるんですか?」


「コツはだなぁ。とにかく焦らないことだ、焦ると視界が狭くなり判断能力も低下する。結果精度も落ち当たらなくなってしまうんだ。」


「なるほど!参考になります!」


 (確かに。焦ると冷静さが保てなくなり失敗が増えるのは納得だ。)


「拓磨!次はダニエルの番だ。」


「はい!観戦しましょう!」


 ダニエルとは初日の夜に知り合った派遣外国人である。その日の夜に仲良くなり実に2日ぶりに会う。


 ダニエルはタイムは遅いものの市民とターゲットを的確に見極め弾を当てておりなかなか優秀である。


「2人とも!どうでしたか?私の腕前は!」

「ダニエル!なかなかやるじゃないか!みくびっていたぞ!」


 神崎さんがダニエルの肩を叩く。

 ダニエルには、タイムでは勝っているものの弾の精度や落ち着きは負けていただろう。

 そこら辺を今度は伸ばさなければ。


「神崎さん、ダニエル、次はロシア人の番だ。」

 

 冷たい風が再び吹く。


俺の中に、さっき鬼塚が言った言葉が残っていた。


(“殺気”か……)


それが何かはまだわからない。だが、わかるまで、俺は絶対に諦めない。


 5話 完


 

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