深紅の魔法陣と実験台の少女
リナは、古びた魔導書を手にして階段を上がろうとしていた。暗い光を放つその裏表紙には、不気味な魔法陣が刻まれており、どこか邪悪な気配を感じさせていた。彼女は大切な赤ん坊を抱えるようにその魔導書を大事そうに持ち、心の中で「これで私の未来は変わる」と自分に言い聞かせていた。
「さあ、帰って読み直しよ!楽しみが増えたわ!」
彼女は魔導書を愛おしそうに抱えながら、少し気色の悪い笑みを浮かべた。その瞬間、背後から男の声が静寂を切り裂くように響いた。
「おっと、それは困りますね。」
優しげな声ではあったが、どこか冷たさが潜んでいる。リナが振り返ると、階段の下に真っ黒なローブをまとった男が立っていた。その顔は深くフードで隠されていたが、口元に浮かんだニヤリとした笑みが、不気味な印象をさらに強めていた。
男の存在感は薄く、まるで影のようだった。
「キャー!何よあんた!」
突然の訪問者に戸惑ったリナは、とっさに魔導書を後ろ手に隠した。
「その魔導書の持ち主ですよ。」
男の声には微かな笑いが混じり、その動作は幽霊が漂うように静かで、階段を一歩一歩上がりながら彼女に近づいてきた。
「これは私が見つけたのよ!誰にも譲る気はないわ!」
リナは両手で魔導書を掲げながらヒステリックに叫び、必死に抵抗を示した。
男は冷たく首を横に振り、「フーッ、困りましたね、まったく。」とため息をつくと、小さな声で呪文を唱えた。
「στάση!(止まれ!)」
リナの身体は、まるで時間が止まったかのように動かなくなった。彼女の目は男の深紅の瞳に引き寄せられ、その瞳の中に魔法陣が不気味に輝いていた。
その後、リナの身体は静かに浮き上がり、手術台のような場所へと移動させられた。男は鼻歌を口ずさみながら彼女の手足を固定し、その動作には不気味なまでの丁寧さがあった。
リナは口だけ動かせる状態で必死に叫び続けた。
「止めて!何でもするから、お願いだからやめて!」
涙が彼女の頬を伝い、床に落ちていった。
「もう遅いですよ。あなたの魔力、美味しくいただきます。」
男は満足そうにリナの手の甲に物体を押し付け、強烈な閃光とともに魔力を吸い取り始めた。リナの悲痛な叫びは届くことなく、彼女の身体から魔力とともに生命力も吸い取られていった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
数日後、学生寮の裏手のゴミ捨て場で、無惨な女子生徒の死体が発見された。魔法警察は事件を捜査していたが、魔力だけを吸い取るという常識外れの行為に困惑し、手掛かりを掴むことができないままだった。
一方、男は新たなターゲットを探しながら、街の影に溶け込んでいた。
次回 転生医術師と魔法の真理
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頑張って続きを書いちゃいます!