冒険者の休日:戦利品と不思議な出会い
翌朝、ハーベルは森の中で新鮮な空気をめいっぱい吸い込んで、清々しい朝の光を満喫していた。
「昨日のアイテムを確認しておこうかな!」
【金塊】【銀塊】【鉄塊】はまさに金属の塊で、純度もほぼ100%の状態で取り出すことができるらしい。
「溶解!」「構築!」
ハーベルは塊をインゴットの形へ成形していった。
「売ってもかなりの高値で売れそうだな!それより、家を改築するときにいろいろ使えそうだ!」
ハーベルは妄想を膨らませながら楽しげに作業を続けた。
「ハーベル、朝御飯できたよ!」
リーフィアの美しい声がハーベルの心を和ませる。
「はーい!今行きます!」
ハーベルは喜び勇んで手をしっかり洗い、テーブルについた。
「今日は、ホットケーキにしてみたの!ハチミツは貴重で手に入らないから、メープルシロップだけどね!」
「師匠のご飯なら、何でも美味しいので問題ありません!」
ハーベルは、美味しそうに頬張りながら満面の笑みを浮かべていた。
リーフィアも彼の様子を嬉しそうに見つめていた。
「昨日の金属、純度も高いしいろいろ使えそうですよ!」
「そう、良かったわね!」
リーフィアはにこやかに答えた。
「今日は、どこまで行きますか?」
「35階層のボスは行きたいわね!」
「了解です!」
ハーベルは最後の一切れを惜しそうに口に運び、
「ごちそうさま!」
と言って食器をきっちり洗って干した。
「じゃあ、早速行きますか!」
「準備は、いいわよ!」
リーフィアたちはそう言ってテルミットを掲げた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「そう言えば、『分離』を生きている魔物に使ったらどうなるんですかね……。」
ハーベルが少し嫌そうな顔をして言った。
「まあ、グロそうね……。」
「ですよね……でも、一応、確認しておきます!」
近くを飛んでいたキラーバットに向かって、
「パラライズ!」
キラーバットが痺れて床に落ちた。
「ごめんなさい、分離!」
キラーバットは見るも無惨な姿になってしまった。
「あああ、ダメダメ、ダメだ!」
「どう?」
「ああ、師匠、見ない方がいいです……。」
一応アイテムは取れたが、よほど欲しいものがない限り二度としないと心に決めた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「さあ、35階層はと……。」
「これって……。」
「ああ、これはちょっと……。」
「俺も苦手なんですよ……。」
ハーベルがボス部屋のマークを見ながら言った。そこには蜂のマークが刻まれていた。
「蜂か……正直、キツいな……直接、相手したくないな……。」
「ああ、あれなんかどうかしら?」
「あれですね……。」
ハーベルは無限収納袋を漁りながら考え込む。
「ええっと、【猛毒エキス】【燻製チップ】を容器に入れて毒で燻してやりましょう!」
「うん、いい感じね!」
リーフィアも楽ができそうだと、手を叩いて喜んでいた。
「じゃあ、俺、毒耐性もあるんで、開けたら容器に火をつけてすぐに閉めます!」
「了解!」
「ちょっと覗いてみたら、めっちゃデカイ蜂がブンブン飛び回っていました……。」
「そんな余分な情報は要らないから……。」
リーフィアが眉間にシワを寄せる。
「じゃあ、いきます!」
ハーベルが素早く火をつけた容器を中へ滑り込ませ、テルミットを掲げた。
リーフィアも同時に移動した。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「はあ、うまく行きましたね!」
「あら、あら、1日暇になっちゃったわね……。」
「どうしますか?」
「今日は、自由時間にしましょうか?」
「分かりました。俺は街へ行って貯まった戦利品を処分して、食料なんかを買い込んできます!」
ハーベルは袋を整理しながら言った。
「ありがとう、お願いするわ!」
リーフィアはハウスの片付けをしたい様子だった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
ハーベルが【トレードウィンド】に着くと、いつもの賑わいで人でごった返していた。
「相変わらず、人が多いな……。」
手頃な店で使わない物を適当に売りさばいたが、【ドラゴンヘッド】の指輪の効果もあって、かなり高値で買取りしてもらえた。
「なかなか、いい値段で売れたな!そうだ、お姉さん、この辺に何か変わったものや骨董品なんかを扱っているお店はないですか?」
「そうですね、街の外れにいいお店がありますよ!」
店員が簡単な地図を書いてくれた。
ハーベルは精密な地図を持っていたのですぐに場所を特定できた。
「ここか、マジでボロいな……。」
そこにはボロボロのほったて小屋のような店があった。
「お邪魔しまーす……。」
恐る恐る店の奥に進むと、
「いらっしゃーーい……。」
奥からお化けの声のような変な返事が聞こえた。
「店主、何かおすすめの物はありますか?」
「そうじゃな……。」
骨と皮だけの店主がいくつか選んでくれた。
「これなんか、どうじゃ?」
「笛ですか?何に使うんですか?」
「虫を追い払うんじゃ。逆にしたら近寄って来るけどな……。」
「うーん……。」
「あと、これこれ!この壺じゃ!」
「うーん、まさに怪しい壺……。」
「ちなみに使い道は?」
「知らん……何でもネバネバの液がどんどん湧いてくるとか……。」
「はあ……。」
「あとは、この本は掘り出し物じゃ!」
店主が気持ちの悪い表紙の本を奥から持ち出してきた。
「ああ、じゃあ全部もらいます。いくらですか?」
ハーベルは適当にあしらうように言った。
「ほお、ええ指輪しとるのう!タダじゃな!」
「いや、それは悪いです……。」
店主が押し付けるように物を渡し、お金も受け取らずに扉をバタンと閉めた。
「まあ、いいか。タダでいいっていうんだから、もらっておくか……。」
ハーベルは不思議な物を袋に詰め込み、家路についた。
次回 魔導書の秘密:ハーベルが見た闇の真実
続きの気になった方は、
ぜひともブックマークをお願いいたします。
リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。
頑張って続きを書いちゃいます!




