英雄の帰還:新たなる旅路
「レオン、俺たちも帰ろう!」
「ああ…。」
ハーベルはレオンに声をかけ、共にテルミットゲートへ向かいながら、この戦いの顛末をカザキたちに話して聞かせた。
「さすが、ハーベル!」
ネルの声が弾む。
「…ってことは、魔道具とかなしでもすべての魔法やスキルが使えるのですか?」
アクシアは首をかしげて困惑の色が隠せない。
「そうみたい…。」
ハーベル自身も十分には頭が整理できていないようだった。
「さすが規格外だな…。」
カザキがハーベルの肩を「ガシッ」と掴んだ。
「私は、前から気づいていたわ!」
クラリッサが胸を張って言い張る。
「本当か?」
フレアがクラリッサの顔を覗き込む。
「ハハハ…。」
仲間たちの温かい言葉に包まれ、国へ戻ったハーベルたちは、別れを惜しみながらもそれぞれの家へ戻っていった。
「俺も家へ帰ろう…。」
ハーベルは自らの家路を辿った。
大精霊リーフィアとの別れは寂しかったが、彼女が世界を救うために自らを犠牲にしたことに、深い感謝と尊敬の念を抱いていた。
しかし、一つだけハーベルには腑に落ちない点があった。
なぜか…。ハーベルのステータスから、原罪魔法が消えておらず、使用可能になったままだった。
確かに、リーフィアの存在は全く感じられないし、念話をすることもかなわない…。それでも……。
レオンは、今さら自分の家に顔を出すことはできないと言って、悲しげな表情を浮かべた。
彼の身を案じるハーベルに対し、彼は「許してもらえるか分からないが、仲間の【MACOK】たちに事情を話してみる…。」と言って、ハーベルの前から姿を消してしまった。
彼の表情には、親友たちの信頼を裏切ったことへの後悔と、それでも前を向こうとする強い意志が見て取れた。
ハーベルは、リーフィア師匠を元の世界に戻すという約束も果たせないままだった。サリエルを倒した今、その方法を再び探し求める必要があった。
いや、まずはリーフィア自身を見つけ出さないと……。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「母上、俺、旅に出ようと思うんだけど…いいかな?」
ハーベルは、自宅に戻るとすぐに母に問いかけた。
彼の心は、すでに新たな目的へと向かっていた。
「お父さんとも話していたんだけど、きっとそう言うんじゃないかって…。」母は優しく微笑んだ。
「お父さんは、家を継いで欲しかったようだけど、私は応援するわよ。」
「ありがとう、母上……。」
両親の理解と応援を受け、ハーベルは師匠を元の世界へ戻す方法を探す旅へ出ることを決意した。それは、リーフィア師匠との再会を願う旅でもあった。
次回 失われた精霊の歌:古都の謎
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