絶望の石板:嘲笑う悪魔
「なるほど、あなた方がソーサリーエレメントに選ばれし者というわけですか…。」
サリエルの声が宮殿に響き渡る。その威圧感は、ハーベルたち五人の冒険者を圧倒していた。
「お前もここで終わりだ!」
間髪入れず、五人は渾身の極大魔法をサリエル目掛けて放った。
「クエイクブレイカー・モール!」
大地を割り砕くほどのハンマーが唸りを上げる。
「ソルフレア・ドラゴンストライク!」
灼熱の炎を纏った竜が空間を焦がす。
「フロストバインド・グレイシャルプリズン!」
絶対零度の氷が全てを閉じ込める。
「テンペスト・ゼファーゲイル!」
嵐を巻き起こす烈風が吹き荒れる。
「神聖:第10究極魔法!ルミナンス・パージ!」
全てを浄化する神聖な光が降り注ぐ。
魔法の複合攻撃がサリエルを飲み込んだ。
彼の身体は強固な氷の檻に閉じ込められ、その上を巨大な幻影の日本刀が十文字に何度も斬り裂いた。
さらに、炎の竜が大きな口を開けて飲み込んだところを、山のようなハンマーが押し潰す。
最後に、ボロボロになったサリエルを和らかな光のヴェールが包み込み、浄化されていく。
「どうだ!」
ホムラが叫んだ。手応えはあったはずだ。
しかし、次の瞬間、彼らの希望は打ち砕かれる。
「気が済みましたか?」
その声に、全員が凍り付いた。
「何?」
「な…、なぜ無傷!?」
タオとハーベルが驚愕の声をあげる。
サリエルは、何事もなかったかのように、悠然と大きな椅子にふんぞり返っていた。彼の身体には、かすり傷一つない。
「私に魔法は、効きませんよ!」
その言葉は、まるで嘲笑うかのようだった。
「そんな馬鹿な!」
「何が起こっているの?」
リヴァイアも自分の眼を疑った。
仲間たちは動揺を隠せない。圧倒的な力の差を前に、彼らの顔に絶望の色が滲み始めた。
「まあ、いいでしょう。あの二人を倒して来たご褒美にいいことを教えて差し上げましょう。」
サリエルの言葉に、ハーベルは警戒した。
「いいことだと!」
サリエルは指を一本立て、宮殿の奥を指し示す。そこには、禍々しい紋様が刻まれた古びた石板が鎮座していた。
「ここに石板があります。あなた方のお持ちのソーサリーエレメントをそれぞれここに填め込めば、私を倒すことができます」
サリエルの言葉に、仲間たちは疑心暗鬼になった。
「何言ってるんだ?」
「自分の弱点を教えてるの?」
「騙そうとしてるんだろ!」
「信じるかどうかはあなた方次第ですが、これは本当のことなのです…。」
サリエルの口元がニヤリとする。
その時、ハーベルの召喚獣である光の大精霊リーフィアが姿を現した。
「それは本当よ。」
「リーフィア!」
リーフィアの言葉に、仲間たちは驚きを隠せない。
「みんな、リーフィアが本当のことだって…。」
「そんなことを教えるメリットは?」
思わずハーベルが質問をしてしまう。
「デメリットしかありませんよ。だからご褒美と言ったではありませんか」
サリエルの言葉の真意を理解し、ハーベルたちは絶望する。
「絶対に無理ってことか…。」
「そう言うことみたいね…。」
ホムラとリヴァイアが落胆の表情に変わった。
••••••••••
もし石板にソーサリーエレメントを嵌め込むことがサリエルを倒す唯一の方法だとしても、奴を倒さずにどうやってそれを成し遂げるのか。
••••••••••
「なんとかあの石板を奪うしかないだ!」
タオが呟く。
「よし、俺が!」
ハーベルは石板に飛びつき、動かそうと試みたが、びくともしない。
サリエルは微動だにせず、ただ笑みを浮かべて見ているだけだった。
「くそ!」
ハーベルは一度距離を取った。
「どうなってるんだ?」
ホムラがハーベルに問いかけた。
サリエルは愉しげに語り始める。
「本当に、神も困ったものを作ったもんだ。忌々しい、しかもこんな辺境の地に…。」
「どういうことだ!」
「その石板は、そこから動かすことができない。だから、こんなところに宮殿を建てたんですよ。」
サリエルの言葉に、ハーベルたちは衝撃を受ける。
「つまり、お前を倒すには石板にソーサリーエレメントをすべて埋め込む必要があるが、お前を倒さないとそれができないため、結局倒せないということか?」
状況は絶望的だ。
「結局、自力で倒すしかないってことかよ…。」
「魔法も効かないのに参ったでござるな…。」
フウマに焦りの色が滲む。
「そもそも、闇のソーサリーエレメントがないと倒せないってことでしょ?」
リヴァイアの顔が青ざめると、
「そう言うことになるな…。」
ホムラもそのまま膝をついた。
その時、柱の影から誰かがゆっくりと現れた。その姿を見たハーベルの顔に、驚きと混乱が浮かぶ。
次回 究極召喚:バルトロス vs ヴァレロス
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