闇の試練:刻まれた運命の代償
「では、実験と行きましょうか。」
メルギド博士が、楽しそうに言った。
「マルクは風属性ですが土の魔法陣を、カリンは炎属性ですが水の魔法陣を刻み込みました。存分に闘ってください。」
「ああ、ちなみに、生き残った方は、このままここで生活を続けてもらいます…。」
メルギド博士がそう言うと、四人全員が外の広い闘技場へ強制的に転移させられた。
「博士、やめさせてください。」
レオンは懇願するように言った。
「今はダメ…。」
また、リナがレオンを制止した。
「さあ、始めてください。」
メルギド博士が大声で怒鳴りつけた。
「いや、始めろって…闘えるわけないだろ…。」
「そうよ…。」
二人は、闘技場の中央でもじもじしていた。
「チッ…仕方がないですね。レオンとリナで二人を殺しなさい。そうすれば、あなたたちの試練はパスしましょう。」
それは一瞬だった。レオンとリナが目で合図した。
「レオン、よく殺りました。」
メルギドが称賛している。それは、永遠にも似た一瞬の出来事だった。
「僕は人を殺してしまった…。」
レオンの右手の剣が、マルクの心臓をしっかりと貫いていた。
「ぐっは…。」
マルクが、大量の血を口から吐き出した。
「意外と大したことないのね…。」
リナも同時に動いていた。
カリンの首には、リナの腕の魔法陣から伸びた縄がかけられていて、首を吊った状態になっていた。
「ぐ…苦しい…ぐへ…。」
カリンは、足をバタつかせると、白目を向いて首は完全に折れていた。
一瞬でも、一生忘れることのできない経験だった。
「なるほど、なかなかやりますね。」
メルギド博士は、満足そうに手を叩きながら高笑いしていた。そして、マルクとカリンは、ぐったりとして二人の腕のなかで息を引き取った。
レオンの右腕には金属魔法陣が、左腕には岩石魔法陣が刻まれていた。右手で剣などの武器を作りだし、左手で岩の盾等で防御をする。闇属性で「分解」スキルを持っているので瞬時に武器を切り替えられた。
さらに、レオンの右の手の甲には、空間魔法陣が刻まれていた。見える範囲であれば、瞬時に移動できるかなり使える魔法陣だった。
あと、周りの空気を圧縮することにより、真空の塊を相手にぶつけて攻撃することができる。一見、風魔法に似ているが、攻撃力はその比ではなかった。本当は、情報さえあればどこにでも移動可能な魔法陣であったが、逃亡防止の為、この時点ではまだ知らされていなかった。
リナの右足には高速魔法陣が、右の手の甲には締縄魔法陣が刻まれていた。締縄魔法陣は、自由に縄を出して相手を締め上げたり、絞め殺したりすることが出きる。
「もう、戻れない…。」
レオンは、今までの幸せな生活を思い出して、うっすら涙を浮かべていた。レオンは袖で涙を拭き取ると、
「ハーベル、ごめん…。」
そう言って、両手の魔法陣をまじまじと見つめていた。
その後、メルギド博士は、「偽装」スキルを使用してマルクとカリンの死体でレオンとリナの死体のダミーを作って、ゴミ捨て場へと放置した。魔法警察には、偽装も死因も全く特定できていないのは言うまでもないだろう。
こうして、レオンとリナはメルギド博士のもとで、助手として働くことになったのだった。
次回 絶望の影:暗殺者となった少年
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