血塗られた部屋と魔法陣の呪縛
薄暗い部屋は不気味な雰囲気に包まれていた。
その中央付近には、この場所には似つかわしくないほど立派な机がぽつんと置かれており、そこだけが煌々と灯りに照らされている。
一方で、周囲には用途不明な器具が無造作に散らばっており、まるで拷問にでも使われそうな異様なものばかりだった。床には黒ずんだシミが広がり、乾ききった血痕のように見えた。
「さあ、左手を。」
黒いフードの男が低い声で促すと、レオンは震えながらゆっくりと左手を差し出した。
男は無造作にその手を強引に引き寄せ、自分の右手に刻まれた魔法陣を重ね合わせた。
次の瞬間、二つの魔法陣が反応し合い、深紅の鈍い光を放ちながら輝き始めた。
「うわあっ、痛い…お前、何をした!」
激痛に顔を歪めたレオンは、血まみれになった左手を押さえ、床に崩れ落ちた。
「チッ、やはり大した魔力もスキルも持っていない…役立たずめ。」
男は苛立たしげに舌打ちし、転がるレオンを冷たく見下ろした。
「余計な手間を取らせおって…。」
愚痴をこぼしながら、男は野良犬でも蹴飛ばすかのようにレオンの身体を足蹴にした。
力なく転がるレオンの身体は、血だらけの床に棒のように横たわった。その目は焦点を失い、首は不自然に曲がったままだった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
翌朝、学院は異様な雰囲気に包まれていた。
生徒たちは、恐ろしい噂話で持ちきりだった。
「聞いたか?裏手のごみ捨て場で…。」
「ああ、死体だって…。男の子だったらしいぞ。」
「ひどいことになってたんだって…。」
「やだ、怖い!一人で帰れないよ…。」
そんな話が尾ひれをつけて広まり、教室中がざわついていた。
その日もいつものようにハーベルはレオンを迎えにレオンの家を訪れた。
「おはようございます!レオン、もう準備できてますか?」
ハーベルが明るく挨拶をすると、レオンの母親はどこか落ち着かない様子で応えた。
「ああ、ハーベル…。ごめんなさいね、今日はレオン、いないの。」
「いない?何かありましたか?」
ハーベルは不審に思ったが、これ以上聞くのは迷惑だと判断し、そのまま学院へと急いだ。
学院に着くと、アンナが青ざめた顔で駆け寄ってきた。
「ハーベル…レオンが…!」
息を切らしながら、アンナは涙をこぼしそうな顔で口を開いた。
「どうしたの、レオンが何かあったのか?」
ハーベルはアンナの肩を優しく掴み、真剣な眼差しで問いただした。
「レオンの…死体が…裏のごみ捨て場に…。」
その言葉を聞いた瞬間、ハーベルは耳を疑った。
「嘘だ!レオンが死ぬわけない!昨日まで一緒に遊んでたんだぞ!」
感情が爆発しそうになり、ハーベルは大声を上げた。
「アンナ…俺は、この目で確認するまで信じない!」
そう言い放つと、ハーベルは校舎の裏へ向かおうとした。しかし、そのときタイミング悪くアリーナ先生がやってきた。
「はーい、みんな静かに!」
先生のいつになく大きな声が教室に響き渡る。
「みなさん、もう知っていると思いますが、大変な事件が起こりました。今日は休校になります。速やかに下校してください。」
そう言い終えると、アリーナ先生は急ぎ足で去っていった。
生徒たちの反応は様々だった。
「やった、休校だ!」
「嘘だろ、怖すぎる…。」
「一緒に帰ろう?」
「うん、絶対一人じゃ無理。」
ざわつく教室で、ハーベルはただ黙って決意を固めていた。
「ハーベル、帰ろう?」
アンナが声をかけるが、ハーベルは首を振る。
「ごめん、用事があるんだ。」
そう言って彼はアンナの言葉を振り切り、走り出した。
次回 魔法警察の規制線の向こうに
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