ドラゴンの誓い:指輪と神器の物語
「さあ、もうそろそろ宿へ帰りましょうか。」
「はい、師匠。」
「ハーベル様、リーフィア様、お待ちください!」
二人が歩き出そうとしたところ、サルマン会長がわざわざ見送りに現れた。
「わざわざいいのに…。」
ハーベルがそう言うと、サルマン会長は深々と頭を下げながら答えた。
「いいえ、先ほどは助けていただいたにもかかわらず、ご無礼の数々、大変失礼しました。」
「もういいですよ。」
ハーベルは苦笑いしながら、会長の丁寧な謝罪を受け入れた。ふと思い出したように尋ねる。
「そう言えば、一つ聞いてもいいですか。【MACOK】や【魔法陣使い】という言葉に聞き覚えはないでしょうか。」
サルマン会長は少し首を傾げた。
「申し訳ありません。私は存じませんね…。しかし、もしかすると、この国の中央に位置する【国立魔法図書館】なら、何かお役に立つ情報があるかもしれません。」
「なるほど。図書館か…。ありがとうございます。」
ハーベルは丁寧にお辞儀をして感謝を伝えた。
「ところで、その袋はどんな魔道具なのですか。」
サルマン会長が興味津々で尋ねてくる。
「ああ、無限収納袋ですよ。」
ハーベルは何の気なしに答えた。
「私にも譲っていただくことは難しいでしょうか。」
サルマン会長が慎重な姿勢で頼み込む。
「ただとは申しません。この【ドラゴンヘッド】の指輪と交換していただけないでしょうか。」
隣にいた社員が慌てて釘を刺した。
「会長!さすがにそれはやりすぎでは!」
「バカもの!なんと失礼なことを!」
「別にいいですよ!なんか袋あります?」
ハーベルは気軽に応じ、袋を設定し始めた。
「サルマン会長、どうぞ。」
「おお、ありがとうございます!我が家の家宝にします!」
「では、この指輪を!」
サルマン会長は嬉しそうに指輪を差し出す。
「ありがとうございます!同じデザインでカッコいい!」
ハーベルは喜びながら右手の人差し指に指輪をはめた。
「師匠、どうですか。」
「うん、カッコいいわね。」
リーフィアは微笑みながら頷いた。
サルマン会長は、袋を大事そうに抱えながら二人を見送った。このとき、ただの袋が後に【神器】と呼ばれることになるとは、ハーベルには知る由もなかった。
「あ、さっきの袋、時間魔法かけるの忘れた…。」
「ああ、そのくらいが適当よ。あれでもお宝級なんだから。」
リーフィアは気づいていたものの、意図的に放っておいたのだった。
ちなみに、【ドラゴンハート】と【ドラゴンヘッド】が揃うと、すべての商業系店舗の利用が無料になる。宿泊も食事も買い物もすべてタダになるという、商人たちにとっては悪魔のような組み合わせだ。サルマン会長は、それを与えてでもあの【ただの袋】を手に入れたかったのだ。
もちろん、お連れの方も!
次回 ソーサリーエレメントの謎:魔法と帰還の旅
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