終焉を告げる咆哮~師匠への誓い~
光り輝く中央の階段を一段一段登っていくと、一行の目の前には、息をのむほどに真っ青な空が広がる、まるで絵画のような庭園が現れた。
色とりどりの花々が咲き誇り、鳥のさえずりが心地よく響き渡るその場所は、まさに楽園と呼ぶにふさわしかった。
「ここが、エレメンタル・サンクタム…。」
ハーベルは、その神聖な雰囲気に圧倒され、感慨深げに呟いた。彼の声には、たどり着いたことへの安堵と、この場所に秘められた謎への期待が入り混じっていた。
「そうだ…。中央の噴水の前に置かれた石板を探せ!」
手のひらサイズのバルトロスが、ハーベルの肩から助言をくれた。彼の言葉に促されるように、一行は庭園の中央へと歩を進める。
「ハーベル、これじゃない!?」
先に進んでいたネルが、噴水の前に置かれた古びた石板を見つけ、興奮した声で手招きをした。
一行が石板の前に着くと、突如として、優しい声がハーベルの耳元で響いた。
「ハーベル……。ハーベル……。」
それは、聞き慣れた、懐かしい声。ハーベルの心の奥底に深く刻み込まれた、愛しい師匠の声だった。
彼の目からは、自然と熱い涙が溢れ出した。
「し…師匠?」
ハーベルは、信じられないというように、しかし希望に満ちた声で尋ねた。目から溢れる涙は止まらない。
「よくここまで辿り着いてくれました…。」
その声は、ハーベルの問いに応えるように優しく語りかけた。
「師匠……。なんですか!?」
ハーベルは、悲しげに、そして切迫した面持ちで尋ねる。師匠に何が起こったのか、その真実を知りたいと願っていた。
「いいえ、私は光の大精霊であるリーフィアと言います…。」
その言葉に、ハーベルは困惑した。
その時、彼の目の前に、可愛らしい金髪の妖精がふわりと現れた。
「リーフィア?師匠と同じ名前?」
「はい!」
妖精のリーフィアは、そう言って微笑んだ。
光の粒を弾きながら、優雅に羽ばたくその姿は、目にするもの全てを幸福な気持ちにさせるようだった。その場の全員が、その神秘的な美しさに魅了された。
ただ一人を除いては…。
ハーベルだけが、リーフィアの姿を見た瞬間、すべてを悟ってしまった。
師匠のリーフィアと、目の前の大精霊のリーフィア。
同じ名前、そしてこの場所。彼の頭の中で、点と点が繋がり、一つの残酷な真実が浮かび上がったのだ。
涙が、止めどなく彼の頬を伝い落ちる。
幸福感に満ちた周囲の空気とは裏腹に、ハーベルの心には激しい怒りが渦巻いていた。
「お前、リーフィア師匠をどこにやった!」
ハーベルは、怒りに満ちた形相で、妖精のリーフィアに詰め寄った。その声には、深い悲しみと裏切られた怒りが混じり合っていた。
「人間のリーフィアは、全てを忘れて故郷の家へと戻りました。」
妖精のリーフィアは、申し訳なさそうに、そしてどこか悲しげに呟いた。その言葉は、ハーベルの心をさらに深くえぐった。
「そうか…。お前は、師匠を利用して俺をここへ呼び寄せたんだろう!」
怒りが、ハーベルの体内で沸々と沸き上がるのが分かった。師匠との温かい思い出が、全て仕組まれたものだったのかと思うと、胸が張り裂けそうだった。
「待って、ハーベル!」
ネルが、ハーベルの激高を止めようと声をかける。
「うるさい!師匠との俺の思いでは全部ウソなのか!」
ハーベルは、荒々しく叫んだ。彼の目には、絶望と怒り以外の何も映っていなかった。
「いいえ、違うの…。でも、今のリーフィアは何も覚えてないのよ…。あなたと旅をしたのは私なのだから…。」
妖精のリーフィアは、必死に訴えかけた。しかし、ハーベルの耳には届かない。
「くそ!師匠を返せ!」
ハーベルは、涙に暮れて床を叩きながら、その感情を爆発させた。
「ハーベル、聞いて!このソーサリーエレメントを手にすれば、凄まじい力を手に入れられるのよ!」
妖精のリーフィアは、状況を変えようと、ソーサリーエレメントの力を説き始めた。
「その力で師匠を元の世界へ戻せるのか?」
ハーベルの目には、一瞬の希望が宿った。
「いいえ、そのような力はないわ…。残念だけど…。」
しかし、妖精のリーフィアの言葉は、その希望を打ち砕いた。
「それを知りながら、師匠の思いを利用したのか!」
ハーベルは、鬼の形相でリーフィアに突っかかった。彼の心は、純粋な怒りで満たされていた。
「ハーベル…。」
ネルが優しく肩を抱いた。その温かさが、ハーベルの心にわずかながら安らぎを与える。
「話を…。」
カザキもまた、ハーベルの気持ちを察しつつ、あえて冷静に諭した。
「くそ!」
ハーベルは頑なに話を聞こうとしなかったが、カザキの言葉に、ゆっくりと呼吸を整える。
「ハーベル、話ぐらいは聞け!」
カザキの強い口調に、ハーベルはハッとした。
「すいません…。カザキさん…。」
ハーベルは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「皆さん、ありがとう…。」
妖精のリーフィアは、ハーベルが落ち着いたのを見て、大きく息をついて話し始めた。
リーフィアの話によると、師匠のリーフィアが「転生者」であること、そして妖精のリーフィアとの「波長がぴったり」だったことが、彼女が選ばれた理由だったそうだ。名前が同じなのは、まったくの偶然だったという。
実際は、様々な「複雑な事情」があったというが、究極的には「悪魔サリエルを討伐するため」、ソーサリーエレメントに選ばれし者を探し出す必要があったのだという。
だが、事はそう単純ではなかった。ソーサリーエレメントを手にするには、非常に厳しい条件があった。
まず、「転生者であること」。
次に、「一つの属性に秀でている者」。
そして、その属性の「第10究極魔法の召喚を使えること」だった。
この途方もない条件を、たまたま全て満たしていたのがハーベルだったのだ。
そして、最終的に大精霊であるリーフィアを召喚し、その力を使いこなせるように「育て上げる必要があった」という訳だった。ハーベルと師匠のリーフィアの旅は、この計画のために仕組まれたものだったのだ。
「結局、ソーサリーエレメントを手に入れさせて、サリエルと戦わせたいだけなのか…。」
ハーベルの言葉には、諦めと、再び込み上げてくる怒りが混じっていた。
「このままでは、サリエルが人間界を破壊し尽くして魔界と化してしまう!」
妖精のリーフィアは、切羽詰まった声で訴えた。
「なら、自分達で戦えばいいだろ!」
ハーベルの問いかけは、当然の疑問だった。
「残念ながら、天界の者は人間界への干渉を禁じられているのです。人間界の問題は人間で解決するしかないのです…。」
妖精のリーフィアは、申し訳なさそうに、しかし明確な声で呟いた。その言葉は、天界の掟の厳しさを物語っていた。
「神でさえ、ソーサリーエレメントをこの地に授けるのが精一杯の譲歩なのです…。」
「あとは、自分達でなんとかしないと、人間界は滅びます…。」
その言葉に、ハーベルの心に再び決意が宿った。
「そうはさせない!サリエルはきっちりと殺す!」
ハーベルの目に、強い光が宿った。彼の心には、師匠を失った悲しみと怒り、そして大切な人間界を守るという使命感が混じり合っていた。
「じゃあ!」
妖精のリーフィアは、ハーベルの言葉に嬉しそうな顔をした。
「でも、約束しろ!俺がサリエルをぶっ殺したら、リーフィア師匠をきっちり元の世界へ戻すと!」
ハーベルは、鬼気迫る様子で叫んだ。彼の願いは、ただ一つ。愛する師匠を元の世界に戻すことだった。
「それは…。」
妖精のリーフィアは、言葉を濁した。その願いが、いかに困難なことであるかを物語っていた。
「出来ないとは言わせない!神でも何でもいいから使って必ずそうすると約束しろ!」
ハーベルの目は、血走っていた。彼の魂からの叫びは、妖精のリーフィアの心を揺さぶった。
「分かりました…。善処します…。」
「善処じゃない!確約だ!」
ハーベルの強い意志に、妖精のリーフィアはついに折れた。
「分かりました…。神様にお願いしてみます…。」
妖精のリーフィアの顔は苦渋に満ちていたが、ハーベルの願いを受け入れた。
「では、ソーサリーエレメントを!」
妖精のリーフィアがそう言って、神聖な光を放つソーサリーエレメントをハーベルへ手渡した。ソーサリーエレメントが彼の手に触れた瞬間、まばゆい光が彼を包み込み、そして、召喚の呪文と共に、今までのリーフィアとの思い出が走馬灯のようにハーベルの頭の中を駆け巡った。
楽しかった日々、厳しかった修行、そして、師匠との温かい触れ合い。その全てが、まるで映画のように脳裏を駆け巡る。
「聖なる光に感謝する。生命を育みし輝きよ、我が意志を奉じ、その姿を現せ!リーフィア!光召喚:第10究極魔法!エターナル・ブライトネス!」
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ハーベル ♂ 【医術師】【ネクロマンサー】【召喚士】
種族:ヒューマン
ソーサリーエレメント:光属性
武器:【神器:シックスセンス】
【神器:金剛の短剣】【神器:金剛の盾】
召喚獣:【光の大精霊:リーフィア】
【ホーリードラゴン】【ペガサス】
【ホーリーウルフ】【ムーンウルフ】
【グリーンスライム】など
魔法属性:全属性
固有スキル:「統合」
「破壊」「精製」「合成」「構築」「解析」「分解」
獲得スキル:「設定」「把握」「毒耐性」「召喚」「魔法陣」「ライブラリー」「分離」「蘇生」「切断」「転写」「怒号」「万華鏡」「反射」「自動回復」「魔法防御」「再生」
光:究極魔法10 神聖:究極魔法10 薬剤:上級魔法8
闇:究極魔法10 虚空:上級魔法9 召喚:究極魔法10
炎:究極魔法10 黒炎:応用魔法5 解放:究極魔法10
水:究極魔法10
風:究極魔法10 雷鳴:上級魔法8
土:究極魔法10 再生:応用魔法6
禁呪級魔法:ディバイン・ディメンション
ジェネシス・ルミナス
アポカリプス・エクリプス
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ハーベルは泣き崩れ、その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「師匠……。」
彼の声は、悲痛な叫びとなって、静かな庭園に響き渡った。
次回 光と闇の分岐点~二つの使命、一つの頂へ~
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頑張って続きを書いちゃいます!




