怨霊の悪夢:光と闇の死闘
ハーベルは夢を見ていた。
真っ暗な森のような場所を、なぜかひとりぼっちで歩いている。辺りは深い闇に包まれ、足元がまるで底なし沼のように不安定だ。どこからともなく不気味なうめき声のような音が響き渡り、ハーベルは身震いしながら先を急ごうとした。しかし、足を前に出そうとするも動かない。
ハーベルが恐る恐る下を見やると、その足には……。
「うわーー!嫌な夢見た……くそ……。」
ハーベルはベッドの中から飛び起きると、汗でびっしょり濡れた顔をハンカチで拭った。
「はあはあ、絶対昨日のあの部屋のせいだ…チッ!」
彼は小さく舌打ちをして振り返ると、右足にはくっきりと人の手が握ったようなアザが残っていた。
「うわ、キモっ……!」
ハーベルは驚きながらそのアザをさすり、しばらく言葉を失った。
「それは、災難だったわね……。」
リーフィアが隣の部屋から現れ、かわいそうな子犬を見るような顔で声をかけた。
「はい、たぶん、あのときに握られたんです……。」
ハーベルが右足をさすりながら答えた。
「そういえば、打開策を考えたの!」
リーフィアがふと目を輝かせながら言う。
「ああ、それなら俺も!」
ハーベルが勢いよく答える。
「じゃあ、一斉に言いましょ!」
「せーの……半分にする!」
二人は顔を見合わせ、その作戦の一致に笑いが込み上げた。
「じゃあ、その作戦で!」
「ハハハ……同じでしたね!」
二人は楽しい会話を交えながら、リーフィアが作った美味しい朝食を食べていた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「相変わらず、眩しいわね……。」
リーフィアが部屋の明るさに目を細めながら言った。
「じゃあ、やってみますね!」
ハーベルが元気よく返事をする。
「お願い!」
「ストーン・ウォール!」
ハーベルが部屋の半分だけを覆うように器用に石の壁を作り出した。
「やっぱり、こういうことか……。」
石の壁が部屋を二分し、闇の部分からおぞましい数の怨霊や亡者の手が明るい側へ延びてくる様子が露わになった。
「うわ、気持ち悪い……!」
ハーベルは眉間を寄せながら顔をしかめた。
「これは、最悪の光景ね……。」
リーフィアも言葉を詰まらせながら怯えるような表情をしていた。
「あとは、コイツらを浄化すればいいんですかね……。」
ハーベルが冷静に提案する。
「まあ、そう言うことかな……趣味悪いわね……。」
「同感……。」
ハーベルは闇の部分へ向かって「シックスセンス」を振り上げ、詠唱を開始した。
「ルミナス・レイン!」
部屋の闇側の天井付近に光輝く雲が現れ、そこから無数の光の雨粒が豪雨のように降り注ぐ。怨霊たちは次々と洗い流され、その悲鳴が部屋中に響き渡った。
ギャーーーー!ウギャーー!だずげてーーー!
まさに地獄絵図そのものだった。
「これを考えた奴、最悪ね……。」
リーフィアが吐き捨てるように言った。
「確かに……。」
「師匠、これだったら20階層まで、俺一人で大丈夫なんで先に帰ってご飯でも作っていて貰えますか?」
ハーベルがリーフィアを気遣いながら声をかけた。
「悪いけど、そうさせてもらっていいかしら!」
リーフィアは顔色が悪く、吐き気を堪えている様子だった。
「もちろんです!20階層まで行ったらすぐ戻ります!」
「じゃあ、お願いするわ……。」
リーフィアはテルミットを掲げ、脱出を図った。
「こんなのに付き合わせられないや……。」
ハーベルはそう言いながら淡々と作業を進めた。
「やっと、20階層か……無駄に多いから時間もかかるし……。」
ハーベルも嫌気がさしてきていた。
「ストーン・ウォール!」
「ルミナス・レイン!」
怨霊たちの悲鳴が響き渡る中、彼は作業を続けた。
ウギャーー!ヴァーーー!キャーーー!
「うるさいな……。」
ハーベルが闇の側へさらに近づいた瞬間、巨大な手が闇の中から現れ、その腕を掴んで引き込んだ。
「あっ、ヤベっ!」
ハーベルの姿は闇に飲み込まれ、完全に消えてしまった。
次回 黒い影の恐怖:師弟の絆が試される瞬間
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