暗闇に潜む皇帝 ~絶体絶命の勇者たち~
後ろの壁では、ゴブリンたちが追い討ちをかけるように壁を壊そうと叩き続けている。ドカドカと響く音が洞窟内に不安を煽る。
「もうそろそろ、毒は十分だと思います。」
マキアがそう提案すると、ハーベルが「ストーン・ウォール」を解除したその瞬間、
シュ、シュ、シュ、シュシュシュシュ…。
無数の矢が部屋の奥から飛んできて、先頭に立っていたカザキの体に何本も突き刺さった。
「ぐはっ!」
カザキは血を吐きながら倒れ込む。
「ストーン・ウォール!」
ハーベルは即座に機転を利かせ、素早く壁を張り直した。
「カザキ先輩!」
ハーベルが叫び、駆け寄る。
「ハイレストレーション!」
マキアがすかさず回復魔法を唱えたが、傷が深すぎて一度の魔法では治癒しきれない。何度も魔法をかけるが思うような回復が得られない。
「俺が代わります、マキアさん!」
ハーベルが力強く言うと、
「ハイライフ!」
まずはマキアに体力・魔力回復魔法をかけ、続けて、
「ルミナス・レストレーション!」
カザキに光属性の応用魔法を詠唱した。
「ええ、応用魔法!?」
同じ光属性を使うマキアは、その魔法の高度さに驚きを隠せない。
カザキの傷はみるみる塞がり、息を整えながらゆっくり立ち上がる。
「ありがとう、ハーベル!すまん、油断した!」
「いえ、お互い様です!」
ハーベルはカザキの手を握り、彼を支え起こした。
「なんで毒が効かないんだ!」
カザキが悔しそうに問いかける。
「もしかして、ボスのスキルか何かでしょうか?」
ハーベルが推測を述べる。
「ゴブリンキングにそんなスキルがあったか?」
「いいえ、聞いたこともありません…。」
マキアが首を振る。
「ウォールに小さい穴を開けて、ボスの様子を確認してみましょう!」
「了解!」
ハーベルは「ストーン・バレット」で壁に小さな覗き穴を開けた。カザキが穴を覗き込むと驚愕の表情を浮かべる。
「なんだ、アイツ?」
「どうしたの、カザキ!」
マクリアがカザキをどかし、覗き込む。
部屋の中央には、人間の骨で作られた巨大な椅子。
その上には、通常のゴブリンの個体の3倍はある大きなゴブリンが威圧的に座り込んでいる。
「あれ、ゴブリンキング!?」
マクリアが首をかしげる。
ハーベルも覗き込むと「解析」スキルを発動させ、詳細を確認する。
「アイツ、ゴブリンエンペラーらしいです…。」
「はあ?中級ダンジョンのボスクラスじゃないか…。」
「なんでこんなところにいるんだ?」
「どうりで…毒が…効かない…耐性持ち…。」
シズネが肩を落とし、うなだれる。
「どうする?」
「後ろはゴブリンたちに塞がれ、前にはゴブリンエンペラーか…。」
ピクシスギルドは八方塞がりの状況に追い込まれてしまった。
次回 勇者の奇策 ~魔法と剣で挑む最後の一撃~
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頑張って続きを書いちゃいます!




