イメージの力:最後の零式
「レオンは、自身を犠牲にしてまでも、勝利へと導こうとしている…。俺は、今まで何をしていたんだ。結局サリエルを倒せないままここで死ぬのか…?」
ハーベルは、漆黒の翼を失い、絶体絶命の状況に再び陥りそうになった。魔法を使えるようになってから、何を学んだのか。師匠に何を教わったのか。結局、道具に頼り切りで、肝心な場面で何もできなかった自分を責めた。
「師匠、どうすれば…。」
その時、脳裏に懐かしい師匠の声が響いた。
「あらあら、ハーベル、もう諦めるの?」
「師匠?」
「魔法って何だっけ?」
「魔法は、イメージそのもの…。」
師匠の言葉が、ハーベルの心を強く揺さぶった。
彼は、漆黒の翼をサリエルに破壊されたが、その本質は自身の「イメージ」の力だ。道具に依存するのではなく、魔法の根源である「イメージ」を信じれば、まだ道はあるはずだ。
「イメージがあれば何でもできるんじゃないの? 道具なんて無くてもね……。」
その言葉が、ハーベルの脳裏に稲妻のように走った。
「そうか、すべてはイメージ!」
ハーベルは顔を上げた。
その瞳には、再び強い光が宿っていた。
「リーフィア、師匠…。力を貸してくれ!」
ハーベルはリーフィアに呼びかけた。
「リーフィア!」
「何? ハーベル?」
困惑するリーフィアに、ハーベルは真っ直ぐな瞳を向けた。
「俺を信じてもう一度あの作戦を!」
「え? 何言ってるの? もう漆黒の翼はないのよ。あれがないと、作戦そのものが無理じゃない? しかも、レオンの闇のソーサリーエレメントがないと?」
リーフィアの言葉はもっともだ。だが、ハーベルには確信があった。
「そうだな、でも俺を信じてくれ!」
ハーベルの真剣な眼差しに、リーフィアは戸惑いながらも頷いた。
「分かったわ、みんなにもう一度伝えてくるね…。」
「よろしく!」
リーフィアが再び仲間たちに作戦を共有し始めたその時、ハーベルはサリエルに向かって叫んだ。
「おい、サリエル! お前は、絶対に倒す!」
「何を今さら……。」
サリエルは冷笑を浮かべるが、ハーベルの顔には、もはや迷いはなかった。彼の言葉は、仲間たちへの合図でもあった。
「ハーベル、準備完了よ!」
リーフィアの声が届く。仲間たちも、ハーベルを信じて準備を整えてくれたようだ。彼らの目にも、新たな決意が宿っていた。
「レオン、行くぞ!」
ハーベルは、再び一気に突っ込んで攻撃を仕掛けた。その動きは、先ほどまでとは別人のように、迷いなく力強い。彼の全身から、目に見えないほどの魔力が放出され、空間が微かに歪む。
レオンは、ハーベルの攻撃を軽くかわしながら笑みを浮かべている。彼の目には、ハーベルの動きは全て見えているかのように映る。しかし、ハーベルの狙いはそこではない。
「ハーベル、今だ!」
その瞬間、レオンがサリエルに向かって【神器:ソウルレンダー】の真の力を発動させ、叫んだ!
サリエルの背後から現れたレオンの動きは、あまりにも唐突で、サリエルは完全に意表を突かれた。
ハーベルは、サリエルの驚きの一瞬を見逃さなかった。
彼は体ごとサリエルに突っ込むと、魔力を集中させる。
失われたはずの「零式」のイメージが、ハーベルの脳裏に鮮明に蘇った。もはや漆黒の翼など必要ない。純粋な魔力と強固なイメージが、新たな空間の裂け目を生み出す。
「な…にを…!」
サリエルの戸惑う声が途切れる。次の瞬間、空間が大きく歪み、ハーベルとサリエルの姿は掻き消えた。
次回 友情の石板:光と闇の終焉
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