高等部への進入と未知の邂逅
高等部の敷地は中等部と比べて広大で、余裕のある造りが印象的だった。
生徒たちは屋外で勉強や実習をすることもできるように、至るところに机やベンチが整然と配置されていた。
その日は快晴で雲ひとつない青空が広がり、暖かな陽光が辺りを包んでいた。
しかし、そんな心地よい天気とは裏腹に、ハーベルの心はどんよりと曇ったままだった。
「この辺りじゃない気がする…。どうなってたっけ…?」
彼は深い考えに沈みながら校庭を歩き回っていた。
そして、ふと一つの記憶が頭をよぎる。
「ああ、そうだ、高等部には旧校舎があったはず…。もしかして、あの地図が指しているのは旧校舎の方かもしれない!」
ひらめきが胸に灯ると同時に、彼は急に走り出した。
その時だった。
「おい!そこの君!」
大人の男性の声がハーベルを呼び止めた。
「ヤバい!」
ハーベルは咄嗟に肩をすぼめ、怒られるのではないかと身構えた。
「君にはまだここは少し早いんじゃないかな?」
意外にも優しい声で話しかけられ、ハーベルは恐る恐る振り向いた。
そこには、30代ほどと思われる背の高い男性が立っていた。彼は白いローブを纏い、穏やかな微笑みを浮かべている。
「あの、ちょっと探し物をしてまして…。」
ハーベルは答えたが、男性はその言葉に反応を見せた。
「探し物?それは何かな?どんなものを探しているんだ?」
しつこく問い詰められ、ハーベルはその場を逃れようとする。
「あ、いや、大したものではないので。失礼します!」
ハーベルが立ち去ろうとした瞬間、男性が声を張り上げた。
「待ちなさい!」
その声に驚き、ハーベルは足を止めてしまう。
「なにも取って食おうって訳じゃないんだから、逃げる必要はないだろう?」
彼は諭すような口調で言った。
その直後、男性の目が赤く光り、真っ赤な魔法陣が浮かび上がると、ハーベルの身体がふわりと宙に浮いた。
「ああ…ああ…!」
ハーベルは慌てて手足をバタバタさせたが、男性は冷静に彼の体勢を整えると、近くにあったベンチへ優しく下ろした。
「まあ、少し話を聞きなさい。」
男性が穏やかに言うと、ハーベルは焦りながらも静かに頷いた。
「はい…。」
「いい心がけだ。」
彼はそう言ってハーベルの頭を優しく撫でた。
次回 秘密を握る白いローブの男
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