冬の旅路:空飛ぶ箱と命のネックレス
次の日の朝、ハーベルが早起きをして何やら作り始めていた。
「ハーベル、おはよう!」
ネルがハーベルに朝の挨拶をすると、
「ああ、おはよう!ネル、早いね!」
「ハーベルこそ、何を作ってるの?」
ネルがハーベルの作っている物を不思議そうに眺めながら言った。
「ああ、みんなで一緒に移動できるように、バスを作っているんだよ!」
「バスって何?」
「うーん、馬車の大きいのみたいな感じだけど、馬も車輪も必要ないけどね…。」
「へえ…。良く分からないや…。てへへ…。」
ネルは可愛く舌をだして笑った。
「フフ…。」
ハーベルはその可愛さについ笑みが溢れる。
「さあ、できたよ!」
「大きな箱みたいね…。でも、中は暖かい!?椅子もたくさんあってこれならみんな一緒に乗れそうだね!でも、車輪も無いのに、どうやって移動するの?」
ネルが可愛く小首をかしげる。
「うん、空飛ぶホウキや絨毯と同じ原理だよ!」
「なるほど、飛んで移動するのか…。」
ネルは自分では絶対に考えつかないアイデアに驚きを隠しきれなかった。
そこへみんなも起きてきた。
ネルが急いで朝食の準備を始めていたところにクラリッサとアクシアも手伝ってくれていた。
食事をしながら、
「みんなに俺からプレゼントがあるんだ!」
ハーベルがテーブルの上に並べていく。
「ネックレス?」
クラリッサが嬉しそうに一つ手に取った。
「もちろん、ただのネックレスじゃないよな?」
フレアも嬉しそうに首にかける。
「うん、寒いところは初めて出し、戦いにも支障がありそうだから、自分の周りの温度を一定にする魔道具を考えたんだよ!」
「そんなことできるのか?」
カザキがネックレスを見ながら不思議そうに呟く。
「これを身につけている人の周りは、薄い空気の層に覆われていて、外気を完全に遮断している。にも関わらず空気は常に循環しているので酸素不足になることもありません…。」
「酸素って何だ?」
カザキがまた不思議そうに尋ねる。
「うーん、水の中だと息ができないですよね?」
「ああ、そうだな…。」
「それは、水の中では空気がないからです。」
「それくらい分かる…。」
「実は、空気の中に酸素というものがあって、実際は酸素があれば、水の中でも息ができるんですよ!」
「嘘つけ!無理だろ!」
カザキがバカにするように言った。
「実際に、アクシアたち人魚族は水の中でも息ができますよね?」
「うーん…。」
「実は、人魚は水の中にある少ない酸素を集めることによって息ができるようになった種族なんですよ!」
「ええ、そうだったのですわね…。」
アクシアも知らない事実だったようだ。
「つまり、酸素が供給できれば、その周りに空気が無くても息ができるんですよ!」
「うーん…。分かったような分からないような…。」
カザキは頭が混乱している様子だった。
「まあ、詳しいことは分からないけど…。これがあれば外の環境に関係なく温度も一定で息もできるってことだろ?」
フレアがあっさりと解決してしまった。
「そういうことで…。」
ハーベルがそう言って残りのネックレスを配った。
ちなみに、フランとノアールには首輪タイプの物を作ってあげた。元々、ぬいぐるみだから要らない気もしたが、気持ちの問題だということにしておいた。
「では、準備ができ次第出発する!」
ハーベルは全員に気合いを入れた。
みんなもこれから始まる死闘に真剣な眼差しを向けていた。
次回 結集の旅路:始まりの知恵
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