絶望の裏側:ハーベルの奇策
サリエルは、二体のドラゴンの激しい戦いを愉しむかのように、優雅に椅子にふんぞり返っていた。
その刹那、ハーベルは動いた。
「零式!」
サリエルが知らぬこのスキルを使い、ハーベルは一瞬でサリエルの背後に転移する。
「何!?」
サリエルは驚愕の表情を浮かべた。
ハーベルは間髪入れずに、両手に持った神器:シックスセンスと神器:金剛の短剣を構え、サリエルに斬りかかった。しかし、サリエルの身体は微動だにしない。
魔法が無効であるように、物理攻撃もまた、彼には届かないかのように思われた。
その時、ハーベルの脳裏に、かつてリーフィアが告げた言葉が響く。
「石板にソーサリーエレメントを嵌め込めば、サリエルを倒すことができるのよ。」
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サリエルを倒すには、魔法も物理攻撃も通用しない。
唯一の方法は、石板に全てのソーサリーエレメントを嵌め込むこと。しかし、石板は動かせず、サリエルを倒さなければ石板に触れることもできない。
まさか、サリエルを倒すのではなく、別の方法で時間を稼ぐ必要があるのか?
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ハーベルは再び距離を取った。
ダークネスドラゴンとホーリードラゴンの激しい戦いが、宮殿全体を揺るがしている。
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レオンは完全にサリエルの支配下にある。だが、本当にそうなのか?
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「レオン…!」
ハーベルは叫んだ。
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レオンは、サリエルに支配されているように見せかけて、本当は俺たちを助けようとしているんだな!?
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ハーベルの言葉に、レオンの表情が一瞬、揺らいだように見えた。
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サリエルは言った! 闇のソーサリーエレメントがないと倒せないと! それはつまり、レオンが闇のソーサリーエレメントを石板に嵌め込む必要があるということ…。
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ハーベルは、突如としてホーリードラゴンの攻撃を止めた。
そして、召喚を解除したのだ。
「な、何をしている!? ハーベル!」
ホムラが叫ぶ。
レオンは、ハーベルと目を合わせた。
その目には、確かに親友としての光が宿っている気がした。
「ハーベル…よく気づいてくれたな…。」
消えそうな声で呟く。
すると、なぜかレオンもダークネスドラゴンに影に戻るように促したのだった。
「レオンは、俺が相手する。みんなは、サリエルを何とかしてくれ!」
ハーベルの言葉に、仲間たちは動揺を隠せない。
サリエルに魔法が効かず、石板を動かすこともできない状況で、「何とか」と言われても具体的な策が見えないからだ。
「なんとかって言ったって…。」
一同は顔を見合わせて動きを止めた。
「リーフィア、みんなと作戦を共有するいい方法はないか?」ハーベルは、冷静さを保ち、光の大精霊リーフィアに問いかけた。
「私が、他の大精霊たちと話し合って伝えてもらうくらいしかないわね。」
リーフィアが答える。
「なるほど…。」
ハーベルは、自身の作戦をリーフィアに詳しく説明した。
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それは、レオンと連携し、彼がサリエルに一撃を加える隙に、自身がサリエルを別空間に引きずり込み、その間に仲間たちが石板へソーサリーエレメントを嵌め込むというものだった。
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「分かったわ、でもレオンはどうするの? あと、あなたがサリエルを抑えている間は私が一緒にいられないから、一人で対処することになるわよ。」
リーフィアが懸念を示す。
「分かってる、レオンは俺に任せてくれ。サリエルの方は死ぬ気でなんとかするよ…。」
ハーベルの瞳には、揺るぎない覚悟が宿っていた。
「早速みんなに伝えるわね!」
リーフィアが動き出すと、サリエルの声が宮殿に響き渡った。
「何をこそこそしているのですか? そちらから来ないのならば行きますよ!」
サリエルが二つの魔法陣を発動させると、真っ赤なグレーターデーモンと真っ黒な魔導騎士が召喚された。その禍々しいオーラは、宮殿の空気をさらに重くする。
「俺たちが相手だ!」
ホムラとフウマが素早く前に飛び出し、召喚された魔物たちの攻撃を受け止めた。
その間に、リーフィアは迅速に仲間たちに作戦を伝えていく。
「何を狙っているかは知りませんが、簡単には行きませんよ!」
サリエルは不敵な笑みを浮かべる。
次回 剥奪された翼:親友の真意
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