紫炎の工匠の意志を継ぐ者
ヨッシュガルド王国は、王家の血筋に魔法に長けた者が多いこともあり、多くの優れた魔道士を輩出している魔法至上国家であった。
その中でも【ヨッシュガルド王立魔法学院】は、200年以上の歴史を持つ名門中の名門。魔道士を目指す者たちの憧れの地である。
現学院長フィネガン・グリングロウは、見た目は若いものの長命なエルフ族で、すでに120年以上生きている。彼自身もまた、【ヨッシュガルド王立魔法学院】の卒業生であり、100年前に勃発した「大魔王大戦」における勇者パーティーの一員であった大魔道士として知られている。
この学院は数多くの大魔道士や勇者たちを輩出しており、その名声は未だ衰えない。近年では、15年前の「竜鱗戦争」において、勇者パーティーに所属し「紫炎の工匠」の二つ名を持つ天才魔道士が活躍したことが記憶に新しい。彼女は魔道具作りの天才としても知られ、世に数々の魔剣や魔具を送り出した。しかし、戦争が終結すると同時に、彼女は姿を消してしまった。
その冒険譚以降、【ヨッシュガルド王立魔法学院】では飛び級を志願した生徒を「勇者」と呼ぶ風習が生まれた。ただし、実際に飛び級を成功させたのは、歴史上でこの「紫炎の工匠」ただ一人だけである。ハーベルが飛び級を志願したことで「勇者」と呼ばれ始めたのも、そういった背景があってのことだった。
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「ハーベル、どういう編成にしたいんだ?」
カザキが興味深そうに問いかける。
「はい!基本はこれまで通りで良いと思います。カザキさんが前衛、マクリアさんが魔法タンク、スイカさんは中距離の魔法攻撃と回復ポーション、そしてマキアさんが回復役です。」
「え…私、忘れてない…?」
シズネが寂しそうに口を挟む。
「もちろん、忘れてませんよ!シズネさんはこれまで前衛寄りでしたが、後衛での弱体化魔法や補助に専念した方が良いと思います。」
「どうしてだ?」
カザキが眉をひそめて尋ねる。
「俺がマルチプレイヤーとして参戦するからです!」
「マルチ…?」
カザキは不思議そうに聞き返す。
「状況に応じて臨機応変に動くことです。」
「それって、自分勝手に動き回るってことか?」
カザキは疑いの目を向ける。
「いやいや、まずは聞いてみましょう!」
マクリアがカザキを制止し、楽しそうに言う。
「いえ、その逆です!もちろん、自分の判断でも動きますが、皆さんの指示を最優先しつつ、必要な役割をこなします。」
「なるほど…。」
カザキはまだ納得しきれない様子だ。
「例えば、攻撃力が必要な時は前衛に回り、補助が必要な時は後衛に下がります。回復が追いつかない時はその補助に入ります。」
「何でもできるの?」
「本当にそんなことが可能なのかしら?」
「まあ、まずは試してみましょう!」
マキアが微笑みながら提案する。
「ありがとうございます、マキアさん!」
「よし!決まりだな。実戦あるのみだ!」
「ハーベルの実力、試させてもらうわよ!」
マクリアが楽しげに結論づけた。
次回 初級ダンジョンの英雄
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