絶望の幻影:仲間を信じる心
「フフフ……。ハハハ……。」
不気味な笑い声がハーベルの頭上で響き渡る。
「お前が、光のソーサリーエレメントの保持者か…。」
おぞましい程の恐怖を与える声が響いた。
「お前が…サリエル…。」
ハーベルは苦しそうに立ち上がると、空に浮かぶサリエルを見上げていた。
「なんんと脆弱な生き物…。まさに虫けら…。」
サリエルはハーベルを見下しながら吐き捨てるように言った。
「くうー!」
ハーベルは片ひざをついて倒れそうになる身体を辛うじて体勢を立て直した。
「この宮殿に入ることさえできない虫けらに、私を倒せるとでも…?」
「お前は俺が…絶対に…倒す!」
ハーベルの『意思』の力で光の魔力が全身に甦ってくるのが分かる。
「どこにそんな力が…。」
サリエルは少しだけ驚いた様子を見せる。
「ああ…。そういえば、あなたのお仲間たちがどうなったか…。気になりませんか?」
サリエルは話をそらすように問いかける。
「はあ…?」
ハーベルは眉間にシワを寄せる。
「まあ、ご覧ください!」
サリエルがそう言って、「パチンッ」と指を鳴らした。
すると、ハーベルの目の前に現れた映像には、信じられない光景が映し出されていた。
そこには、彼の仲間たちがいた。
つい先ほどまで戦っていたはずの、頼れる戦士たち。しかし、彼らは今、無残な姿で地面に横たわっている。
カザキは、全身を黒い粘液に覆われ、まるで異形の肉塊と化していた。
フレアは、身体のあちこちが不自然にねじ曲がり、生きたまま拷問されたかのような痕跡を残している。
そして、最もハーベルの心を抉ったのは、ネルたちが、生気のない瞳で虚空を見つめていることだった。
まるで、生きた屍のようだった…。
その瞳には、かつて宿っていたはずの希望も、勇気も、微塵も残っていない。ただ、言いようのない恐怖と絶望だけが、その中に澱んでいるように見えた。
「フフフ……。ハハハ……。」
サリエルの不気味な笑い声が、再びハーベルの頭上で響き渡る。その声は、映像に映し出された地獄絵図と重なり、ハーベルの心に深い絶望を刻みつける。
「どうです? あなたの愛すべき仲間たちは、私の手によってこのように変わり果てました。光のソーサリーエレメントの保持者たるあなたも、やがては彼らと同じ運命を辿るでしょう。」
サリエルの声には、嘲りとは異なる、純粋な愉悦が滲み出ていた。まるで、目の前の絶望が、彼にとって至高の芸術であるかのように。
ハーベルは、怒りに震える拳を握りしめた。
脳裏には、仲間たちと交わした言葉や、共に過ごした時間が鮮明に蘇る。彼らの笑顔、彼らの声、そして彼らと共に抱いた希望。それらすべてが、今、サリエルによって踏みにじられている。
「貴様ぁあああああああああああああああああああ!!!」
ハーベルの叫びが森中に響き渡る。
その声には、悲しみと絶望、そして何よりも、サリエルに対する激しい怒りが込められていた。身体の奥底から、これまで感じたことのないほどの強大な光の魔力が湧き上がってくる。
「ハーベル…。ハーベル!」
その時、脳裏に響いたのは、リーフィア師匠の優しくも力強い声だった。
「師匠…。リーフィア師匠!」
ハーベルの表情が一気に明るさを取り戻し、生気が漲ってくるようだった。
「ハーベル…。よく考えなさい! あれは、本当に…あなたの仲間たちでしたか?」
リーフィア師匠の声が優しくハーベルに呼び掛ける。
「怒りに任せてはいけません…。自分の仲間を信じて…!」
「師匠……。」
ハーベルが天を仰ぐと、一筋の涙が頬を伝った。
しかし、それは絶望の涙ではない。仲間への信頼と、師匠の言葉への感謝が入り混じった、新たな決意の涙だった。
次回 五色の光:ソーサリー・エレメンツ
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