友情の石板:光と闇の終焉
ハーベルが目を開けると、そこは穏やかな光に満ちた空間だった。窓からは、遠くに町並みが見える美しい景色が広がり、小鳥の囀が聞こえる。
それは、ハーベルの師匠の家だった。とても懐かしい風景だった。目の前には、木製のテーブルがあり、サリエルがその前に腰かけている。
「ここはどこだ…?」
サリエルは信じられないといった様子で、周囲を見回した。
「師匠の家さ、お茶でも飲むか?」
ハーベルは、何食わぬ顔でカップに紅茶を注ぎながら言った。
「確かに漆黒の翼は破壊したはず…何をした?」
サリエルは、未だ状況を把握できないでいた。
「まあ、今ごろ…。」
ハーベルは、窓の外に目をやり、宮殿に残された仲間たちの奮闘を想像していた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
宮殿に残された仲間たち。
ハーベルとサリエルが消えた空間には、真っ赤なグレーターデーモンと真っ黒な魔導騎士を討伐した仲間たち…。そして、【神器:ソウルレンダー】を携えたレオンがいた。
「ハーベル?」
「やったのか?」
仲間たちの声が響く。
「みんな今のうちに石板へソーサリーエレメントを…!」
レオンが叫んだ!
状況を理解した仲間たちは、一斉に石板へと駆け寄る。
彼らの目には、勝利への希望が宿っていた。
「分かったでござる!」
フウマが、焦る様子もなく、むしろ落ち着いた手つきで、自身のソーサリーエレメントを石板の窪みに嵌めた。
続いてホムラ、そして他の仲間たちも次々と自分のソーサリーエレメントを石板に嵌め込んでいく。
「これでいいのか?」
不安げに問いかけるタオに、レオンは静かに頷く。
「レオン、助けてくれたのね?」
リヴァイアが優しい笑みを浮かべる。
「ああ、実はルナシェイドが来てから騙されていることは分かっていた。でも、これを利用すれば、サリエルを倒せる隙を作れるかもと思ったんだ…。」
レオンは、ハーベルと交わした「アスラ」の合図が、サリエルを別空間に閉じ込めるためのサインだったことを語る。
そして、彼の「隠蔽」スキルが、サリエルを完全に欺いていたのだ。レオンは、サリエルの支配下にあるふりをしながら、この瞬間のために虎視眈々と機会を窺っていたのだと…。
「でも、ハーベルは、なんでレオンが、味方だって分かったの?」
「ああ、僕とハーベルしか知らない合い言葉があるのさ!」
レオンは、少し照れたように説明しながら、自身の闇のソーサリーエレメントを石板の窪みに嵌めた。
これで全てのソーサリーエレメントが石板に揃う。
「最後は、私が!」
その瞬間、リーフィアがそう言って、光の大精霊の姿から純粋な精霊石へと姿を変え、最後の穴へと吸い込まれていった。
石板は眩いばかりの光を放ち、宮殿全体が神々しい輝きに包まれていく。
石板が、急に激しい光を放ち始めた。やがて静かに、まるで光の粒のように、粉々に砕け散った…!
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
師匠の家では…。
「サリエル、俺たちの勝ちだ!」
ハーベルの言葉が、サリエルの耳に届く。
その瞬間、彼の顔から血の気が引いていく。
「馬鹿な! まだ、レオンが…!」
サリエルは、レオンが自分を裏切ったことを理解し、最後の足掻きのように叫んだ。
「レオンは、俺の親友だぜ?」
ハーベルの言葉は、サリエルにとって最後の、そして最も強力な楔となった。
サリエルは、人間たちの絆と友情という、彼が理解できなかった感情に打ち破られたのだ。
「ううっ…。」
サリエルの身体が、まるで砂のように崩れ始める。
彼の存在そのものが、この人間界から消え去ろうとしていた。
全てのソーサリーエレメントが揃い、石板が砕け散ったことで、サリエルという悪魔の存在は完全に消滅したのだ。
「今ごろみんながやってくれているはず…。最後にお茶でも飲んでいけ………。」
ハーベルは静かにそう言って、カップに紅茶を注ぎ、サリエルの前に差し出した。
しかし、サリエルの姿はすでに薄れており、ハーベルの手からカップが滑り落ちる前に、そこにはもう奴の姿はなかった…。
悪魔サリエルは消滅したのだ。静かに、そして確実に…。
ハーベルとレオン、そして仲間たちの絆と、彼らの信じる心が、絶望的な状況を打ち破ったのだ。
宮殿に、再び平和な光が満ちていくのが分かる。
彼らの戦いは、ついに終わりを告げたのだった。
次回 終わらない物語
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