異世界医術師の覚醒
ハーベルの目の前には、いくつかの禍々しい表紙の本がずらりと並べられていた。好奇心を抑えきれず、その中の一冊を手に取る。
「どの本も、ヤバい内容ばっかりだな…。みんな、同じ心得から始まってるんだ…。」
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第一章 魔法陣使いの心得
1. 【魔法陣使い】は、決して人に知られず、極秘でなくてはならない!
2. 【魔法陣使い】は、魔法陣を研究し追及し続け、決して他者の考えに盲従してはならない!
3. 【魔法陣使い】は、【魔刻印者】を蔑み、貶め、絶対的に服従させなければならない!
4. 【魔法陣使い】は、優秀な【魔刻印者】を育てあげ、己の信念を貫き通さなければならない!
5. 【魔法陣使い】は、さらに優秀な【魔刻印者】を従え、組織の拡充を推し進めなければならない!
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「まったく、ついていけないや…。」
気分が悪くなったハーベルの顔色は、みるみるうちに青ざめていった。そこにリーフィアが駆け寄る。
「ハーベル、大丈夫…。」
「顔が真っ青よ…。」
リーフィアが心配そうにハーベルの顔に手を当てる。
「はぁ…大丈夫です…。ただ、この【魔法陣使い】の本を読んでたら気分が悪くなってしまって…。」
「ああ、一般には公開できないような内容が多いからね…。」
話を切り替えようと、ハーベルは気を取り直して尋ねた。
「それより、ソーサリーエレメントの方はどうでしたか…。」
「そうね、一部分からないこともあったけど、いくつかはっきりしたことが分かったわ…。」
リーフィアの話によると、
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1. ソーサリーエレメントには、魔力が宿っていると思われていたが、それは守護精霊が宿っているためであること。
2. ソーサリーエレメントを手に入れるためには、その守護精霊と契約する必要があり、精霊の試練を乗り越える必要があること。
3. 試練を受ける資格を得るには、その属性の最高位の魔法である精霊召喚魔法が使えることが条件であること。
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「ただ、具体的な召喚方法や呪文までは記されていなかったの…。」リーフィアが残念そうに言った。
「そうですか…。なかなかハードル高そうですね…。」
「そうね…。」
「それで、医術書は買えたのかしら…。」
「はい、10冊ほど買ったので、しばらくはこれで勉強してみます。」
「結局、【魔法陣使い】について分かったことといえば、彼らが異常者であり、【MACOK】と呼ばれる手下を使って悪事を働いているっていうことくらいね…。」
「また機会があったら調べてみましょう…!」
「分かりました…!」
ふと疑問に思ったハーベルがリーフィアに尋ねる。
「師匠、もし資格のない者がソーサリーエレメントを手に入れたらどうなるんですか…。」
「まあ、間違いなくろくなことにはならないでしょうね…。」
リーフィアの表情は曇っていた。
「私はまだ調べることがあるから、あなたは個室で医術書でも読んでおいて。」
「了解です…!」
ハーベルは図書館内にある個室へ向かい、買ったばかりの医術書を机に並べて読み始めた。
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師匠の話によれば、化合物も魔法で合成できるらしい。この世界では抗生物質が存在しないため、感染症治療の治癒率が低いのが気になっていた。
もしかすると、抗生剤も合成できれば薬剤魔法も可能になるのでは?
ペニシリンやセフェム系抗生剤なら、構造も比較的単純で、すぐ作れるかもしれない。
ハーベルは頭の中に構造式を思い浮かべながら魔法を唱えた。
「ペニシリアン!」
「セファリック!」
彼の手の中に白い粉がさらさらと2種類生成された。
「これに本当に抗菌作用があるか、またどれくらいの濃度が必要か、調べる必要があるな…。」
そう言いながら白い粉を小瓶に移し、そっとしまった。
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「ハーベル、お待たせ!」リーフィアが駆け寄ると、二人は宿へ向けて飛び立った。
その背後には、大きな月が美しく輝き、まるで二人を優しく見守っているかのようだった。
次回 闇の神殿:修行者ハーベルの冒険
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