木の家で紡がれる転生者の物語
ー彼女は台所へと入り、ポットに水を注ぎ、コンロのようなものの上に置いた。
普通に火を点けてお湯を沸かし始める様子に、ハーベルは目を丸くして見入っていた。
湧き立つお湯をティーポットに移すと、可愛らしい花柄のついたカップに丁寧に注ぎ、美味しそうなクッキーを棚から取り出してテーブルに並べた。
彼女は楽しそうに鼻歌を口ずさみながら、ハーベルの前に座った。
「はい、お茶でも飲みながらお話しましょう!」
彼女は微笑みを浮かべながら、カップを差し出した。
「あの…。」
ハーベルが少しもじもじしながら切り出した。
「何かしら?」
彼女はクッキーを頬張りながら答えた。
「クッキーもどうぞ。」
「あ、はい…。じゃなくて!なんで魔法を使わないのですか?」
思わず気になったことを口にしてしまった。
この世界に来てからというもの、火を使ってお湯を沸かす光景を見たのは初めてのことだった。
ここでは生活に必要な魔法が当たり前のように使われており、洗濯も炊事もすべて魔法で済ませてしまうのが常識だったのだ。
「お湯なんかすぐに魔法で出せるのに、なんでわざわざ手間のかかることを…?」
そう言ってしまった瞬間、ハーベルはしまった、と思った。
「あなた、なんでお茶の入れ方なんて知ってるの?」
彼女は少し悪戯っぽい目をしてハーベルを見つめた。
「……。」
ハーベルは言葉を詰まらせる。
「やっぱり、あなた転生者でしょ?」
その言葉に、ハーベルは一瞬心臓が止まりそうになった。
「いえ…俺、帰ります!」
動揺した彼は立ち上がり、帰ろうとした。
「ああ、待って!私も転生者なのよ!」
彼女は慌ててハーベルの手を掴んで叫んだ。
「ええ!?」
驚きのあまり、ハーベルはその場にへたり込んでしまった。
自分以外にも転生者がいるかもしれないとは思っていたが、この世界でそれらしき人物に出会ったことは一度もなかった。
目の前の女性がそうだと言う事実に、完全に不意を突かれていた。
「ごめんなさいね、驚かせてしまったわね。」
彼女は腰を下ろし直し、丁寧に自己紹介を始めた。
「私の名前はリーフィアよ。」
「こちらこそ、ごめんなさい…。俺はハーベルと言います。」
ハーベルは正座をして深くお辞儀をした。
「こっちへ座って。」
「はい…。」
「こちらに来て何年になる?」
リーフィアが静かに尋ねた。
「俺は3年になります。」
「私は、かれこれ15年くらいになるわ。」
「そんなに…。」
リーフィアは少し寂しそうな表情を浮かべた。
「ずっと、一人だったんですか?」
「いいえ、そんなことはないけど…。」
しかし、それ以上は語りたくないような雰囲気だった。
ハーベルは話せる相手がいないことに悩んでいたこともあり、気づけばこれまでの経緯をリーフィアに包み隠さず話していた。
次回 魔法陣使いの恐怖と誓いの絆
続きの気になった方は、
ぜひともブックマークをお願いいたします。
リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。
頑張って続きを書いちゃいます!




