光の継承:魔法学院の序章
「ハーベル、ハーベル、起きなさい!」
優しい声が聞こえた。こちらの世界のお母さんのようだ。
「うーん…」
俺は眠気が抜けず、毛布の中へと潜り込んだ。
「お兄ちゃん、起きて!」
ドーーーン!
勢いよく毛布の上に誰かが飛び乗ってきた。
「お兄ちゃん、朝だよ!遅刻だよ!」
妹のフィナベルが毛布の上でドンドンと跳びはねながら叩き起こしてきた。
「フィナベル、痛いよ!」
「お兄ちゃんが寝坊助なのがいけないんでしょ!」
フィナベルは可愛らしい顔を真っ赤にしてプンプンしていた。
「母さん、おはよう!ふぁーーー」
俺は大あくびをしながら階段を降りてきて、朝の挨拶を交わした。
「今日から学院でしょ!早く準備して行かないと、アンナが迎えに来てるわよ!」
あの優しいお母さんも、今日は少しお冠のようだった。
俺には幼馴染みがいて、名前をアンナというらしい。
どうやら今日は入学式で、元の世界でいう中学校にあたる魔法学院中等部に通うことになっているようだった。
俺は急いで準備を済ませ、何も分からないまま両親に連れられて、アンナと一緒に魔法学院中等部へと向かった。
元の世界での両親は大きな個人病院を経営していて、裕福な家庭で不自由なく育てられていた。
何の因果か、こちらの両親も「医術師」と呼ばれる職業で、また医者の家に生まれてきたらしい。
ただ、こちらの世界の医術師は元の世界の医者とはまったく異なり、魔法やポーションを用いて治療を行う。
魔法には属性が存在し、血統によって得意とする魔法属性が決まるようだ。
うちの家系では光属性の魔法を得意としており、回復魔法や治癒魔法がそれに該当するらしい。
この世界では、魔力量は年齢とともに増加し、歳を取っても減少することはないと考えられている。
では、大魔導士と呼ばれる者たちはどのようにして魔力量を増やしているのだろうか?
魔法を発動させるには通常、声に出して詠唱しなければならないが、魔法に精通してくると簡単な魔法であれば無詠唱や詠唱破棄といって、声を出さなくても発動できるようになる。
ここでひとつの疑問が生じる。
「なぜ、詠唱が必要なのか?」
こちらの世界では魔法を「イメージする」という概念がない。あまりにも日常的に魔法が使用されているため、魔法をイメージするのではなく、呪文の詠唱という「作業」によって発動しているのだ。
だが、本質はまったく異なる。「魔法はイメージそのもの」なのだ。
しかし、この世界ではその真理に気づくことはない。
大魔導士と呼ばれる者たちでさえ、長年の経験から無意識にそれを行っているに過ぎないのだから…。
次回 真理の織り手:魔法とイメージの交差
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