最弱からの飛翔::ハーベルの挑戦
高等部のスケジュールは、午前中が学科の授業で、午後はギルドごとの活動に充てられる。
戦闘訓練やフィールドワークを通して、パーティー内での役割や立ち回りを学ぶのが主な目的だった。
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自宅へ戻ると夕食も早々に切り上げ、急いで自分の部屋へと籠った。
「師匠!大変です!」
テルミットを通じて、ハーベルの焦った声が響いた。
「いきなり、何よ!」
リーフィアの声には驚きが滲むが、若干怒りを含んでいるようでもある。
「あ、すみません。いや、これ、本当にまずいんですよ。入ったギルドが最弱だったんです!」
「そうなの?」
淡々と返すリーフィア。驚いた様子は微塵も見られない。
「だって、拠点はボロボロだし、メンバーはたった7人しかいないんです!」
「ふーん…。」
この反応にハーベルは焦りながら畳みかける。
「しかも、リーダーの妹さんなんて、貧弱でギルドに顔も出さないんですよ!」
「ふーん、それで?」
リーフィアの無関心そうな態度が、逆にハーベルをさらに追い詰める。
「ええっと、1年で飛び級したいと思ってるのに、こんな最弱ギルドじゃ…!」
「本当にそうかしら?聞く限り、最高のギルドみたいだけど?」
平然とした声。ハーベルは唖然とするしかない。
「…マジですか?」
ハーベルの声は困惑で震えていた。
「よく考えてみて。強いギルドに入ったら、それで君も強くなれるの?」
「そ、それは…違う…かも…しれない…。」
徐々に理解し始めるハーベル。
「大切なのは、自分に合った環境で、自分をいかに活かせるか。それだけよ。」
「自分を…活かす環境…。」
ハーベルの表情が一瞬で険しさから柔らかいものへと変わった。
しばしの沈黙の後――。
「師匠!ありがとうございます!なんかやっていけそうな気がしてきました!」
リーフィアの言葉が、ハーベルの心の中にあった黒いモヤを一掃した。
「じゃあ、飛び級頑張りなさい。」
「了解!必ず1年で卒業してみせます!」
「期待してるわよ。」
「はい!」
テルミットが切れた瞬間、ハーベルの気持ちは吹っ切れていた。
晴れ渡った心で、彼は深い眠りに落ちていった――。
希望を胸に抱きながら。
次回 春風に舞う運命の出会い
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