白昼夢の罠:反逆者の誓い
「メルギド博士、申し訳ありません…。任務を失敗しました…。」
レオンは、土下座して床に頭をこすり付けていた。
メルギド博士はしばらく沈黙し、冷たい視線をレオンに向けた。
「まずは、状況を…。」
低く鋭い声が響く。
レオンは息を整え、できる限り冷静に報告しようと努めた。
「はい…。ターゲットのエリスは【魔法陣使い】でした…。さらに、あちらの【MACOK】の中に精神系の魔法陣を操る者がおり、手合わせしましたが止めを刺すには至りませんでした…。撤退するしかありませんでした…。」
床に頭を押し付けたまま、レオンは必死に謝罪を続ける。
「大変申し訳ありません…。」
メルギド博士は指先でテーブルを軽く叩きながら考え込む。
「分かりました!その状況では、それが最善でしょう…。ただし、次はないと思ってください!」
その冷たい言葉に、レオンの全身が強張る。
「ありがとうございます…ありがとうございます…。」
レオンは卑屈なまでに感謝の言葉を並べ、必死に博士の怒りを沈めようとする。
アジトへ戻ると、レオンはリナにこのことを相談するかどうか迷っていた。しかし、リナのことを完全に信用しているわけではなく、真実を話すべきか悩みながら時間だけが過ぎていった。
「レオンが任務を失敗するなんて珍しいわね!」
突然リナが話しかけてきた。
「ああ、リナ…。相手が悪かった…。」
「相手も【MACOK】だったんでしょ?」
「そうなんだ…。」
リナの表情が少し鋭くなり、レオンを値踏みするような視線を向ける。
「詳しく教えておいてくれる?」
レオンは、わずかに躊躇しながらもゆっくりと答えた。
「相手の【MACOK】は、精神系の魔法陣の使い手で、僕とは相性が最悪だった。早々に撤退と判断して逃げたから、それ以上詳しいことは分からなかった…。ごめん…。」
「そっか…残念!」
リナは少し悪そうな顔で微笑む。
レオンは、リナのことをまったく信じていないわけではない。しかし、今は本当のことを言わない方が得策だと直感的に判断していた。
その直感は的中する。
「メルギド博士、レオンはあれ以上の情報は持っていないようでした!」
「リナ、ご苦労様!」
案の定、リナはメルギド博士に情報を流していた。
レオンの勘は当たってしまった。
その日から、レオンはミリアを助け出す方法だけを考え続けた。
•••••••••
ミリアの【白昼夢】を使うのはいいが、リスクが大きすぎる。
まず、【白昼夢】を使うと、ミリアも睡眠状態になってしまうため、僕が近くですぐに起こす必要がある。
エリスを【白昼夢】に閉じ込めた後のことも考えなければいけない…。エリスが死んでしまったら、ミリアまで命を落としてしまうから、意味がない。
つまり、エリスを生きたまま封じ込め続ける方法を考え出さないといけないのだが…浮かんでこない…。
あと、もしミリアを助け出せても、肝心の自分がこのままでは、元も子もない…。
結局、ミリアを助け出すには、【魔法陣使い】全員を一網打尽にして無力化する方法を考え出さなければならないのだ。
•••••••••
「そんなの無理だ!」
レオンは、そんな出口のない自問自答を繰り返す毎日だった。
そんな日が何日か続いたある日、レオンに窃盗の依頼が舞い込んできた。
「レオン、首都マルカスへ行って国立魔法美術館に展示されている国宝である【神器:漆黒の鎧】を持ってきてください!」
「了解しました!」
レオンはいつものようにスーッと消えた。
次回 秘宝をめぐる出会いと運命の選択
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