赤い呪印と悪夢の始まり
命からがら町まで走り続け、ようやく安心できる場所に辿り着いた。
「ここまで来れば大丈夫だよな…」
ハーベルは荒い呼吸を整えながら、レオンの腕を掴んでいた手をゆっくりと離した。
「レオン、大丈夫か?」
ハーベルが不安そうに声をかけると、レオンは顔を覆いながら答えた。
「ああ、大丈夫だと思う…でも、何だったんだ、あれは?」
レオンが左手で顔を拭うと、鮮やかな赤い血が指先から滴り落ちた。
「レオン、それ!」
ハーベルは驚愕の表情でレオンの左手を指差した。
その左手の甲には、おどろおどろしい深紅の魔法陣が刻まれており、血がゆっくりと流れ続けている。
「痛くないのか?」
ハーベルが心配そうに聞くと、レオンは突然右手で左手を押さえた。その瞬間、深紅の光が放たれ、血が勢いよく飛び散った。
「ううっ、痛い…!」
レオンの悲痛な声が響き渡る。
「待て、すぐに治すから!ルミナス・レストレーション!」
ハーベルは慌ててレオンの左手を掴むと、回復魔法を詠唱した。
魔法の光がレオンの傷を癒していく。血が止まり、肌が修復されていくのが目に見える。しかし、刻まれた魔法陣だけはどうしても消えなかった。
「レオン、ごめん…傷が残っちゃった。」
ハーベルは申し訳なさそうにレオンの手を優しくさすった。
「いや、ハーベルがいなかったら、僕は殺されてたかもしれないし。このくらいの傷なら仕方ないさ。」
気丈に振る舞うレオンだったが、その手は震えていた。
ハーベルはその魔法陣のことがどうしても気になり、「解析」スキルを発動して調べることにした。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
この出来事があった後も、不思議と町では噂になることも事件になることもなかった。しかし、レオンは相当なショックを受けたようで、学院には来なくなり、家で休養する日々が続いた。
ハーベルは責任を感じ、毎日通学の途中にレオンの家を訪れ、様子を確認するのが日課となっていた。
結局、レオンが外に出られるようになったのは、あれから一ヶ月以上が経過してからだった。
「レオン、ごめんな…」
ハーベルが心底から反省し、申し訳なさそうに声をかけると、レオンは静かに答えた。
「いや、ハーベルが悪いわけじゃない。」
レオンの元気のない声が彼の気遣いを示していたが、その言葉はハーベルの心に重く響いた。
「でも俺が無理やりダンジョンに連れて行かなければ、こんなことにはならなかったんだ…」
後悔に押しつぶされそうになったハーベルは、怒りと悲しみで地面を何度も踏みつけた。
「もういいよ。」
レオンがハーベルの足を優しく制止すると、悲しげな笑顔を浮かべて彼の肩に手を置いた。
「怖い思いもしたけど、もう落ち着いたんだ。だから、自分を責めすぎないでくれ。」
その言葉にハーベルは返事をすることができず、ただ下を向いたままだった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
翌日からレオンも学院に通い始めたが、ハーベルには自分の無力さへの嘆きと後悔だけが残った。
「もっと強くならなきゃ。」
ハーベルは仲間を守れる力を手に入れることを心に誓い、学院での生活を改めていった。
その後も、レオンの様子に何か違和感を覚えたものの、それが何なのかを知ることはできなかった。
次回 深紅の刻印と地下室の謎
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