アポカリプス・エクリプス:戦慄の拷問部屋
ハーベル一行が宮殿の奥深くへと足を踏み入れると、そこは形容しがたいほどおぞましい巨大な拷問部屋だった。
一面はどす黒い血にまみれ、あらゆる拷問具が所狭しと並べられ、この世のすべての苦痛が凝縮されたような空間が広がっていた。
「なんだ…ここは…。」
ホムラは血の臭いに耐えかね、鼻を押さえながら呻いた。
その部屋では、サリエル直属の戦士、豪将ブッチャが待ち構えていた。
「お前ら、サリエル様のとこ、行けない!」
「デカ!」
ホムラが天井まで届きそうな巨体を見上げる。
その巨体はまさに山そのもの。手には刃渡り数メートルはあろうかという巨大な肉切り包丁を携えている。
「なんだこりゃ!」
ハーベルも絶句する。
「俺、ブッチャ!お前ら、ここで死ぬ!」
ブッチャが振り下ろした包丁は、轟音とともに床を深く穿った。
間抜けにも、彼は包丁を引き抜こうと必死にもがいている。
「よし、今だ!」
ハーベルの号令が響く。
「行くでござる、ゼイオロス!」
ホムラの召喚により、業火に包まれた炎の大精霊エンフリードがブッチャの背後に現れ、灼熱の炎をまき散らす。
フウマの召喚した風の大精霊ゼイオロスは、その風で炎を増幅させ、ブッチャの視界を奪い、動きを制限した。
「私のリヴセレナとは相性が悪いからここでは、回復に徹しましょう、ハーベル!」
リヴァイアが【宝杖:アクアミスト】を構え、治癒の構えに入る。
彼女の「水回復」のスキルが、もしもの時に備える。
「了解!」
ハーベルはすかさず、ブッチャの行動を「解析」する。
精霊たちの連携攻撃に、さすがのブッチャもたじろぐ。
「お前ら、鬱陶しい!」
ヴォオオオオーーーー!!
突如、ブッチャは周囲の音をすべてかき消すような絶叫を上げた。
その瞬間、空間が凍りついたかのような錯覚に陥る。
次の瞬間、ブッチャの全身がみるみるうちに赤黒く変色し始めた。周囲の血溜まりから怨嗟の声が聞こえるかのような、禍々しいオーラが膨れ上がる。
「みんな離れろ!」
ハーベルが叫ぶ。彼の「解析」スキルが、ブッチャの異変を即座に感知していた。
「何か嫌な感じがするでござる!」
フウマの「弱点看破」も、ブッチャの変容が単なる強化ではないことを告げていた。
全員が素早く距離を取ると、ブッチャから真っ赤なオーラが噴出し、大精霊たちを瞬く間に消し去った。
それはまるで、彼の「破壊」のオーラが、その体内で暴走しているかのようだった。
「危なかった!」
怒り狂ったブッチャは、刃渡り何メートルもある巨大な包丁を構え直すと信じられないほどの勢いで突進してきた。
彼の「熱量変換」で肉体が強化されているのが見て取れる。
「テラガイア!」
タオが叫ぶと、【神器:アースブレイカー】を大地に突き刺し、巨大な土の精霊、テラガイアが出現する。
タオの「大地創造」と「物質硬化」のスキルが、テラガイアをより強固な存在へと昇華させていた。
ドゥーーーーン! ガシッ!
テラガイアは両腕を広げ、ブッチャの猛烈な突進を受け止めた。激しい衝突音が響き渡る。
「タオ!」
リヴァイアが水晶球深海の瞳を掲げ、タオの消耗した魔力を回復させた。
「間に合ってよかった…。」
タオは大盾ガイアウォールを構え直し、さらに防御を固める。
「挑発!」
ブッチャの意識を自身に引きつけ、仲間を守りに入る。
「今のうちに止めを!」
ハーベルは叫ぶ。
「分かった!全員で攻撃だ!」
ホムラが応じる。
ホムラは、その身に炎を纏い、極限体術でブッチャの懐に飛び込み、彼の【魔手:炎帝の剛腕】から放たれる「爆炎」が、ブッチャの皮膚を焼き尽くす。
フウマは【神刀:朧月】を抜き放ち、極限武器術でブッチャの巨体を翻弄する。
「神速!」
音速移動でブッチャの視界から消え、一瞬で背後に回り込むと、「風刃」を込めた斬撃を連発し、彼の影属性忍術が、ブッチャの錯覚を誘う。
リヴァイアは、水流を操り、ブッチャの動きをさらに制限する。彼女は詠唱を開始する。
「水の大精霊に感謝します。深海の呼び声よ、我が魂に応えよ!無限の圧力、閉ざされし領域、万物を飲み込む静謐なる牢獄よ、この現世に顕現せよ!
原罪魔法 No.14!アクア・ディメンション!」
周囲の血を清浄な水へと変換し、ブッチャの足元を強烈な水圧でその動きを完全に封じ込める。
そして、ハーベルは【神器:シックスセンス】と【神器:金剛の短剣】を同時に二刀流で構え、光の力を凝縮させる。
彼の全身に神々しいオーラが渦巻くと、
「光と闇の大精霊に感謝します。終焉の蝕よ、我が魂に応えよ!天地を覆う災厄、万物を操る絶対の闇よ、この現世に顕現せよ!
原罪魔法 No.20!アポカリプス・エクリプス!」
禁呪級魔法の真名が紡がれる。
それは、破壊と消滅を司る究極の力。ブッチャの頭上に、光と闇の相反する力を融合させ、天地を覆うほどの巨大な日食を発生させた。
漆黒の波動がブッチャの巨体を包み込み、光さえも飲み込むような闇の奔流が彼を蝕んでいく。
ブッチャの巨体は、闇の奔流の中で徐々に溶解し、断末魔の叫びも上げられぬまま、その場に崩れ落ちた。
彼の体が完全に消滅すると、拷問部屋に漂っていた血の臭いと不穏な空気が、まるで浄化されたかのように薄れていく。
「やったのか…?」
ホムラが息を切らしながら呟いた。
ハーベルは静かにうなずき、深淵な瞳を宮殿のさらに奥へと向けた。
次回 知将ブロッサムとの遭遇:究極の頭脳戦
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頑張って続きを書いちゃいます!




