魂のせめぎ合い:プライマル・ナンバーの覚醒
ハーベルが、サリエルの宮殿の近くへ降り立つと、突然凄まじいプレッシャーに押し潰されそうになる。
ビビビリビリ…ビリビリ…ビリ…ビリ…。
全身に電撃が走ったように、身体が地面に押し付けられ倒れ込んだ。
「くそ…。なんだ……この見えない力は……。」
ハーベルは顔を上げようとするが、まるで巨大な手のひらで押さえつけられているかのように、体が動かない。
そのプレッシャーは、単なる魔力の重圧とは異なっていた。
それは、この宮殿そのものが持つ、根源的な『意志』のようだった。
「来るか、人間…。」
どこからともなく、冷たく、そして嘲るような声がハーベルの脳裏に直接響き渡る。
それはサリエルの声ではないようだった。もっと古く、もっと深く、この地に根ざした何かの声だ。
「この宮殿は、ただの建物ではない。我々の魂と、この地に流された血が凝り固まった、生きる牢獄だ。」
声は続ける。
「お前が踏み入れたその瞬間から、お前の魔力は吸い尽くされ、肉体は縛られ、魂は迷い込む。お前は、ここで永遠に、我らの糧となるのだ…。」
ハーベルの周りの雪が、微かに震え始める。
地面から、黒い靄のようなものが立ち上り、彼の足元に絡みつき始めた。それは、この宮殿が、彼を捕らえるためにその牙を剥き出しにしている証拠だった。
「まさか…宮殿自体が、意思を持った結界だとでも言うのか…!?」
ハーベルは、絶望的な状況に追い込まれたことを悟った。
彼は、サリエルとの直接対決を覚悟していたが、この宮殿そのものが、彼を迎え撃つ最初の壁になるとは予想だにしていなかったのだ。
背後からは、吸い尽くされる魔力と、絡みつく闇の感覚。このままでは、サリエルの元に辿り着くどころか、ここで意識を失ってしまう。
しかし、その時、ハーベルの脳裏に、仲間たちの顔が鮮やかに浮かんだ。カザキの信頼、フレアの力強い笑み、アクシアの凛とした瞳、クラリッサの確固たる決意、そして、ネルの不安と愛が入り混じった眼差し。
「諦めるものか…!」
ハーベルの全身に、再び光の魔力が駆け巡る。それは、この宮殿の闇のプレッシャーに抗うかのように、彼の体から放射され始めた。
彼の掌に浮かび上がった、あの光の紋様が、今、強く、力強く輝き出す。
「この光は、お前たち闇には決して奪えない…!俺は、絶対に、ここを突破する!」
ハーベルは、震える体を無理やり起こそうとする。
彼の内に宿る【プライマル・ナンバー】の力が、この宮殿の『意志』と、激しく衝突し始めたのだ。これは、単なる魔法の攻防ではない。光と闇、生と死、そして意志と絶望の、根源的なせめぎ合いだった。
「フフフ……。ハハハ……。」
不気味な笑い声がハーベルの頭上で響き渡る。
次回 絶望の幻影:仲間を信じる心
続きの気になった方は、
ぜひともブックマークをお願いいたします。
リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。
頑張って続きを書いちゃいます!




