絶望の魔法陣:逃れられぬ運命
少し時間はさかのぼる。
この世界に来て、この3年間というものとても幸せな日々だった。優しい両親と、可愛い妹、そして、親友のハーベルとの楽しい日々を思い出していた。
「絶対に取り戻してやる!」
レオンが拳を握りしめていた。
ここは、メルギドの秘密の研究施設の一画にある、「餌」を入れておく牢屋のひとつだった。
薄暗く、いろんなものが腐ったような匂いが立ち込めていた。
「あなた、名前は?」
一人の女子生徒が話しかけてきた。
「僕は、レオンです。あなたは?」
「私は、リナよ!よろしくね!」
「ええ、よろしくお願いします…。」
ここに囚われている生徒の中では、年上でしっかりしているように見えた。
「レオン、ここから出る気?!」
「はい、なんとしても出たいです!」
リナは、何やら勝手に話し始めた。
【魔法陣使い】という存在がいて、相手の身体に直接魔法陣を刻み込むことによって、自分自身は、魔力を消費することなくその魔法を発動できるようになるそうだ。
その魔法陣を刻み込まれた存在を【魔刻印者】と呼び、蔑む意味を込めて、通称【MACOK】と呼んでいるそうだ。
【魔法陣使い】自身は、魔法陣を刻み込む度に、自分の魔力量と命を削られるのが代償で、それを補うために「餌」となる【MACOK】から定期的に魔力と命を吸い取っているのだ。
つまり、その「餌」が僕たちと言うことだ。
ただ、メルギド博士に気に入られれば、他の魔法陣も刻んでもらえて、いろいろ変わった魔法を使用できるようになることも教えてくれた。
「あの男、メルギド博士って言うのか…。」
「あと、もう一つ大切なことがあるのよ!」
【MACOK】は【魔法陣使い】がいなければ、存在できないということだった。
「つまり、メルギド博士が死ねば、その場でここにいる全員が死ぬってことよ!」
「そんな…殺せない!?」
•••••••••
メルギド博士を殺せないってことは、逃げることもできないということなのか?でも、何か手があるはず!それを見つけるまでは、何をしてでも生き残ってやる!
•••••••••
レオンは、強く拳を握った。
「リナ、いろいろ教えてくれてありがとう!仲良くしよう!」
レオンが握手を求めた。
「そうも言ってられないかもよ…。」
リナは意味ありげに微笑んだ。
「レオン、ちょっと来てください!」
ついに、レオンの番がやってきてしまった。
「気をつけてね、レオン!」
「ああ、行ってくる!」
レオンは少しワクワクしているようにも見えた。
メルギド博士が、牢屋の扉を開けると、レオンを強引に引っ張り出した。レオンを先に歩かせて、近くにあった研究室のような部屋へと連れてこられた。
その部屋の中央には、手術台が置いてあり、周りには見たことのない道具や本がところ狭しと置いてあった。
メルギド博士が、レオンを手術台の上に座らせると、右手を出すように指示された。
「今から、あなたの右手に新たな魔法陣を刻みます!」
「はい!お願いします!」
「ほお、怖くないのですか?」
「怖いです!でも、博士の役に立ちたいのです!」
「なるほど、良い心がけですね!」
メルギド博士は、いやらしい笑い方で笑った。
「リナの入れ知恵ですか…。」
「いいえ、何も聞いていません!」
「まあいいでしょう…。」
また、気色悪い笑い方をしていた。
メルギド博士は、レオンを手術台に縛り付けると、おもむろにレオンの右手を掴んで引き寄せた。
次回 絶望の牢獄:魔刻印者たちの叫び
続きの気になった方は、
ぜひともブックマークをお願いいたします。
リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。
頑張って続きを書いちゃいます!




