怨霊の部屋:光と闇の境界線
そこは、今までとはまったく違う景色だった。
「明るい!」
ハーベルは思わず目を細めた。
かなり広い部屋の中央付近には、煌々と光る玉のようなものが設置されており、真っ白な光が部屋全体を照らしていた。その光に反射する壁が眩しく、まるで別世界に迷い込んだようだった。
「ずっといると目がおかしくなりそうね…。」
リーフィアも眩しさに顔をしかめながら、目を細めている。
「ちょっと下がってください!」
ハーベルがリーフィアを壁際まで下がらせると、声を張り上げて叫んだ。
「ロック・ウォール!」
ハーベルがその光る玉を石の壁で覆い隠した瞬間、周囲に不穏な空気が立ちこめた。なま暖かい気持ちの悪い風とともに、おぞましい声が響き渡ったかと思うと、一気に怨霊や亡者たちが部屋中に現れ、ハーベルへと襲いかかってきた。
キャーーーーーー!
奇声を発しながら、亡者の手が目の前に伸びてくる。
「ライト!」
ハーベルはとっさに呪文を唱え、明かりをともす。目の前には怨霊の歪んだ顔があり、それを見たハーベルは思わず叫びながら振り払った。
「うわーー!なんだこれ!」
手に力を込め、何とかシックスセンスを振り回して怨霊たちを撃退する。
「師匠だけは、俺が守る!」
ハーベルは周囲の亡者たちの腕からリーフィアをかばいながら奮闘した。
「怖い、怖い、もう…無理ーーーー!」
リーフィアが涙目で叫ぶ。
「ハーベル、解除して!」
「解除!」
ロック・ウォールの呪文を解くと、部屋が一瞬で明るさを取り戻し、亡者や怨霊たちは嘘のように影の中へと消えていった。
「くっそ…なんだよ…。」
荒い息を整えながら、ハーベルが愚痴るように呟く。
「今のは、ヤバかったね…。」
リーフィアも顔を引きつらせていた。
「こんな仕掛けが…このまま、無視していけるんじゃ?」
「そうね、今のは、さすがにもう嫌かな…。」
不気味な空気を感じながらも、その部屋は次の階段まで素通りできるようになっていた。何か怪しいと思いながらも、ハーベルたちはそのまま同じような部屋を降りていき、ついに20階層まで到達した。
「また、ここも同じか…なんなんですかね?」
「まあ、怪しさは満点だけど…。」
ハーベルたちが21階層へと降りると、そこは今までとは異なり再びダンジョン形式の空間へと戻っていた。
「やっと、普通に戻った…。」
「ハーベル、来るわよって…あれって…。」
ハーベルが武器を構えると、目の前にはスカルドラゴンが3体現れた。
「はあ?さっきのボスクラスが、普通にそのへん歩いてるって…。」
「何か、おかしいわね…。」
そう言う間にも、スカルドラゴンの攻撃がハーベルを襲う。
「くそ…セレスティアル・アローズ!」
ハーベルは苦し紛れに光の矢を無数に放ち、スカルドラゴンたちの動きを一時的に封じた。
「ハーベル、一度戻るわよ!」
「了解!」
二人は素早くテルミットを掲げ、その場から脱出した。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「はあ、はあ、はあ、なんかめちゃくちゃでしたね…。」
ハーベルは肩で息をしながら振り返った。
「ええ、何かがおかしいわね…よく考えてみるわ…。」
リーフィアはその場に腰を下ろし、疲れ切った表情を見せた。
「まあ、明らかにあの部屋が怪しいけど、どうすればいいのか、見当もつかないや…。」
ハーベルがため息をつきながら空を見上げると、そこには美しい星空が広がっていた。
真っ黒な夜空に散りばめられた赤や紫の星々は、まるで川のように流れていて、幻想的な光景を描き出していた。
「ああ、空を半分に分けているみたいだ…。」
ハーベルはそんな独り言を呟きながら、再び息を整えていった。
次回 怨霊の悪夢:光と闇の死闘
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