結集の旅路:始まりの知恵
「このバスっていう乗り物、快適だね!」
ネルが嬉しそうにハーベルに抱きつく。
「温度管理もできているから、寒い場所も暑い場所にも行けるよ!」
ハーベルは少し自慢げに答える。
ハーベルは、バスを運転しながらみんなの様子にも注意を払っていた。
雪に覆われたヴォレアリスト王国の北端、エンバーグロウ・クレスト山脈の麓にある、ヴェルエ村へと到着していた。
「みんな、毛皮を着込んで寒そうだね…。」
クラリッサは外を眺めて「ブルッ…。」とした。
ハーベルたちは、村から少し離れた場所を借りることを了承してもらうために村長のもとへとやって来ていた。
「村長、ハーベルと申します。」
ハーベルは深々と頭を下げる。
「おお、こんな遠くまでよく来られたの~。」
村長はにこやかにも見えるが、どこかぎこちないようにも思えた。
「はい、エンバーグロウ・クレスト山脈に少し用事がありまして、村の近くの土地をお貸しいただけないでしょうか?」
「おお、それならウチに泊まっていきなされ、部屋数だけは多いでの、遠慮せんでええぞい?」
「それは、助かります…。」
ハーベルは苦笑しながらも頭を下げた。
「それにしても、そんな薄着で寒くないのかい?」
村長は不思議そうにハーベルの服装を指差した。
「ええ、この魔道具のおかげで寒くはありません…。」
ハーベルは、首からかけられた宝石を「キラリ…。」と見せた。
「ほお、ええ道具をお持ちじゃな…。うらやましい…。」
村長は眼を輝かせながら、宝石を見つめていた。
「では、お言葉に甘えてお部屋をお借りします…。」
ハーベルは成り行きで、村長の屋敷へ泊まることになってしまった。
「みんな、すまない…。村長の屋敷へ泊まることになってしまった…。」
ハーベルが申し訳なさそうに言う。
「まあ、こんな機会ないから、ぜひ泊まらせていただきましょうよ!」
クラリッサが少し楽しそうに言った。
「そうですわね!」
アクシアも何かを期待している様子だった。
「でも、悪魔の宮殿の近くだ…。用心をしておくのに越したことはないよ!」
ノアールがみんなに注意を促した。
「そうだ、ノアールの言う通りだぞ!」
カザキも頷いていた。
その晩は、村長の屋敷でおもてなしにパーティーを催してくれ、みんなは上機嫌で眠りについた。
深夜2時…。
ハーベルが眠っている部屋のドアをゆっくりと開ける音が静かに響く。
キーーー…。
そこには、怪しい影がぬーっと忍び寄った。
次回 夜の密会:悪魔の嘲笑
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