猫耳と茜空:宿と秘密の地図!?
周囲は夕暮れの気配を帯び始め、茜色の空が次第に宵闇の紫色へと移り変わる、美しい景色が広がっていた。
「そろそろ、街で宿でも探しましょうか?」
リーフィアが静かに言うと、ハーベルが頷いた。
「分かりました!」
街に近づくと、陽気な音楽が風に乗って聞こえ、心が自然と躍るようだった。
「お祭りかしら?」
「そうみたいですね!」
街の通りには、動物をかたどった光る風船があちこちに飾られており、幻想的な雰囲気を醸し出している。
「綺麗ですね!」
「あれ、あの形はキリンかな?」
「キリンなんているわけないでしょ。たまたま形が似てるだけよ。」
「そうかもしれませんね…。」
そんな他愛もない会話をしながら、二人は今夜の宿を求めて街中を歩いていた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「そこのお兄さん…ヒック…。」
酔っぱらいの猫耳の女性がふらふらとハーベルに近寄ってきた。
「お兄さん、宿ならうちなんかどうだい?」
彼女は少し酒臭さを漂わせながら、ハーベルに色目を使い、胸を押し付けてきた。
「お兄さん…うん?かわいいね…ヒック…。」
「ちょ、やめてください!」
ハーベルは反射的に女性を押しのけた。
「私の連れに何か御用かしら!!」
リーフィアが一歩踏み出し、間に割って入る。その顔には、怒りの色がありありと浮かんでいた。
「なんだい!年増のおばはんの出る幕じゃないよ!」
「お…おばはん……。」
リーフィアが怒りで言葉を失っていると、ハーベルが前に出て女性を制した。
「やめろ!俺の彼女に失礼だろ!」
「彼女!?年増好きのガキかい…ヒック…そんなの、こっちから願い下げだよ…ヒック…。」
猫耳の女性は不満そうにつぶやくと、ふらふらと街の雑踏に消えていった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「えらい目に遭いましたね…」
ハーベルが困った顔でつぶやくと、リーフィアが微かに笑った。
「ふーん、彼女ね…。」
その顔には、これまでに見たことのないような満足げな笑みが浮かんでいる。
「言葉のあやですよ!」
慌ててそう釈明するハーベルを見て、リーフィアは上機嫌のまま歩き出した。
「この宿が良さそうね。」
「はい!」
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
二人が足を踏み入れた宿は、素朴で居心地の良さそうな雰囲気だった。豪華さこそないが、どこか安心感を与える佇まいだ。
「いらっしゃーい!旅のお方!」
若い宿屋の娘がカウンターから顔を出す。ハーベルと同じくらいの年齢で、赤髪がよく似合う可愛らしい少女だった。
「はい、お世話になります。」
「お客さん、旅のお方?」
「ええ、ハーベルといいます。」
「私はこのレッドベア亭の看板娘、カヤよ!よろしくね!」
ハーベルは必要最低限の言葉で返事をしながら、ちらりとリーフィアの方を見てソワソワしていた。
「ハーベル!行くわよ…。」
「はい、師匠!じゃあ、カヤさん失礼します…。」
ハーベルは急いでリーフィアの後を追った。
「なんだか怪しい二人だわ…。」
カヤはそうつぶやきながら、勝手な妄想を膨らませていた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「部屋は二人部屋よ?」
「ええ、本当に俺と一緒の部屋でいいんですか?」
「不満かしら?」
「いえ、滅相もない…。」
ハーベルは顔を赤らめて小声で答えた。
「そうだ、良いことを思いついた!何か書くものないですか?」
リーフィアが紙とペンを貸すと、ハーベルは集中し始め、紙の上に自動的に街の地図を描き始めた。
「すごいわね。こんなに正確だなんて。」
「僕のスキル『把握』の力です。」
「なるほど。でも、もう遅いからそろそろ寝なさい。」
「分かりました。おやすみなさい。」
「おやすみなさい、ハーベル。」
窓の外を見れば、夜の景色は白いモヤに包まれている。その光景は、まるで二人の未来を静かに暗示しているかのようだった。
次回 アズールの朝:商業国家の秘密
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