漆黒の翼と邪神の遺産
「光と風の精霊に感謝します。雷鳴の光、暴風の力、ダークウルフの自由を奪え!
雷鳴:第5応用魔法!ハイパラライズ!」
「ネクロマンシー!」
クラリッサが詠唱すると、そこら一帯のダークウルフやヘルズベアが、一斉に痺れて動けなくなると、すべてネクロマンシーで味方にしてしまった。
「やっぱり、クラリッサ、カッコいい!」
ハーベルは手を叩いた。
「さあ、みんな進んで!」
クラリッサの命令で、ダークウルフやヘルズベアたちが、先導して他の魔物を蹂躙していく。
「なんか凄い光景だな!」
「やることないわね…。」
「でも、この戦い方だとボス戦で困りそうね…。」
「確かに、連れていった魔物でボスを弱らせられないと、単身では厳しいですね!」
「その点、パーティーならそれもカバーできるわね!」
「はい!」
「さあ、55階層ね!」
「ああ、また苦手なの来た…。」
「ああ、同感です…。」
ハーベルたちが、55階層のボス部屋のマークを確認すると、蛇の絵が刻まれていた。
「チッ、蛇か…、クラリッサは、蛇は得意?」
「いいえ、でも蛇は神の使いとされているので、宗教上の理由で、殺すことはできません…。」
クラリッサが淡々と説明した。
「ああ、結局、また一人で行くのか…。」
「ただし、サポートはできますのでお任せください!」
クラリッサが小さくガッツポーズをした。
「師匠は行けますか?」
「あら、あら、私に何をしろと?」
「ですよね~。」
「じゃあ、師匠は外で待機して、万一のときは俺たちごとテルミットで移動を…。」
「了解よ!」
「師匠、作戦は?」
「そうね、クラリッサのネクロマンシーで前衛を送り込んで、ハーベルが追い討ちをかける。その間、クラリッサがサポートをするってとこかな?」
「分かりました!」
「了解!」
ハーベルは、ボス部屋の扉を開けた。
中は薄暗くて、周りのロウソクのシャンデリアがいくつかぶら下がっており、何か高級な部屋のようにも見えた。
奥には大きなトグロになった塊が見える。
「デカっ!」
「大きくて立派な蛇様ですね!」
「蛇様って…。」
「では、行きますね!」
クラリッサがそう言って、ダークウルフたちを前進させると、
「あっ…。」
「どうしたの?」
「瞬殺されました…。」
「マジか…。」
「マジです…。」
「ここは、作戦を変えましょう!」
クラリッサが提案してきた。
•••••••••
クラリッサが、幻影魔法でキングスネークを翻弄する。
蛇の弱点は、目が悪く視野が狭いので後方から近付くと気がつかれにくいので、ハーベルはキングスネークが翻弄されている隙に後ろから攻撃を加える。
攻撃が決まったら、一気に首をはねないと丸のみにされてしまうので注意が必要とのこと。
•••••••••
「ハーベル、私の幻影魔法が合図です!」
「了解!」
ハーベルは、カッコよく二刀流で構えた。
「闇と風の精霊に感謝します。闇の恐怖、暴風の力、キングスネークに幻を!
幻影:第5応用魔法!アビサル・レギオン!」
ハーベルたちの後ろから無数の影の鳥が現れて、キングスネークに襲いかかった。
キングスネークは、重たそうに首を持ち上げると、襲いかかる幻影の鳥たちに噛みつき攻撃をし始めた。
その隙に、ハーベルは部屋の壁をよじ登って何とかキングスネークの後ろまでたどり着いた。
「闇と風の精霊に感謝します。闇の恐怖、暴風の力、キングスネークに幻を!
幻影:第5応用魔法!ヴォイド・ベア!」
クラリッサの詠唱でさらに、ドでかい熊の幻影が現れた。
ガウォーーー!
「ハーベル、今です!」
「雷鳴:第5応用魔法!サンダー・ストライク!」
ハーベルが熊に翻弄されているキングスネークに詠唱すると、鋭い落雷が脳天目掛けて落ちてきた。
プシューーー。
ハーベルがそのまま飛び上がって、シックスセンスを光の剣に海賊ナイフを水流の刃に変化させて、キングスネークの首もとへと斬りかかった。
ギャーーーー!
キングスネークが悲鳴を上げると、首を大きく振ってハーベルを弾き飛ばした。
ハーベルはそのまま、壁を蹴ってシックスセンスを巨大な光の剣に変化させて、キングスネークの首を切り落とした。
ドサッ!
地面を揺らすような音と共にキングスネークの頭が床に叩き付けられた。
「やった!」
ハーベルがガッツポーズをした瞬間、
キングスネークの尾が最後の力でハーベルを突き飛ばした。
「ぐっは…。」
ハーベルは、強打で口から血を吐いて倒れ込んだ。
「ああ、ハーベル!」
クラリッサが駆け寄るが、ハーベルはぐったりしている。
「私じゃ、回復できない…。」
クラリッサは、入り口へと走った。
ドンドン、ドンドン…。
「師匠、ハーベルが、ハーベルが!」
クラリッサが泣きながら、入り口の扉を叩き出した。
気がついたリーフィアが扉を開けて入ってきた。
「師匠、ハーベルが!」
「ああ、ハーベル、どうしたの!」
リーフィアが、ハーベルのもとへ駆け寄った。
「セレスティアル・レストレーション!」
リーフィアが涙目になりながら、ハーベルの胸に手を当てて詠唱した。
ハーベルの顔色は、みるみる良くなっていき呼吸も楽になっているようだった。
「はあ、はあ、最後っ屁にやられちゃいました…へへへ…。」
「ああ、ハーベル、ごめんなさい…また、弟子をこんな目に…師匠失格ね…」
「いいえ、ちゃんと助けてくれたじゃないですか!」
「そうです、私が悪かったんです…。」
クラリッサが涙を浮かべる。
「ハーベル…。」
リーフィアはハーベルを抱いたまましばらく動けなかった。
「師匠、もう大丈夫です!」
ハーベルはふらふらとよろけながら立ち上がった。
「おお、宝箱ですよ!」
「クラリッサ開けてみて!」
リーフィアが涙を拭きながら言った。
「はい!」
宝箱を開けてみると、3つのアイテムが入っていた。
【蛇眼のサークレット】【邪神の杖】【神器:漆黒の翼】
「やったね!」
ハーベルが力なくガッツポーズをした。
【蛇眼のサークレット】
闇属性アップと、第三の眼となり「千里」スキルで、かなり遠くまで見渡すことができる。
石化の呪いを解く唯一の秘宝。
【邪神の杖】
闇属性と光耐性アップに幻惑魔法の使用が可能となる。
「転心」スキルで短い時間ではあるが一時的に魂を移動させることができる。
「魂の移動?」
ハーベルは、何かが引っ掛かった。
【神器:漆黒の翼】
闇属性の神器で漆黒シリーズの一つ、高速で空を飛ぶことはもちろん、「零式」スキルで空間を切り裂いて中へ入り、距離を無視してイメージした場所へ瞬時に移動できる。
ただし、イメージすることが前提なので見える範囲か一度行ったことのある場所にしか移動できない。
「これってこの世界の人に使いこなせないんじゃないのか?」
ハーベルは、ふとそんなことを考えた。
「漆黒の翼は、ハーベルが着けておきなさい!」
リーフィアがハーベルに手渡すと、首もとに着けた。すると、小さくなってアクセサリーのようになった。
「サークレットを早くつけなさい!杖もクラリッサが使って!」
そう言って、リーフィアが【蛇眼のサークレット】を手渡した。
クラリッサがサークレットを着けると、手の甲に浮かび上がっていた紋様が、徐々に薄れていくのが分かる。
「これで……。」
クラリッサの涙が止まらない。
「やったな!クラリッサ!」
ハーベルが優しくクラリッサの肩に触れた。
「うん、ハーベル、師匠、ありがとう!」
しばらく、三人はそのまま動けないでいた…。
「師匠はアイテムもらわなくていいの?」
「私は、何もしてない上に、弟子をまた殺しかけるなんて…。」
「またって?」
「実は、以前も一度一人にさせてしまって…。」
「そっか…でも、師匠が悪いわけではないと思いますよ!」
クラリッサは、リーフィアの手を握った。
「これからは、私もいますから、ねっ!」
リーフィアに微笑みかけた。
「そうですよ!このくらいたいしたことないです!」
「二人とも…。」
リーフィアは幸せそうに笑った。
次回 闇の神殿、最後の試練
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頑張って続きを書いちゃいます!




