夜明けの攻防:無垢なる刃
しかし、その夜の出来事は、これだけでは終わらなかった。
「ハーベル、起きろ!まただ!」
朝が来る前に、カザキの緊迫した声が家の中に響き渡った。ハーベルが目を覚ますと、すでに村の女性たちが集まって来ていた。彼女たちの顔には、困惑と疲労が色濃く浮かんでいる。
「どうしたんだ?」
ハーベルが問いかけると、クラリッサが震える声で答えた。
「村の…子供たちが…また消えたのよ…!」
「何だと!?」
ハーベルは驚愕する。
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あのガーゴイルが悪魔の手先で、村長が悪魔に操られていたのは理解できる。だが、子供たちがカザキさんによって救出されたはずではなかったのか?
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「カザキさん、どういうことですか?」
ハーベルがカザキに詰め寄ると、カザキは気まずそうに目を逸らした。
「いや、その…オレが縄を投げたのは、確かに子供たちの縄なんだが、子供たち本人は…その場にはいなくてな…。」
カザキは視線を泳がせる。
どうやら、彼は子供たちの安否を確認する前に、早とちりして縄を投げつけてしまったようだった。
「はぁ…。」
ハーベルは深い溜息をついた。
昨晩のガーゴイルとの戦いは、彼らをおびき出すための陽動に過ぎなかったのだ。本当の目的は、別の場所で子供たちを連れ去ることだったのだろう。
その時、家の外から、微かな声が聞こえてきた。
「…助けて…。」
それは、子供たちの声だ。しかし、どこか異様な、響きを持っていた。
ノアールが窓から外を覗くと、驚愕に目を見開いた。
「ハーベル!あれを見て!」
全員が窓の外を見た。
そこには、村の子供たちがぞろぞろと集まってきていた。
しかし、彼らの目は虚ろで、まるで操られているかのように一点を見つめている。
そして、その背後には、闇に溶け込むようなローブを纏った、見慣れない人影が立っていた。
「くくく…これで準備は整った。愚かな人間どもめ…。」
ローブの人物が不気味に笑うと、子供たちは一斉に、ハーベルたちの家に向かって歩き出した。その手には、それぞれ小さなナイフが握られている。
「何なんだ、一体!?」
フレアが驚愕の声を上げた。
「これは…闇魔法…。ソウル・コンサンプションという精神を掌握し、存在そのものを浸食する、魔法よ…!」
クラリッサが顔色を変えて呟いた。彼女の言葉に、一同に緊張が走る。
「くそっ、子供たちを傷つけるわけにはいかないが…!」
カザキが剣を構える。
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しかし、相手は無垢な子供たちだ。
下手に攻撃すれば、取り返しのつかないことになる。
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ハーベルは、かつてないほどの怒りと焦りを覚えた。
サリエルは、ただ力でねじ伏せるだけでなく、心の隙間を突き、最も大切なものを盾にするような、卑劣な手を使う悪魔だ。
「みんな、落ち着け!子供たちを傷つけずに、あのローブの男を止めるんだ!」
ハーベルの言葉に、仲間たちは決意の表情で頷いた。
夜明け前の静寂を破り、新たな戦いが始まろうとしていた。
それは、肉体的な強さだけでなく、精神的な強さが試される、過酷な戦いとなる予感がしていた。
次回 夜明けの攻防:魂の解放者
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