優しさの影に潜む赤い光
青空の下、心地よい風が吹き、小鳥の囀りが響く中、ハーベルと男はベンチに並んで腰掛けていた。
しかし、穏やかな天気とは裏腹に、ハーベルの心は重く沈んでいた。
男が掴んでいたハーベルの手を離し、優しく促した。
「もう少し話してもいいかな?」
そう言って、ハーベルをベンチに座らせ直した。
「はい…。」
ハーベルは困った顔をしていたが、男はそんなことを気にする様子もなく話を続けた。
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マジか…この男、逃がすつもりないな…。
どうにかして逃げたいけど、いきなり走り出すのも不自然だし、先生相手だと後で問題になりそうで厄介だ…。
くそ、どうしたらいいんだ…。
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「それで、その紙切れには地図以外に何か言葉が書いてなかったのかい?」
男はぐいぐいと質問を続けてきた。
「はい…何もありませんでした。」
ハーベルは冷静を装いながら答えた。
「そうか…。」
男はしばらく考え込んでいたが、突然立ち上がった。
「分かった!私も一緒に探してあげよう!」
手をバシッと鳴らしながら提案してきた。
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マジか…コイツ、一緒に探すだって?勘弁してくれ…。
どうするんだ、これ…。
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ハーベルは心の中で困り果てていた。
「いえ、大丈夫です!これ以上ご迷惑をお掛けするわけにはいきませんから!」
ハーベルは必死に断ろうとしたが、男は意に介さず続けた。
「いや、迷惑だなんて!」
「いいえ…。」
「私も気になってきてしまったんだ!手伝わせてくれ!」
男はやる気満々の様子で立ち上がった。
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ああ、ダメだ…逃げられない…。
•••••••••
ハーベルがもう断りきれないと諦めかけたその瞬間、若い女性の怒鳴り声が響いた。
「教授!探しましたよ!どこで油を売っているんですか!」
「ええ?」
ハーベルは呆気に取られていた。
「早く戻りますよ!もうすぐ次の授業が始まってしまいます!急いでください!」
女性は男の腕を掴み、無理やり引っ張り始めた。
「ああ、分かった、分かったから…。」
男は残念そうな顔をしながら引っ張られていき、ハーベルに向かって声をかけた。
「ハーベル君、ごめんよ!今日はこのくらいにしておくよ!またね!」
そう言い残し、男は引きずられるように去っていった。
「助かった…!」
ハーベルは緊張から解放され、地面にへたり込んだ。
「はあ…。でも、アイツ、今俺の名前呼んでなかったか?気持ち悪い…。名乗った覚えもないのに…。」
ハーベルは気味悪さを感じつつも、解放された喜びの方が大きかった。
「さすがに今日はここまでにしておこう…。アンナが心配しているだろうし、帰るか…。」
ハーベルはとぼとぼと家路についた。
次回 魔女の贈り物と運命の出会い
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