究極召喚:バルトロス vs ヴァレロス
その時、柱の影から誰かがゆっくりと現れた。その姿を見たハーベルの顔に、驚きと混乱が浮かぶ。
「君は、レオン?」
「やあ、ハーベル…。」
現れたのは、かつてのハーベルの親友、レオンだった。
しかし、彼の纏うオーラは以前とは全く異なっていた。
どす黒い魔力が彼から放たれ、その瞳には冷たい光が宿っていた。
「レオン、なぜここに…?」
「サリエル様の下僕になったのさ!」
レオンの言葉に、ハーベルは絶句する。
「闇のソーサリーエレメントも手に入れた、サリエル様にこの力も頂いた!」
レオンは、禍々しい輝きを放つ【神器:ソウルレンダー】を掲げ、その力を誇示するように見せつけた。
「何言ってるんだよ!」
「お前に分かるものか!」
ハーベルの叫びにも、レオンの表情は変わらない。
「ハーベル、お前の知り合いか?」
「ああ、俺の親友さ!」
「とてもそうは見えないけど…。」
仲間たちの困惑する声が響く。
「レオン、サリエルを倒すためには、君の力が必要なんだ!」
ハーベルは、必死にレオンに呼びかける。
••••••••••
サリエルを倒す唯一の鍵である闇のソーサリーエレメントを持つレオンの協力が不可欠だ。
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「もちろん分かっているさ、だからこうしてるんだろ…?」
レオンの言葉に、ハーベルは一瞬希望を抱く。だが、その後に続く言葉が、彼の心を再び打ち砕いた。
「お前らに絶望を与えるためにな!」
レオンは、冷酷な笑みを浮かべた。
その瞬間、サリエルが高笑いを始めた。
「レオンさん、よく言いました。あなたにお任せしましょう!」
「お任せください、サリエル様!」
レオンは、サリエルに恭しく頭を下げた。
全身からどす黒い魔力を垂れ流しながら、レオンはゆっくりとハーベルたちに近づいてくる。その姿は、かつての親友とは似ても似つかない、純粋な悪意の塊だった。
「あいつ、ヤバイな!」
「本当に、ハーベルの親友でござるか?」
「一時撤退しましょう!」
仲間たちは恐怖に怯え、撤退を促す。
だが、サリエルがそれを許さない。
「そんなことを私がさせるわけないでしょう、フハハハ…!」
逃げ場はない。
ハーベルは覚悟を決めた。
••••••••••
サリエルがまだ知らない空間移動のスキルを使い、何とか隙を作るしかない。しかし、レオンをどうにか仲間に引き戻さなければ、闇のソーサリーエレメントの力は使えない。
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その思考のさなか、レオンが詠唱を始める。胸の魔方陣が赤黒い光を放つと、彼の足元に、禍々しい召喚魔法陣が展開された。
「第10召喚術式!現れよ、深淵の闇を纏いし者! 我が僕となり、敵を打ち砕け! ダークネスドラゴン!」
大地が震え、空間が歪む。
漆黒の裂け目から、巨大な影が現れた。それは、全身を黒い鱗に覆われ、燃えるような赤い眼光を放つドラゴンだった。その体躯は、宮殿の天井に届かんばかりの威容を誇り、その咆哮は、宮殿全体を揺るがすほどの破壊力を持つ。周囲の闇を吸収し、その存在感を際立たせていた。
「くそっ!」
ハーベルもまた、すぐに反応した。
彼は即座に【神器:シックスセンス】を掲げ、清らかな光を放つ召喚魔法陣を展開する。
「聖なる光に感謝する。星海の彼方より来たりし神威よ、我が意志を奉じ、その姿を顕現せよ!バルトロス!
光召喚:第10究極魔法!ホーリー・ソラリス!」
レオンのダークネスドラゴンとは対照的に、ハーベルの召喚陣からは眩いばかりの光が溢れ出した。現れたのは、純白の鱗を持ち、神々しい輝きを放つホーリードラゴンだ。その威厳ある姿は、空間に満ちる闇の瘴気を浄化していくかのようだった。優雅な翼を広げ、その眼差しはどこまでも清らかだった。
二体の巨大なドラゴンが、宮殿の中央で対峙する。
一方は闇をまとい、もう一方は光を放つ。まさに光と闇の激突が始まろうとしていた。宮殿の空気は一変し、張り詰めた緊張感に包まれる。
「面白いことになったな、ハーベル!」
レオンは冷たい笑みを浮かべた。
「だが、お前の光など、俺の闇には届かない!」
「レオン…まだ分からないのか? 君はサリエルに騙されているんだ!」
ハーベルの叫びは届かない。
レオンのダークネスドラゴンが、その巨大な口から黒い炎のブレスを吐き出した。それは空間を焦がし、全てを無に帰すかのような破壊力を秘めている。ブレスが通過した床は、瞬く間に炭化し、壁にまでその熱が伝播していく。
「バルトロス、迎え撃て!」
ハーベルの指示と共に、ホーリードラゴンもまた、その口からまばゆい光のブレスを放った。
神聖なエネルギーが凝縮されたその光は、闇のブレスに劣らない威力を秘めている。二つの異なる属性のブレスが激突し、宮殿の中央で轟音と共に大爆発が起こる。
爆風が吹き荒れ、視界が光と闇に包まれた。床はひび割れ、天井からは細かな石片が降り注いだ。
煙が晴れると、二体のドラゴンは互いに間合いを取り、威嚇するように唸り声を上げている。
グォーーーー! ガォオオオオオオ!
ダークネスドラゴンの全身からは黒い魔力が脈動し、その目は獲物を狙うかのように光っていた。対するホーリードラゴンは、傷一つないその姿から聖なる光を放ち、周囲の闇を少しずつ押し返している。
「攻めろ、ヴァレロス! 」
レオンが命じる。
ダークネスドラゴンは、その巨体を一気に加速させ、ホーリードラゴンへと突進した。鋭利な爪が振り下ろされ、ホーリードラゴンの白い鱗に襲いかかる。
ホーリードラゴンも負けじと、その前足で攻撃を受け止め、強靭な尻尾で反撃を試みた。二体の肉弾戦は凄まじく、激しい衝突音が宮殿中に響き渡る。
ガァン! ガァン!
金属がぶつかるような激しい音が響き渡り、火花が散る。
ダークネスドラゴンの鱗は黒曜石のように硬く、ホーリードラゴンの爪もまた、ダイヤモンドのような硬度を誇る。
ホーリードラゴンは、その純粋な光の力を使い、全身から光の波動を放出した。
神々しい光がダークネスドラゴンを包み込む。
闇の力を弱め、動きを鈍らせる効果があるはずだ。
しかし、ダークネスドラゴンは唸り声を上げ、その黒い鱗が光を弾くかのように輝き、効果を最小限に抑え込んでいる。
「無駄だ! 俺の闇は、お前の光ごときで消えはしない!」
レオンが冷笑する。
「ヴァレロス! エクリプス・ノヴァ!」
ダークネスドラゴンは、その巨大な口を大きく開け、闇のエネルギーを凝縮し始めた。それは、まるで小さなブラックホールが出現したかのように、周囲の光すらも吸い込んでいく。次の瞬間、凝縮された闇の塊が、凄まじい速度でホーリードラゴンへと放たれた。
「原罪魔法を…。あんな使い方で…。」
ハーベルが感心しながら息をのむ。
「バルトロス! 回避してくれ!」
ハーベルが叫んだ。
ホーリードラゴンは素早く翼を広げ、闇の塊をぎりぎりでかわした。闇の塊は、宮殿の壁に激突し、大きな爆発音と共に壁の一部を抉り取った。
サリエルは、二体のドラゴンの激しい戦いを愉しむかのように、優雅に椅子にふんぞり返っていた。
次回 絶望の裏側:ハーベルの奇策
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