45階層の秘密:ダークエルフの少女との出会い
ゴクリ……。
ハーベルは大きく唾を飲み込むと、緊張した表情で扉の前に立った。
「さあ、45階層のボス部屋の扉を開けますよ……。」
「ええ、準備は万端よ!」
リーフィアも気を引き締めた表情で後に続いた。
ハーベルが恐る恐る扉を押すと、嫌な音を立てて開き、二人が足を踏み入れると同時にバタンと閉じてしまった。
「くそー、もう殺るしかないか……。」
ハーベルは二刀流を構え、周囲を警戒する。
「待って、何あれ?」
「ええ、部屋の中に家!?」
部屋の中央には、真っ白な空間にそぐわない可愛らしい木の家がぽつんと佇んでいた。
「はあ?なんでこんなところに家が……。」
「ハーベル、気を抜かないで。罠かもしれないわよ!」
「はい!」
ハーベルは警戒を解かぬまま、リーフィアとともに家の扉の前まで進んだ。
「うう、全く敵意を感じないんですが……。」
「本当ね……。」
二人は不思議な光景に戸惑いを隠せなかった。
「なんだろう、この家?」
「もう、入ってみるしかないか……。」
「そうですね……。」
ハーベルは深呼吸し、扉に向かって声をかけた。
「あの~、すいません!」
すると、驚くべきことに、内部から声が返ってきた。
「ああ、は~い!どなたですか?」
「ええ、返事?」
可愛らしい少女のような声に、二人はさらに混乱を深めた。
「はい、はい、どなたですか?」
家の中から現れたのは、可愛らしい魔女の格好をした女の子だった。スカートをひらりと持ち上げて、丁寧にお辞儀をして見せる。
「あの~、ハーベルといいます!」
「これは、ご丁寧に。私はクラリッサと申します。」
彼女の無邪気な笑顔に、ハーベルも少し肩の力を抜いた。
「こちらは、師匠のリーフィアさんです!」
「クラリッサです。よろしくお願いします!」
「よろしくって……あなた、ここのボスなんでしょ?」
「はい、そうですね……。」
クラリッサは悲しげに視線を落とした。
「なんか、訳ありのようね……。」
「そうみたいですね……。」
クラリッサの話を聞き、二人は驚きと同情を禁じ得なかった。
•••••••••
50年ほど前、クラリッサはこの闇の神殿に眠るお宝を目当てに単身挑んだ。しかし、15階層にいたスカルドラゴンにあっけなく敗れ、そのまま45階層のボスとして幽閉されてしまったという。幸い、食料や生活必需品が家に補充される仕組みがあり、生活に困ることはなかったようだが、彼女の表情には寂しさが漂っていた。
•••••••••
「ええ、今、50年前って言いました?クラリッサさん、今いくつですか?」
ハーベルが素直に疑問を投げかけると、リーフィアが冷たい視線を投げた。
「こら、女性に年齢を聞かない!」
「はい、すいません……。」
「ああ、私は123歳よ!」
「はあ!?」
ハーベルは目を丸くした。
「なるほど、エルフさんなのね!」
「いいえ、ダークエルフです……。」
「なるほど……。コホン…。」
リーフィアは咳払いをして話を再び進めた。
「それで、クラリッサさんはここを出たいのかしら?」
「暮らしには困っていませんし、50年も経っているので、郷にも私の居場所はないでしょうから……でも、出られるなら出たいです!」
「分かったわ!」
「じゃあ、出ましょう!」
ハーベルがクラリッサの手を取り、力強く立ち上がった。
しかし、彼女は悲しそうな顔で首を横に振った。
「ああ、この家からは出られない呪いがかかっているんです。」
「そんな……。」
「出ようとすると強制的に戻されるんです……。」
「魔法による拘束?」
ハーベルの瞳が閃き、何かを思いついたようだった。
「クラリッサさん、念のため持っていきたいものをこの袋に入れてください!」
「この小さな袋に入る分だけね……。」
「いいえ、見ていてください!」
ハーベルは笑みを浮かべながら目の前の椅子を袋の中にしまい込んだ。
「ええ、どうなってるんですか?魔法みたい!」
「ハハハ……魔法ですけど……。」
魔女相手に魔法を説明することに気恥ずかしさを感じながらも、クラリッサは素直に持ち物を詰め込んでいった。
「なんて素直な娘……。」
リーフィアは母親のような微笑みで彼女を見守っていた。
「できました!」
「じゃあ、いきますよ!」
ハーベルとリーフィアはクラリッサの手をしっかりと握り、テルミットを掲げた。
次回 闇の呪いを超えて:幽閉から自由を求めた魔女の決断
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