春風に舞う運命の出会い
翌日の朝も快晴で、雲ひとつない青空が広がっていた。
春の爽やかな風が吹き抜ける中、ピンクの花びらがひらりひらりと舞う並木道を、鼻歌混じりに歩いていたハーベル。すると、道端にしゃがみ込む一人の少女の姿を見かけた。
「大丈夫か?」
ハーベルが後ろから覗き込むと、彼の影が少女を覆い隠した。
「ああ…影が…。」
彼女は暗くなったことに驚いた様子で顔を上げた。
「ああ、ごめんね…暗くなっちゃったね…。」
ハーベルが慌てて謝ると、彼女は顔を上げてにっこり微笑んだ。
「いいえ、大丈夫ですよ!」
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うう…可愛すぎる…。
この娘と友達になりたいな…。
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ハーベルの心に、よこしまな考えがよぎった。
「ええっと、何してるの?」
動揺を隠すため、彼は質問を投げかけた。
「ああ、この虫の巣を観察してたんだよ!」
「へえ…。」
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虫の巣!?変な趣味でもあるのかな…。
実は、天然なのか?
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「そんなことして、どうなるの?」
「ええっとね、いい見てて!」
彼女はそう言うと、可愛らしい両手を胸のあたりで覆うように動かした。
「構築!」
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うん?土属性?
何か、構築以外のスキルを使ったのか?
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すると、その手の中に細かい構造物がみるみる形成されていった。
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なんだ、これは?!スゴすぎなんだが!
虫の巣のフィギュアみたい、いや、これは芸術作品だ!
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「凄いですね!土魔法ですか?」
「ええ、私は土属性で、微細な構造や空間把握が得意なのよ!」
彼女は少し誇らしげに胸を張り、腰に手をあてた。
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くうう…なにやっても可愛いな… 。
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「俺は、新入生のハーベルって言います」
「私は、2年生のネルだよ!ハーベルよろしく!」
彼女は小さくて柔らかそうな手を差し出した。
ハーベルは素早く手を拭いて、彼女の手を握った。
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ズキューーーン!ダメです…死にました。
ああ、惚れちゃいました… 。
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そのままハーベルは白目をむいて気絶してしまった。
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しばらくして、ハーベルはゆっくりと目を開けた。
そこにはネルの顔があり、彼女の膝枕で横たわっていた。
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ああ、幸せすぎる…このまま死んでも悔いはありません… 。
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「ああ、目が覚めた?急に倒れるからビックリしたよ!」
「ごめんなさい…。」
ハーベルは慌てて正座をし、頭を下げた。
「俺、どのくらい気を失ってましたか?」
「ううん、10分くらいかな…。」
「まだ、10分も…。」
「うん?」
この間に、ハーベルは「解析」スキルを発動させ、ネルの使ったスキルを解析していた。
その結果、彼は「把握」スキルを得ていた。それは空間把握をし、ダンジョンなどの構造を事前に知ることができる能力だ。
しかし、リーフィア師匠から他人にスキルのことを話さないよう釘を刺されていたため、ネルには内緒にすることにした。
「ネルさんって、マクリアさんの妹さんですか?」
「ええ、姉さんを知ってるの?」
「俺は昨日からピクシスに加入したんですよ!」
「あら、後輩さんだ!」
「俺と、一緒に登校しませんか?」
ハーベルは勇気を出して言ってみた。
「もちろんよ!」
ネルはまた可愛らしい仕草で手を前に差し出した。
ハーベルはその手を握り、一緒に歩き始めた。
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ああ、なんて心地のいい時間なんだ…。
このまま、永遠に学院につかなくてもいいかも…。
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楽しい時間はあっという間に過ぎ、二人は校門に到着してしまった。
「じゃあ、また午後にギルドで会いましょう!」
ネルは軽やかに言うと、笑顔で走り去っていった。
次回 勇者 降臨!?ハーベルの決意
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頑張って続きを書いちゃいます!