漆黒の覚醒~サリエルへ向かう冷血な道~
レオンたちはエレメンタルスパイアの頂上、黒いバラが咲き誇るエレメンタル・サンクタムに到達した。トリガーが闇のソーサリーエレメントを探し回る中、ミリアは中央の噴水近くに佇む石碑を見つけた。
しかし、なぜかその横には、すでにレオンの姿があった。
彼は、以前に出会った闇の精霊ルナシェイドと、なにやら話し込んでいる様子だった。
「レオン…。」
ミリアが仲間たちを連れて噴水までやってくると、その光景に違和感を覚えた。
「皆さん、よくぞここまで来ました!」
ルナシェイドは、ミリアたちに気づくと、丁寧に挨拶をしようとした。その声には、どこか満足げな響きがあった。
「おい…ルナシェイド!そんなのいいからさっさと、契約だ!」
しかし、レオンはルナシェイドの言葉を遮り、苛立ちを隠せない様子で急かすように言った。彼の声には、焦燥と、目的達成への執着が混じっていた。
「ちょっとくらい私の話に付き合いなさいよ!」
ルナシェイドは、少し不満げな声を上げた。
「うるさい!」
レオンは一蹴し、ルナシェイドの言葉を完全に無視した。彼の態度は、以前にも増して冷徹になっていた。
「ちょっと、レオンどういうこと?」
ミリアは、レオンの態度に困惑し、不思議そうに尋ねた。彼女の顔には、疑問と不安の色が浮かんでいる。
「分かったわよ…。はい、契約成立!」
ルナシェイドは、呆れたようにそう言うと、あっさりと漆黒の闇のソーサリーエレメントをレオンに手渡してしまった。
その光景に、ミリアたちはただ唖然とするばかりだった。
「おい!レオン聞いてるのか!」
トリガーが、不満そうにレオンの腕を掴み、怒りをぶつけようとした。
「ああ、聞いてるよ!」
レオンが振り向くと、彼の体からは、見る者を圧倒する凄まじい闇のオーラが吹き出していた。その強大な魔力は、近づくことすら許さないほどの圧力で、周囲の空気を歪ませる。
「これが、禁忌の力!」
レオンは、その有り余る魔力と、体中に沸き上がる強大な力に、興奮を隠しきれない様子だった。彼の顔には、狂気にも似た歓喜の表情が浮かんでいた。
「レオン…。」
ミリアは、その変貌したレオンの姿に、悲しそうに呟いた。彼女の瞳には、かつての仲間への思いと、目の前の現実との間で揺れ動く感情が交錯していた。
「レオン!説明しろ!」
アルカが、その憤りからレオンに掴みかかろうとした。しかし、彼女がレオンに触れる前に、彼の放つ闇のオーラだけで軽々と押し返された。
「アルカ…。」
サクナは、涙を浮かべて優しくアルカを抱き起こした。
「レオン…。嘘だよね?」
リセは、信じられないという顔で唇を噛みしめた。彼女の言葉には、レオンが自分たちを裏切ったという事実を受け入れたくないという、切実な願いが込められていた。
「いや、本当さ!僕は、この力を手に入れるためにおまえたちを利用したのさ!」
レオンは、冷徹な表情で、吐き捨てるように言った。その言葉は、彼らの心に深く突き刺さった。
「だから、説明しろって言ってるだろ!」
トリガーは、怒りのあまり手に持っていた機関銃をレオンに突きつけ、銃口を向けた。
「ハハハ…。そんなオモチャでは、もう僕には傷一つつけられないけどね!」
レオンは、トリガーの行動を鼻で笑い、バカにしたように言い放った。彼の言葉は、トリガーの怒りをさらに煽る。
ドダダダダ…。ドドドダダダダ…。
トリガーは、怒りの感情を込めてレオンめがけて機関銃をぶちかました。無数の弾丸が闇のオーラを纏うレオンに降り注ぎ、彼の背後にある噴水ごと粉々に破壊していった。
「フフフ…。だから無駄だって言っているだろ?」
しかし、レオンは眉一つ動かさずに、涼しい顔でその場に佇んでいた。彼の体には、銃弾の痕一つ付いていない。闇のソーサリーエレメントの力は、彼を完全に守っていた。
「レオン…。」
ミリアは、その光景を目の当たりにしながらも、どこか諦めたように、そして少し微笑んだ。それは、レオンの変貌を受け入れたかのような、複雑な表情だった。
「じゃあ、おまえたちとはここでおさらばだ!元気でな!僕は、サリエルに用事があるから…。」
その言葉を最後に、レオンは闇のオーラに包まれると、一瞬でその場から消えた。彼の姿は、まるで最初から存在しなかったかのように、跡形もなく消え去った。
五人は、レオンの裏切りと、その圧倒的な力、そして突然の消失に、ただ唖然として立ち尽くしていた。
「レオン…。騙していたの?」
リセが、震える声で呟いた。彼女の瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「絶対に殺す!」
トリガーは、怒りのあまり手から血がにじむほど拳を握りしめた。彼の顔は、憎悪に歪んでいた。
「これからどうすれば…。」
サクナが途方に暮れたように呟いた。彼らの心には、絶望と虚無感が広がっていた。
「ああ、結局私たちは使い捨てか…。」
アルカは、苛立ちを隠せず、地面の小石を蹴飛ばした。彼女の言葉には、裏切られたことへの悔しさがにじみ出ていた。
「ルナシェイド…。他のソーサリーエレメントはどうなるの?」
ミリアだけは、冷静さを保ち、闇の精霊ルナシェイドに尋ねた。彼女の頭には、まだ別の目的が残っていた。
「ああ、他の属性のソーサリーエレメントももちろんあるけど、あなたたちでは、資格がないから無理ね!」
ルナシェイドは、冷たく言い放った。その言葉は、彼らに残されたわずかな希望をも打ち砕くものだった。
「資格…。ってなんだよ!」
トリガーが、その言葉に突っかかる。彼の怒りは、まだ収まらない。
「今話しても意味がないから…。私もやることがあるから消えるわね!」
ルナシェイドもそう言って、あっさりとその場から消えてしまった。彼女は、もはや彼らと関わることに興味がないようだった。
「何だよそれ…。」
「うう…。」
「チェっ………。」
残された五人は、不満と絶望の声を上げた。彼らは、レオンの裏切り、そしてルナシェイドの冷たい言葉に、深く傷ついていた。
「ここにいても仕方がないから一度アジトへ戻りましょう」
ミリアが、沈痛な面持ちで提案した。このままここにいても、何も解決しないことを理解していた。
「空間魔法陣もないから歩きかよ…。」
「ああ、地味にだるい…。」
「アルカ…。疲れたよ…。」
「ふーー。」
結局、五人は不満を漏らしながらも、重い足取りでアジトである魔法学院高等部の旧校舎へと戻ってきてしまっていた。
彼らの心には、レオンへの複雑な感情と、今後の自分たちの行く末への不安が渦巻いていた。
次回 シーズン7【悪魔男爵激闘編】(サリエル戦)
双極の邂逅:雪原に交錯する光と闇
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